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第22話 一触即発
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学部の説明会は退屈以外の何ものでもなかった。
一生懸命説明してくれていた教授やゼミの先輩方には悪かったが、僕も陽菜も爆睡してしまったのだ。
「あ~、最近、寝不足だったから、寝ちゃったよ~」
「陽菜、せっかく連れてきたというのに君は……」
「圭だって寝てたじゃない」
しっかりと気づかれていた……。
既にお昼を回っている。僕もお腹が空いたので、ランチをとることにする。
ランチは、もちろん学食だ。受付で貰ったランチ券を使えば、タダでご飯が食べられるのだ。
「ねえ、圭……」
A定食の列に並んでいると、陽菜が不満を露わにしている。
「ワタシの扱いが雑過ぎない? タダのランチなんて舐められているとしか思えない」
「何を言うんだ、陽菜。大学に行くと、お昼は学食で食べるだろ?
これも貴重な経験だよ」
しかし陽菜は、「せっかくの初デートなのに……」と拗ねて見せた。
ちょっと軽率だったな……と、反省する。
「ゴメン、陽菜。今度、絶対にちゃんとしたデートをするから、今日は我慢してくれ」
「うん、信じて良いんだよね、圭」
「ああ、約束する」
慣れなのだろうか?
陽菜への態度が雑だったのは、女の子との接触に慣れてきたせいかもしれない。
今度は、いい加減な対応は出来ない。彼女も立派な女の子なんだ。単なる『生徒』ではない。
ちゃんと接しようと思った。
その時、メッセージの通知が鳴る。
<終わったの。圭君、今どこにいる?>
小梢からだった。
~・~・~
これはもしや、『修羅場』というものではないのか?
嘘とはいえ恋人の小梢と、僕を好きだと言って小梢を敵対視する陽菜が、僕と一緒にテーブルを囲んでいる。
小梢が来るというと、陽菜は『望むところよ』と受けて立つ気まんまんに待ち構えていたが、ほどなくして小梢が現れると陽菜は小梢を睨みつけ、敵意を露わにしている。
僕は、どうして良いか分からずに二人の顔色を交互に伺っていた。
「小梢さん……でしたっけ、なんでアナタがワタシと圭のデートを邪魔するわけ?」
「さっき言ったわよ。圭君が他の女の子と二人きりで出かけるなんて見過ごせないって」
二人とも一歩も譲らない構えだ。
陽菜は普段からの言動で好戦的な性格なのは分かっていたが、小梢が子供相手に大人げない態度をとるとは想像だにしなかった僕は正直、戸惑っている。
そのうち、矛先は僕に向けられることになる。
「圭君。陽菜ちゃんにいい加減な態度で接してない?」
痛い所を突かれて、僕もついムキになる。
「いい加減って?」
「圭君が、陽菜ちゃんの言いなりになってその場しのぎで誤魔化してないかってこと」
「それは……」
ズバリその通りだったが、なんとか反論の糸口を見つけようと僕の目が泳ぐ。
「圭君が女の子に優しいのは知ってるけど、時として相手の事を傷つける事だってあるのよ」
「それは……」
「それが、立場を逆転させて陽菜ちゃんの側から見たら弄ばれてるように感じるのよ、良かれと思っても、却って相手に酷い事をする事になるの。
ちゃんと分かってるの?」
いつにもまして饒舌な小梢、しかも説教口調に僕もつい、意地になってしまう。
「そんな事、小梢が言えるの?」
「わたしが? どういうこと?」
「小梢こそ、僕を弄んでるんじゃないの?」
僕の予想外の反撃に、小梢は大きく目を見開いて、僕を見つめる。
「不自然なんだよ。突然、僕の前に現れて……、
僕が好きだって言っても、はぐらかして……、
最初に言ったことも、嘘なんだろ?
隠してることがいっぱいあるじゃないか」
僕も一気にたたみかける。日頃の疑念も隠さずにぶつけた。
「あ、あれは……、だから、考えさせてって言ったじゃない!」
小梢が声を荒げると、陽菜も驚いたのか、身体をビクっとさせる。
「あの……、お二人さん……」
陽菜に構わず、僕も声が大きくなる。
「だったら、せめて説明くらいして欲しい。じゃないと不安になるんだよ」
「わたしだって、ちゃんと気持ちを伝えたじゃない! なによ、わたしの気も知らないで」
「なにも話さないし、隠してばかりで分かる訳ないだろ!」
「圭! 小梢さんも!」
ヒートアップする僕たちを、JCの陽菜が制止する。
僕も小梢も興奮して息が荒くなっていたが、陽菜の制止で一旦落ち着く。
「もう、なんなのよ、二人とも喧嘩ならワタシが居ないとこでやってよ。
……それに、なんだか注目されてるよ」
確かに、僕たちのやり取りに、周りの人が反応してチラチラとこちらを見ている。
「小梢さん、ワタシ、おトイレに行きたいんだけど、場所が良く分からないの。
連れて行ってもらえるかな?」
「あ、そうね。わたしも行きたかったの」
小梢は、陽菜を連れ立っていった。
ひとり残された僕は、衆人の好奇の目にさらされる。
(なんなんだよ……)
一生懸命説明してくれていた教授やゼミの先輩方には悪かったが、僕も陽菜も爆睡してしまったのだ。
「あ~、最近、寝不足だったから、寝ちゃったよ~」
「陽菜、せっかく連れてきたというのに君は……」
「圭だって寝てたじゃない」
しっかりと気づかれていた……。
既にお昼を回っている。僕もお腹が空いたので、ランチをとることにする。
ランチは、もちろん学食だ。受付で貰ったランチ券を使えば、タダでご飯が食べられるのだ。
「ねえ、圭……」
A定食の列に並んでいると、陽菜が不満を露わにしている。
「ワタシの扱いが雑過ぎない? タダのランチなんて舐められているとしか思えない」
「何を言うんだ、陽菜。大学に行くと、お昼は学食で食べるだろ?
