【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

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魔力検証

姉と推しの到着①

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「ヴィア姉さま大丈夫ですか?」
「ええ」

 遅れて到着した姉のシルヴィアを見て、私は思わず聞いていた。

 人外美貌の旦那様に腰を支えられ、どこか気だるい空気を引きずる姉。
 馬車からよろよろっと出てきた姿を見たときには我が身を思い出してしまったが、相手はあのオズワルドなので姉はもっともっと大変であったはずだ。

 なんだったら、遅れてきたのはそっちが理由だったり?
 伯爵領に来るにあたって夜は警護上の問題で、私たち姉妹は同じ部屋、アンドリューとオズワルドが同じ部屋と別々になるので、夜の夫婦の時間がないといってしっかり付き合わされたりしていそうだ……

 ああー、すごくその理由ありえそう。
 オズワルドのシルヴィア愛はまっすぐで重くて隙がない。溺愛系絶倫って知っていたけれども、姉への愛は思った以上にすごい。
 妹として姉を愛して大事にしてくれ浮気の心配もない相手で、能力も高く優秀な人物であるがたまに残念に思ったり思わなかったり。

 そのせいでこちらは王子に攻められて大変だったし、そこのところはちょっと気になるとオズワルドを見上げると、魅惑的な紫の瞳とかち合う。
 薄い唇がすぅっと笑みをかたどっていき、それはそれは美しい微笑を浮かべた。

 ひっ、ひぇぇぇーっ。

 推しの笑顔を前面に受けて、私はひくっと頬を引きつらせた。

 色気と威圧が凄いです。
 はい。もうノータッチでいきます。

 あと、さっきからラディッシュたちが姉のところへと果敢に向かっているが、オズワルドがそのたびに摘んではふわっと風で飛ばしていた。
 しれっとされると突っ込みにくく、中にはふわふわっと浮くのが楽しくて向かっているのもいるのではと思うくらい、わらわらとラディッシュたちは姉に這い上がろうとしては飛ばされていた。

 しかも、飛ばされた先では、ラディッシュたちは等間隔に並べられている。
 そんなところからも魔法の精度もわかるが、たまにナルシストナスの上に乗せられるものもいる。
 その子はまたよじよじと下り姉のほうに向かってきているので、あまりにしつこい子は頭の上の乗せられているのかもしれない。

 アンドリューといい、オズワルドといい、スペックが高い人は野菜たちのこともある程度見分けがつくようだ。
 判別つけられるということは下手なことはしにくく、それは野菜たちも使用人のジョン相手のように軽々しい態度を取れないはずだ。

 ちょっぴり複雑な気分になり眉を下げ、姉に向き直る。

「とても大丈夫には見えませんが。お疲れでしたら屋敷で先に休まれますか? あとで殿下も来られますので」
「ありがとう。本当に大丈夫よ。ティアのお手伝いをするつもりで来たのだから、ちゃんと動けるわ」
「それならいいのですけど……」

 姉の返事を受けてちらっとオズワルドを見ると、にぃーっこりと人形のような完璧な微笑が返ってきた。推しが美形すぎてつらい。
 肌とかありえないくらいきめ細かく、頭の上から下まで神が作った最高傑作のようなバランスだ。

 姉センサーが働いているオズワルドが姉の言葉に何も言わないのなら、大丈夫なのだろう。
 蠱惑的な紫の瞳がすぅっと色を変えていくのを見て、私は口をつぐんだ。はい。もう何も言いません。

「心配してくれてありがとう。少しでもティアのためになるように今回はたくさん手伝うつもりよ」
「はい。ありがとうございます!」

 オズワルドはとろけるような優しい眼差しで姉を見たあと、私にも穏やかな眼差しを向けてくる。
 推しから、愛するシルヴィアの妹として守る対象であると向けられる双眸にはなかなか慣れる気はしないけれど、美味しい立ち位置すぎてたまに茹であがりそうだ。

 ふぅっと息を吐き出し視線を下げると、ラディッシュにつられるように枝豆が姉のスカートの裏に隠れようとしていた。
 あっ、って声を上げる前に、それをすぐさま見つけたオズワルドによって空へと高く打ち上げられていく。

 パァーンと花火の模様みたいに青空の中に大きく枝豆が描かれる。
 ……枝豆で枝豆。いや、そこで花とか描かれたほうが引く気がするけれど、枝豆で枝豆。

 ────ええ、私な何も言いません。お口にチャックです。

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