【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

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後日談

姉のおめでた(セリフ一言書籍記念SS)①

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 このたび、めでたく姉のシルヴィアと推しのオズワルドとの間に新たな命が授かったことがわかった。
 まだお腹も出ていないから見た目ではわからないけれど、オズワルドの溺愛ぶりと過保護ぶりがさらに拍車がかかっている。

 浮かれと心配のしすぎで、事あるごとに必要なことがないかと聞いてくるのだと姉は苦笑していた。
 普段から構われまくっている姉が苦笑するほどなので、よほど頻繁なのだろう。でも、その気持ちはわかる。
 かくいう私も浮かれていた。

「うふふっ。もう天使が生まれてくること決定よね。早く会いたいなぁ~」

 つわりはあまりキツくはないとは聞いているけど、食欲は落ちているようだ。
 それを聞いた私は、王太子妃としての仕事の合間を縫ってアンドリュー直轄地の畑に来ていた。

 最初のころはひっそりとしていたのが懐かしいくらい、あっちこっちで野菜たちが動く。
 今は私の野菜の育成能力が高いことは知られているので、やりたいことや要望を聞いていたら農場レベルになっていた。

 常駐騎士やここで働いている人々に挨拶をし、お野菜たちに指示を出している隊長のもとへと向かう。
 隊長はすぐに私に気づくと、よっと手を上げてとことこと私の足下にやってきた。
 白く丸いボディーに青々とした葉が揺れる。私はなるべく目線? を合わせるように屈み込むと、隊長に声をかける。

「隊長が変わらずで安心するわ。困ったことはない?」

 ぷるぷると葉とボディを振る隊長。
 問題がないようで良かった。

「そう。何かあったら言ってね。今日は隊長たちに相談があって来たのだけど」

 私はそう切り出し内容を告げた。
 人によって食べられるものは変わるようなのでシルヴィアが実際何を食べられるのかはわからないけれど、滋養の高い野菜や姉が好きなものをたくさん作りたいと事情とともに要望を伝える。
 それと新たな品種の開発もいくつかしてみたいことも告げる。辺境のこともあるので、育てやすい作物や栄養価の高いものを作るのもいいだろう。

 あとは美味しい新たな果物。それが成功したら、姉の身体が受け付けるのならお祝いとして食べてもらいたい。
 簡単なことではないので、あくまで希望であるので気持ちを伝えておくだけにする。
 うんうんと頷いていた隊長が、わかったとぐっと手を上げた。

「ありがとう。隊長がいてくれて助かるわ。これからなるべく時間を見つけてここに来るようにするから一緒に頑張りましょう」

 そう伝えると、うんうんと嬉しそうに葉を揺らした。

 それから一か月、シュクリュとともに通い詰め私たちは品種改良に成功した。

「できたー! すごいわ! 隊長。シュクリュ」

 私の能力が上がっているのか、土地がいいのか、相変わらず成長が早い。シュクリュも積極的によだれを投入してくれているので余計だろう。

「このイチゴとミカンの種からできたイチミカは、ビタミンとか多くて美容に良さそう。女性や子どもに人気が出そうな果物ね」

 種と種の段階で私の願いとシュクリュのよだれを掛け合わせたら、なんと新たにひとつの種となった。
 私の能力は植物関係に関して結構チートだ。特にここ最近、能力が向上していると思う。
 神木がなってからなのか、発動の仕方以外は隠す必要がなくなり遠慮なく動いているからなのか。

 すべての種ができるわけではなかったので基準はわからなかったけれど、嬉しい反面怖くなった私はアンドリューと相談し、しばらくはこの能力は封印することにした。
 やり過ぎて自然の摂理を壊すのは望まないし、魔法ばかりに頼るのはよくない。

 とりあえず、できた種だけは感謝して育てることにした。
 面白い形のものもいくつかできたし、私が入らなくても育つところまでできれば万々歳だ。伯爵領でまず育つかどうかとか、いろいろな検証は必要になる。

 それから新たな品種を流通させるかについてはアンドリュー。流通するならば商家のリヤーフとも相談してからと、先を考えたらすることは多いけれど新種は嬉しい。
 収穫を終え、味や品質が問題ないとわかり私はイチミカを手土産に姉のもとに訪問することにした。

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