107 / 166
課題とお野菜ズ
ミニチュア①
しおりを挟む常日頃のお野菜たちの動きを模したミニチュアたち。手足の動きやくびれなどそれぞれ違って、見ているだけで頬が緩む。
「こんなにも!?」
私が提案して作られたものなので知っているものだが、これに関しては宣伝していない。
なのに、友人たちがひっそりと集めてくれている事実に感動する。
しかも持ち歩いているとか。貴族令嬢としては微妙であるが、お野菜ラブの私からしたらとっても嬉しい。
私はほこほことした気持ちが抑えきれず、満面の笑みを浮かべた。
「みんな、持ってくれてるのね」
「もちろんですわ! なんてたってカブちゃんズとの握手がかかっておりますし、それがなくてもとっても可愛いですから、ついつい集めたくなってしまいます。ほら、これも持っているんですよ。あと、寮にもいくつか」
「そんなに?」
「一日一回限定なので、まだまだ集められてないのですけど……」
恥ずかしそうに頬を染めるローレル。
そこで頬を染める意味はわからないが、気に入ってくれているのは伝わった。そして、制作にあたる過程を思うとやはり嬉しくて、私はニンマリしてしまう。
単純というなかれ。この切り替えの良さが、自分でもいい仕事をしていると思うときもあるのでいいのだ。
カブちゃんズの握手とは、王都で育てていた野菜を売り出す際に、カブちゃんズを看板娘ならぬ看板野菜にしたところ大反響となったことから始まった。
人気者となったカブちゃんズの握手を求める女性も出てきて、それに目をつけたリヤーフにちょっと待ったをかけて、お野菜たちを誰かれ構わず触らせるのも心配だった私が提案したものだ。
日に人数を決めてカブちゃんズと握手する権利を、ガチャで当たれば獲得できるというシステムだ。
ここでは回すのではなくてボタンを押すだけなのだが、何が出てくるのかわからない点は一緒。
中身はまだこちらに出せていない伯爵領の野菜なども含めたミニチュアの模型で、カブが出れば当たりで握手可能というものだ。
「平日は授業があるのにすごいわ」
「いろいろ集めたくなるんですもの。従者にお願いしたものもありますから」
「そこまで?」
「ええ。できるだけ自分で足を運んで購入したいのですけど、揃えるには時間があまりないですから。従者も密かに楽しんでいますわ。運次第というところがすっごく面白くて嵌るのね」
ローレルたちが騒ぐのに、ミシェルもうんうんと頷く。
「私もひとつだけど持ってるわよ。さすがに持ち歩いてはいないけれど、集めて並べたくなる可愛さだと思うわ」
「ミシェルも持ってくれてるんだ」
「思わず手を伸ばしてしまったわ。なんだかやりたくなったのよね」
そう言いながら、ローレルが持っているミニチュアをミシェルはちょいちょいと突く。
それに友人たちはうんうんと頷き、妙に誇らしげに声を上げる。
「そうなんです。お金を渡してボタンを押すだけで、何が出るかわからないっていうのが楽しいわよね。当たりは握手券だけど、外れても可愛いから持ってないお野や果物が出ると嬉しいわ」
「そうなのよね。みんな嬉々としてやっているのを見ると、私もって思ってついつい並んでしまったわ。今では嬉々としてやる側ですけれど」
「噂が広まってとても人気になったわよね。私の友人はそれが目当てで行ったのだけど品切れになっていたって言ってたわ」
私は身近で起こっていた反響に、ふふふっと笑みが溢れることを止められない。
「そうね。今では午前中でなくなる日もあると聞いているわ。作れる数も決まっているからどうしてもそうなっちゃうのだけど」
せっかく足を運んでもらったのに物がなかったミシェルの友人には申し訳ないけれど、それだけ楽しみにしてもらえていること自体はすっごくすっごく嬉しい。
ベジロード店の商品の買い占めなどの問題発生を受けて、試行錯誤した結果できたミニチュアフィギュアであるが、当初はノリの部分もあり一日に十人くらいの人がやってくれたら楽しいのではと思っていたくらいである。
新しいことをするのは緊張したが、思った以上の効果とカブちゃんズがむやみやたらに触られずに済んでほっとしている。
自分のせいでお店やお野菜たちに風評被害の影響が出ることが怖かったので、うまく盛り返せたことは私にとってだいぶ気持ちが楽になった。
11
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。