【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

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婚約と俺様王子

侯爵令嬢動きだす②

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 今も「あの愛らしいお野菜たちを生み出した女神。ああ、改めて口にすると尊すぎない?」と一人でうっとりしている。
 猪突猛進型なのでときおり周囲が見えなくなるのがたまに傷だ。

 ありがたいけれど、下手にローレルが彼女たちに目をつけられたら困る。
 かといってせっかく擁護してくれているのだからその気持ちを否定はしたくないしで、私はとりあえずローレルより一歩前に出た。

 すると、しっかりとこちらに視線が集中する。
 カルラ嬢がイエローブロンドの髪を手でさらりと後ろに靡かせ、巷で流行っている花の香水を香らせながらこてりと首を傾げた。

「そもそもその魔力というのも怪しいですわ。どこまでロードウェスター嬢の力なのかもわかりませんし、怪しいところですよね」

 ケアを怠っていないだろうぷるんとした唇でそう呟くと、カルラがひたと見据えてくる。
 可愛らしい仕草ではあるが、若干細められた双眸は確実に私を見下していた。それに追随する取り巻き令嬢。

「そうですよ。実際の実技も悪くはありませんが、カルラ様に比べたら足元にも及びませんわ」
「ローレル嬢、あなたもいい加減にしなさい。南部の貴族ともあろう方が北部の者に媚を売って」
「まあっ。これを媚ととるなら、あなたたちのほうがよっぽどですわね」
「まあまあ」

 ミシェルがなだめようとするが、ぷんぷんと怒って見事な縦ロールを揺らすローレル。
 侯爵令嬢であるカルラは涼しげな顔でその様子を眺めていたが、私と視線が合うとそこでふふんっと鼻で笑った。

「いつまでもその地位にいられるとは思わないことね」

 それだけ言うと、「行きますわよ」と取り巻き令嬢とともに去っていく。
 何か策でもあるのかやけに自信ありげな姿に一抹の不安を覚えたものの、それよりも気になることがあった。
 黙り込んで考え込んでいると、ミシェルがそっと私の肩を叩く。

「あまり気にしないようにね」
「そうですわ。やっかみです。やっかみ」
「そうそう。気にしないで」

 口々に慰めの言葉をくれる友人たちを代表して、ミシェルが覗き込んで「フロンティア?」と声をかけてくれる。
 うーんと心配で唸ってしまいそうになって、私は縋るように顔を上げて目の前にいたミシェルの肩をがしっと掴んだ。

「どうしよう。商売のお話するのはそんなにダメなこと? 貧乏くさい? 隊長にあなたは地味なのでお役目ごめんって言われちゃう? やっぱり華やかな姉さまやオズワルド様のほうがいいって言われたらすっごく寂しいー」

 思い出して思わずがくがくとミシェルの肩を揺らすと、ミシェルはあまりの勢いに、「おふぅ」と変な声を漏らした。あっ、ごめん。

「どうどう。あれはただの言いがかりだから」
「そうですわ。さっきも言いましたがやっかみ、ただの嫉妬です。アンドリュー殿下の婚約者であり、才覚もあるフロンティアのことが羨ましいのです」
「そうそう。ここにいる私たちはフロンティアの魔法は派手さはないけれど実力はちゃんと認めているし、その素直な性格を好ましいと思っているから。殿下もそんなフロンティアが良いのでしょう。その、隊長? えっと、カブだよね? 隊長やお野菜たちもフロンティアだからこそ伯爵領で頑張ってくれているのだろうって思うし」
「そうですよ。生みの親であるフロンティアのことを心配こそすれ、見捨てるなんてありえません。あの愛のある行動は絶対不滅です!!」

 最後、ぐっと意気込むローレル。彼女だけやっぱり熱量が違う。
 けれど、一度想像すると妄想は止まらない。憂えるあまりにうっすらと涙が滲み出る。隊長に見切られると想像するだけで悲しすぎる。

「伯爵領に帰ったら知らない人ですみたいに無視されたら? すっごい頑張って動いてくれているのに貢献できなかったらありえる話かも」
「ないない」

 ミシェルが否定すると周囲もそうだよと頷いてくれるが、不安は止まらない。

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