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婚約と俺様王子
無慈悲な俺様①
しおりを挟む当然のようにのしかかってくるアンドリューを、私は見上げた。
「心臓が止まるかと思いました」
「人に見られたくないんだろう?」
「転移するなら転移すると言ってほしかったです」
無駄に心配して心臓に負荷がかかったと悔しくて少し涙目になって睨みつけると、上から覗き込むようにくすくすとアンドリューは笑う。
「だから言っているだろう? 俺は俺がすることでいろんな反応をするティアの姿を眺めるのが好きだ」
「…………っ!」
そう言いながら、すでに後ろのリボンは解けていたのでぐいっと遠慮なく下げられるだけで華奢な上半身があらわになった。
ぷるんと柔らかな白い胸があらわになり、先ほど擦られて色味のついたそこがアンドリューの目の前に突き出される。
「きゃっ」
慌てて隠そうとするが、その腕もあっさり掴まれる。
「隠すな。俺にとってはどんなティアも、そしてどこもかしこも可愛い。だから、隠さず俺だけにはすべてを見せろ」
「ううぅぅっ。本当もう嫌だ。どうしてこんな……」
……こんなに熱烈なんだ。
俺様のままだけど、俺様だからこそ、ストレートな気持ちをぶつけられて、私の気持ちも跳ね上がる。
本当、容赦ない。手加減してほしい。
どこもかしこもアンドリューのすることに、言葉に反応してしまいそうでずっと体温は上昇中。
頬もずっと熱いし、ただでさえ久しぶりのアンドリューを前にしてドキドキしていたのに、いっぱいいっぱいで思考がくらくらする。
「お仕置きと言っただろう? ティアはすぐに俺の存在を忘れるみたいだからな」
「忘れてないです」
だから、どうやってこんなに存在感たっぷりの人を忘れられるというのか。
それに、好きな人なのだ。忘れるわけなんてない。
「当たり前だ。忘れていたらこんなもんでは容赦しない」
「ひぇ」
愛おしげに細められているのに、一瞬見せた剣呑な気配を纏い鈍く光る碧色の瞳にぎくりとする。
「ふっ。まあいい。俺としても野菜たちのことで楽しそうに動くティアも好きだしな。ただ、納得がいかないってだけで」
「ううぅ。結局どっちなんでしょうか?」
「どっちもだな。俺をもっと刻み付ける必要を感じただけの話だ。会話するのもいいが触れ合うほうがティアに刻むことができる。こうすることを許されるのは俺だけだしな。ダメか?」
最後はちょっと伏し目になりうかがうように尋ねられ、やんちゃな犬が耳を垂らしているように見える。
無慈悲な俺様からの落差。
何度も言うが羞恥が勝ち本当のところで嫌だと思っているわけではないので、行動を止めることなんてできなくなってしまう。
「ダメというわけじゃないのですが……」
「やっぱり恥ずかしい?」
「……はい」
「ふっ。ここは誰もこない。だから安心して乱れたらいい」
そういって、首筋に吸い付くアンドリュー。
アンドリューの柔らかな唇から舌が覗き、そこをちろちろと舐めていたかと思えば、じゅっと音を立て吸われる。
ちくっと小さな痛みが走り、ときおりなだめるように舐められ、また吸い付かれ、舐められ、吸い付き、舐め……吸い付きすぎーっ!!!!!
腕を取られたまま、首を差し出すしかない私は生々しい感触に震えた。
いやいやいや、どれだけ?
じんじんするんですけど? これってすぐ消えないやつだよね?
「ちょっ、アンディ。吸いすぎです!」
「俺のものって誰が見てもわかるようにな。大丈夫、襟付きのものを着ていたらバレない。覗いたらわかるくらいの場所だから」
一応、王子なりの気遣いはあるらしい。
「ご配慮ありがとうございます」
「ああ」
「……って、違いますって。覗いてわかるって見えちゃったらどうするんですか?」
万が一にも見られて恥ずかしい思いをするのは私なんですけど?
貴族の淑女としてもどうかと思うし、王子の婚約者としてそんな失態はできない。
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