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課題とお野菜ズ

ベジロード店②

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 黒幕はマッドリー侯爵だということも聞いた。
 クラスでもカルラの突っかかりがあれこれ増えたのもその頃からなので、まあなんとなく察したと同時に、絶対相手に屈しないと強く思った。

「お店のことはむしろ以前よりさらにパワーアップしたから良かったけれど、問題が重なっているわよね。噂とか」
「うん。噂も無関係ではないと思うわ」

 誰が聞いているのかわからないのでここでは名前を出さないけど、誰もが思っていること。
 私の知らないところでマッドリー侯爵側がベジロードにいろいろやってくれていたように、私個人に対しては娘であるカルラが粗探しと何かと私の無能さを誇張し周囲に触れ回っている。

「やっぱり、そうよね。あんなにわかりやすい挑発はよほど自信があるのでしょうね」
「うーん。どうなのだろう。お店関係はひとまず落ちついたとはいえ、まだ問題はあるみたいだし」
「利益が絡むと大なり小なり争いごとは避けられませんからね。こっちはフロンティアが王太子殿下の婚約者であるからというのはわかりやすいくらいだし」
「そうよね」

 店は報告がない限りは大丈夫だと思っているが、狙いは確実に自分も入っているのでまったく無関心ではいられない。信頼はしているが、心配はする。
 実行犯やら組織を捕まえてもマッドリー侯爵の影がちらつくだけで、マッドリー侯爵が関係していることは証明できていないので、次に何をしかけてくるのかと気は抜けない。

 リヤーフには常に心労をかけているが、賠償金やら茶葉のときのように新たな商品確保などしっかりこちらの利益に繋げているので、聞けば聞くほど相手の手駒と金を巻き上げているこちらの優秀さ。
 逆に相手が不憫だと思わないでもないが、しっかり労力や時間が取られて迷惑をかけられているので、向こうもそろそろ懲りてほしい。

「店のほうはしっかりがっちりしっぺ返しはできているのだけど、尻尾切りというか、まあそれで痛手を負うのはごく一部で本元は痛くもかゆくもないというのがどうもね。ヴィア姉さまが言うようにどこかでぺちっとする機会がほしいくらいには、気持ちと時間を取られているわ」
「そういえば、オズワルド様は? このことを知ってらっしゃるのでしょう?」
「直接は話していないけれど、姉さまを通して知っていると思うわ」

 王子の婚約者でもある私の動向。
 愛しの姉の妹でもあり、将来は伯爵領を運営するオズワルドがまったく何も知らないということはないはずだ。

「噂に聞くオズワルド様が動かないということは、また理由があるのかしら?」
「うーん。動くに値しないのか、どうなのかはわからないけれど。初めからオズワルド様を頼るのもね。それに義兄は努力をしない者に手を差し伸べるほど甘くないから」

 私や商会がどのように動くかなど、そのポテンシャルを測るくらいのことはしていそうだ。

「ああー。なるほど」
「オズワルド様が優先するのは殿下や職務のこと、無償で愛を注ぐのはヴィア姉さまのことのみだから」
「徹底してらっしゃるわね」

 それが推しの素晴らしさでもある。
 姉にだけとろける美貌は見ていて非常に尊く、拝めるポジションにいるだけで私は満足である。

 それに私のことに労力をかけるくらいなら、忙しい王子の助けとなってほしい。
 オズワルドなどの優秀な側近がアンドリューのそばにいることが、彼らが王子に忠誠を誓っていることが喜ばしい。

 大事な姉の妹である私に何かあれば動いてくれるだろうけれど、自分の周囲にはリヤーフなど頼れる者がたくさんいるのでそこで解決すべき問題である。
 バックが心強いからといって、それにあぐらをかいていては王子の婚約者としてはやっていけない。

 ひとまず店のほうは安定してきたので少し肩の荷は下りたけれど、己の身の回りがまったく解決していないことはかなり気がかりである。
 結局はそこに戻るのだと、ふっ、と私は息をついた。


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