これも貴重な経験だよ」
しかし陽菜は、「せっかくの初デートなのに……」と拗ねて見せた。
ちょっと軽率だったな……と、反省する。
「ゴメン、陽菜。今度、絶対にちゃんとしたデートをするから、今日は我慢してくれ」
「うん、信じて良いんだよね、圭」
「ああ、約束する」
慣れなのだろうか?
陽菜への態度が雑だったのは、女の子との接触に慣れてきたせいかもしれない。
今度は、いい加減な対応は出来ない。彼女も立派な女の子なんだ。単なる『生徒』ではない。
ちゃんと接しようと思った。
その時、メッセージの通知が鳴る。
<終わったの。圭君、今どこにいる?>
小梢からだった。
~・~・~
これはもしや、『修羅場』というものではないのか?
嘘とはいえ恋人の小梢と、僕を好きだと言って小梢を敵対視する陽菜が、僕と一緒にテーブルを囲んでいる。
小梢が来るというと、陽菜は『望むところよ』と受けて立つ気まんまんに待ち構えていたが、ほどなくして小梢が現れると陽菜は小梢を睨みつけ、敵意を露わにしている。
僕は、どうして良いか分からずに二人の顔色を交互に伺っていた。
「小梢さん……でしたっけ、なんでアナタがワタシと圭のデートを邪魔するわけ?」
「さっき言ったわよ。圭君が他の女の子と二人きりで出かけるなんて見過ごせないって」
二人とも一歩も譲らない構えだ。
陽菜は普段からの言動で好戦的な性格なのは分かっていたが、小梢が子供相手に大人げない態度をとるとは想像だにしなかった僕は正直、戸惑っている。
そのうち、矛先は僕に向けられることになる。
「圭君。陽菜ちゃんにいい加減な態度で接してない?」
痛い所を突かれて、僕もついムキになる。
「いい加減って?」
「圭君が、陽菜ちゃんの言いなりになってその場しのぎで誤魔化してないかってこと」
「それは……」
ズバリその通りだったが、なんとか反論の糸口を見つけようと僕の目が泳ぐ。
「圭君が女の子に優しいのは知ってるけど、時として相手の事を傷つける事だってあるのよ」
「それは……」
「それが、立場を逆転させて陽菜ちゃんの側から見たら弄ばれてるように感じるのよ、良かれと思っても、却って相手に酷い事をする事になるの。
ちゃんと分かってるの?」
いつにもまして饒舌な小梢、しかも説教口調に僕もつい、意地になってしまう。
「そんな事、小梢が言えるの?」
「わたしが? どういうこと?」
「小梢こそ、僕を弄んでるんじゃないの?」
僕の予想外の反撃に、小梢は大きく目を見開いて、僕を見つめる。
「不自然なんだよ。突然、僕の前に現れて……、
僕が好きだって言っても、はぐらかして……、
最初に言ったことも、嘘なんだろ?
隠してることがいっぱいあるじゃないか」
僕も一気にたたみかける。日頃の疑念も隠さずにぶつけた。
「あ、あれは……、だから、考えさせてって言ったじゃない!」
小梢が声を荒げると、陽菜も驚いたのか、身体をビクっとさせる。
「あの……、お二人さん……」
陽菜に構わず、僕も声が大きくなる。
「だったら、せめて説明くらいして欲しい。じゃないと不安になるんだよ」
「わたしだって、ちゃんと気持ちを伝えたじゃない! なによ、わたしの気も知らないで」
「なにも話さないし、隠してばかりで分かる訳ないだろ!」
「圭! 小梢さんも!」
ヒートアップする僕たちを、JCの陽菜が制止する。
僕も小梢も興奮して息が荒くなっていたが、陽菜の制止で一旦落ち着く。
「もう、なんなのよ、二人とも喧嘩ならワタシが居ないとこでやってよ。
……それに、なんだか注目されてるよ」
確かに、僕たちのやり取りに、周りの人が反応してチラチラとこちらを見ている。
「小梢さん、ワタシ、おトイレに行きたいんだけど、場所が良く分からないの。
連れて行ってもらえるかな?」
「あ、そうね。わたしも行きたかったの」
小梢は、陽菜を連れ立っていった。
ひとり残された僕は、衆人の好奇の目にさらされる。
(なんなんだよ……)
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