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後日談
神木の活動①
しおりを挟むぽかぽかと日差しが入り込むなか、私とアンドリューは辺境のサポートをどうしていくかを話し合っていた。
本日の話題は辺境と地続きにある隣国についてだ。
どうしても南部にある王都より冬は厳しい気候と地形的に、魔物が食料を求めて人里に下りてくることがある。
ようやく以前より魔物の減少の兆しが見え、このまま良い方向へと向かうのではと思われていたのに、隣国がもしかして魔物のなすりつけをしているのではとのきな臭い噂を聞き、一刻でも早く確認と場合によっては対策をということになった。
軍事的なことや政治的なことで私にできることはあまりないけれど、食料に関しては多少力になれる。
私にはシュクリュや隊長そして強い味方の神木がいるので、長期的に構えることになるのなら食料確保は必須である。
何もないにこしたことはないけれど、魔物がいるのは変わりないので以前より注意深く事を構え、用意する必要があった。
「各地に人をやっているから時期に情報が集まるだろう」
「何もないといいのですが」
国家間の戦争になるのは困る。
綺麗ごとばかりにはいかないことはわかっているけれど、国や人種を越えて平穏に過ごしていきたい。
「ああ。そうだな。俺も何もないことを祈るよ。この話は今はここまでだな。それよりも美脚大根のパートナーのような大根が出てきたって?」
「そうなんです。寄り添うようにずっといるので、最近では夫婦大根と言われているようです。性別はないはずなのですけど、新たな大根のほうが足が細く若干前向きなので、偉そうな美脚大根と低姿勢な雰囲気を持つ大根とあって視覚的な問題ですね」
一週間程前に出てきた大根だと使用人のジャンに聞いている。
美脚大根と常に一緒に行動するのですでにそのように親しみ呼ばれているようで、私はまだお目見えしておらず新たな個性的な仲間に会えるのは楽しみだ。
「まあ、伯爵領の領地が増えてきたし、リーダーシップを取れる野菜は多いほうがいいから良かったじゃないか」
「それはそうなんですけど。そもそも領地が増えるのはアンディとオズワルド様のせいかと」
「ティアが次々とやらかし力を広げるから仕方がない。野菜たちも頑張っているしな」
じわじわとブドウ畑の範囲やその種類の幅が広がっているのはこの二人と酒飲みの大人のせいだ。
確かに野菜たちの作るものは格別なので、美味しいものを飲みたいという気持ちはわかるけれどもと、ふっと息をつく。
「みんな頑張ってくれていますよね。ここまで大規模になるなんて考えもしなかったので、今でもたまに不思議な気分です」
「神木を蘇らせた女神様が何を言ってるんだ」
「からわかないでください」
そんな話をしていると、訪問者がやってきた。
「ご報告いたします。監視員によると本日ご神木様が動きだす可能性が高いようです」
「どうしてわかったのでしょうか?」
「お野菜たちがいつもと違った動きをしているため確認したところ、ご神木様の根っこがぴちぴち動いていることがわかったようです。お野菜たちはその根っこをくぐったりぶら下がったりして遊んでおります」
……ぴちぴち。その言葉に、私はアンドリューと視線を合わせた。
澄み渡る碧色の瞳が面白そうに細められ、その口端が楽しそうに笑む。
「問題なく成長しているということだな」
「そうですね。でも、根っこで遊ぶとか器用というか、前回の歩き方といい、私の持っていたご神木のイメージとかけ離れつつあります。これはもしかしてお野菜たちに影響されていたり?」
崇められる存在としてどうなのだろうと、神木を成長させたことに関わっている私としてはちょっぴり心配になる。
私、そんな陽気なこと願っていないよね? 邪心とかなかったよね? と心配になる自由さに悪くはないのだけど、だけど、と複雑な気持ちだ。
これが物語の聖女だったりしたら、厳かに凜としてそこに立っている気がする。
「なくはないが、神木も楽しいのだろう。ずっとひとりでいた前回よりは、常に周囲に野菜たちがいて懐いてくれているのだから」
魚ではあるまいしと思うけれど、ぴちぴちと揺れる根っこに群がるお野菜たちの姿が目に浮かび私の頬は緩む。
黄色いリボンを胸元に付けた正式に発足された黄色いリボン隊員は、そんな私をきらきらと尊敬と期待のこもった瞳で見つめてくる。
ここ最近よく見る彼は辺境伯の隣の領地の伯爵家の次男で、辺境伯の魔物退治にも随分活躍した騎士である。
そんな彼はロードウェスター領の野菜の美味しさに感動し、このたびの出来事にひどく感銘を受け自ら志願しただとか。
ちなみにこの部隊の正式な発起人と総括は学園長である。
審問会で話を聞いた学園長が、せっかくなのだから組織として機能させ、神木、神獣であるシュクリュ、お野菜たち、そしてそれらの深く関わる私を見守ることを主な業務とすると決めた。
過去の失敗から神木やシュクリュに思うことがあるのだろう。
私の王太子妃としての為すべきことの優先順位は、神木とシュクリュ、そして野菜たちの平穏のために動くことが第一とされた。
野菜たちと戯れたい私としてはありがたい。王太子妃としての業務で制限されるよりは大っぴらに関わってもいいとされて結果オーライであるが、黄色いリボン隊員のこの尊敬の眼差しはむずむずする。
しかも、アンドリューは人前であるにも関わらず、私の腰に手を回してくっついてくるし、それさえも仲が良いと見守られるような温かな目だ。
何も悪いことではない。むしろ好ましい方向性なのだけど、たまにそれらの視線から隠れたい衝動にかられる。
アンドリューも私のむずむずをわかってにやにやと笑ってくるし、完全に揶揄いモードである。
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