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婚約と俺様王子
腹黒王子の婚約者になりました④
しおりを挟む「何してるんですか?」
手が早い。油断も隙もない。ついでにエロすぎる!
遠慮くらいしてくれと目に力を入れて睨んでみるけれど、俺様王子は実に楽しそうに笑った。まったく効果を感じられない。
「へぇ。面白いことをするな」
「面白くありませんっ」
結構この体勢疲れる。力を抜けば、足に挟まった手がどう動くかわからなくてぐっと閉じたまま。
「ふっ。別に常にこういうことをしたいわけではないんだけどな。ティアの反応が可愛くてつい?」
「……っぅぅぅ」
「来週は忙しくて会えない。だからティアを補給させて?」
ん? と首を傾げて、じぃぃっと覗き込んでくる美貌。
精悍さが増したアンドリューは私の好みツボを押してくる。それがわかっているのか近くでにっこり微笑んでくる王子様。
「…………ずるい」
「俺はティアには素直なんだ。だから、こんな俺を受け入れてくれて嬉しい」
「うぅぅぅぅぅっ」
本当にずるい。
私はそろそろとアンドリューの手を挟んでいた足の力を抜いた。
「ティアは素直でやっぱりいいな。本来ならあれこれしたいが、今日は正直時間がない。本当に残念だ」
すると、肩を揺らし笑いながらあっさりと手を引き抜く王子。からかわれたっ!
「アンディ!」
「うん。ティアが元気そうで良かった。次に時間があるときは容赦しない。ただ、こっちはもらうぞ」
そう宣言すると同時に、ついばむほどの優しい口づけが何度も繰り返される。だがすぐに、色を含ものへと変わり深くなっていく。
舌が熱く絡むなか、アンドリューの大きな手は元気で良かったとの言葉通り優しく髪を梳いてくる。
「ふっ……んんっ……」
その仕草に身体の力が抜け、すっかり慣れたアンドリューとの口づけを味わう。
伸ばされた舌にいつものように応えると、よくできましたと優しく頭を撫でられた。
「んんっ、……ぅん、んんんっ」
「ティア。もっと口を開けて」
言われるままに開くと、頭に回っていた手が優しく頬を滑っていく。
長い舌でしばらく蹂躙されていたかと思うと、唇を吸って、噛んで、舐めて、そしてまた蹂躙される。
「んんっ、……もうっ!」
あまりにも長時間のそれにとんっと胸板を叩くと、ふぅっと熱っぽい吐息とともに顔を離したアンドリューが満足そうに目を眇めささやく。
濡れた私の口元を親指で拭いながら、額にキスをし己の身体を起こす。それとと同時に、流れるような動作で私も引っ張って立たせてくれた。
「ティアに会って元気もらった。もう行くがくれぐれも土に飛び込むようなことはしないように」
にやにやと笑いながらそう言うと私の頭をぽんぽんと叩き、アンドリューは片手をひらひらと上げて去っていった。
呆然とそれを眺め見送っていた私だが、文句を言いたいのに口元が勝手に緩んでいくのを止められなかった。
「やっぱり忙しいんじゃない」
多忙ななか、私に会うためにわざわざ来てくれたのだ。
やっていることは強引だけれど、時間を割いて自分に会いに来てくれたことは、ふわりと心が弾むほど嬉しい。
「うーん。やっぱり勝てる気がしない」
決して勝負しているわけではないけれど、何事も王子の手のひらの上という感じだ。
それがまた嫌ではなくとても安心するから、ついつい王子のすることを許してしまうし甘えてもいる。
アンドリューの姿が完全に見えなくなると、王子が施していた魔法が解けたのか野菜たちがとてとてとやってきた。
その中でもラディッシュはよじよじと登り、私の膝の上までくるとボディを右に左に揺らしながら、大丈夫? とじっと見つめてくる。
「ふふっ。殿下は意地悪だけど優しいから大丈夫よ」
そう告げると、こてっと身体を全員でボディを倒し互いに顔を見合わせると今度は逆に倒した。
中には倒しすぎて、こてりと転げるものもいる。
「ふふっ。心配しないでね。ここもアンドリュー殿下が用意してくれた場所だから安全なの。大いに自由に動いていいからね」
ラディッシュの一体を手のひらに乗せて私がにこっと笑うと、うんうんと葉を揺らしぴょんぴょんと跳ねる。
すると、電波するようにみんながぴょんぴょんと跳ねた。
現在の畑は、まだ小さめのお野菜のみ。それも安定し土も最高の状態のなので、今日は大きめの野菜も植えるつもりだ。
その中にはおなじみのカブの種もあって、これから伯爵領のように賑やかになる未来に楽しみでしかない。
「な、和むわぁ~」
王子との時間もいいのだけど、やっぱり野菜たちと戯れる時間も大好きだ。
「よし。続きしましょうねー」
そう告げると、一斉に手を上げ、手がないものはジャンプする。
その姿に私は微笑を浮かべ、作業の続きを再開した。
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