上 下
98 / 166
不調と新たな問題

新事実①

しおりを挟む
 
 いつの間に脱いだのか雄の色香を全開にしたアンドリューに「もう、やめて」と本気で懇願するまで攻められ、お互い高め合う。
 直接肌を合わせる行為は恥ずかしいものの心の奥まで満たされるような幸福感に包まれる。

 それから、あれこれされた身体はこんなこと王子がしていいのってほど丁寧に清められ、服を着た頃には私はぐったりしていた。

「今日のティアも可愛かった」
「……加減というものがなくなっている気がするのですが」

 嬉々として攻められるこちらの身になってほしい。
 羞恥と快感にくったくたのくったくたで、ものすごくご機嫌な相手に対しこちらはむすっとしてしまう。

「心外だな。これでも加減はしているだろう?」
「どこがですか?」
「自分で立てているのだから加減はできている」

 にっこりと自信満々に告げられ、本気で言っているのだろうかと思わずアンドリューをじと目で見た。
 だけど、揺るぎない意志を持つ瞳で見つめられ、こんなこところでも俺様発揮になんだか力が抜ける。

「立てるか立てないかが基準なのですか?」
「そうだな」
「…………」

 あっさりと頷かれると、勢いがそがれてしまってますます拍子抜けした。

「反論しないのか?」
「反論の仕方がわかりません」
「ははっ。そうかっ」

 満足げなアンドリューにぎゅうっと背後から逞しい腕に抱きしめられ、抵抗という抵抗する力を根こそぎ奪われた。
 そうすると、ただただその温もりと安心感に包まれる。

 よくわからない持論を展開され、敏感になりつつある身体に思うことはたくさんあったけど、こうされるともうどうでもいいかと思うほど満たされる。
 私はほぅと息を吐いた。
 すると、アンドリューが不意打ちにキスをしてくる。

「ティア」
「あっ、んんぅ」
「じっとして」
「もうっ。また!」

 壮絶な艶を放たれたままアンドリューに肩に顔を寄せられ、私は濡れて吸われる感触に叫んでいた。
 熱い舌の感触に先ほどまでの官能をすぐに引き出されそうで慌てるが、吸い付きながらの静止の言葉ともに器用に舐められる。

 少しずつ下がっていく唇の感触を感じるたびに反応してしまう。
 もはや口だけの抵抗となっていることは私にもわかっているが、言わずにはいられない。

「綺麗についた」
「前のもまだ残っているのに」

 ぽつ、ぽつと残されている所有の印には思うところはある。

「それはもうすぐ消えるだろう? 新しいのを付けておかないと」
「もう!」
「怒ってるのもいいな」

 揶揄うようににっと口の端を上げて、きらきらした目で私を見てくる。

「アンディっ」
「ティアといるのは楽しい」
「…………私も楽しいですけど。でも、これはやっぱり」

 婚約しているとはいえ、これはどうなのだろうか。

「まあまあ」
「まあまあじゃないです」

 ここ最近、アンドリューに必ずと言っていいほど、覗き込めば見える位置にキスマークを付けられることに悩んでいた。

 オズワルドには絶倫とおまけのようにキスフェチという設定はあったけど、アンドリューには特になかったはずだ。
 姉の大変さを他人事のように思っていたら自らもって、姉妹でどうなのかとも思う。

 日に日に甘くなるアンドリューのその行為をきっぱり拒絶できないのは、私もその行為に込められる想いに反応してしまっていて嬉しいからでもある。

 これがあからさまな場所に付けられたらもっとはっきりと文句を言えるのだけどギリギリのところなので、愛情表現だと言われれば怒るに怒れない。
 にっこり微笑む美貌についつい甘くなり、計算された場所にうむむと唸って終わるのだ。

「ずっとこうしていたいな」
「ただれてます」
「ティアとだったら歓迎だ」

 すかさず返ってきた言葉とともに、頬にキスを落とされ私は数瞬固まる。
 あまりにも真剣な声は、それが本音だと知れた。

 普段は爽やなできすぎ王子で通っているので、二人きりのときにこんな発言をしながら甘たるい空気を出すなんて誰も想像できないだろうと思うと、なんだかおかしく感じる。

「ふふっ」
「どうして笑う?」
「いえ。そうは言っていても、アンディは王太子としての責務は放り出すことはしないでしょう? そんなアンディだから格好いいのですけど……って、ちょっとなんで噛むんですか?」

 カプッと肩を咬まれ、抗議の声を上げる。
 静止の言葉を聞いても構わず続けられ、最後はねっとりと舐められついでとばかりに耳たぶを食まれる。
 かかる吐息にぞくっと身体を震わせると、抱きこまれていた腕の力が逃がさないとばかりにさらに強くなった。

「アンディ!」

 王族しかわからない重圧のなかを過ごし、逃げずに立ち向かうアンドリューだからこそ尊敬しているし、身を任せられるのだなと思っていての王子の行動に戸惑う。
 吸い付く手前だったところに歯を当てられて、痛くはないが何してくれるのだと首を捻ってめいいっぱい睨むと、思ったより熱のこもった視線とかち合った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちかすぎて

橋本彩里(Ayari)
恋愛
幼馴染のあいつに彼女ができたらしい。 彼女に牽制され、言われなくてもこっちから距離をあけてやるとささくれていたら窓に雪玉をぶつけられ……。 幼馴染同士のちかすぎてじれっとしていた二人の話。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

離縁前提で嫁いだのにいつの間にか旦那様に愛されていました

Karamimi
恋愛
ぬいぐるみ作家として活躍している伯爵令嬢のローラ。今年18歳になるローラは、もちろん結婚など興味が無い。両親も既にローラの結婚を諦めていたはずなのだが… 「ローラ、お前に結婚の話が来た。相手は公爵令息だ!」 父親が突如持ってきたお見合い話。話を聞けば、相手はバーエンス公爵家の嫡男、アーサーだった。ただ、彼は美しい見た目とは裏腹に、極度の女嫌い。既に7回の結婚&離縁を繰り返している男だ。 そんな男と結婚なんてしたくない!そう訴えるローラだったが、結局父親に丸め込まれ嫁ぐ事に。 まあ、どうせすぐに追い出されるだろう。軽い気持ちで嫁いで行ったはずが… 恋愛初心者の2人が、本当の夫婦になるまでのお話です! 【追記】 いつもお読みいただきありがとうございます。 皆様のおかげで、書籍化する事が出来ました(*^-^*) 今後番外編や、引き下げになった第2章のお話を修正しながら、ゆっくりと投稿していこうと考えております。 引き続き、お付き合いいただけますと嬉しいです。 どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈 
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。