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3-Love doesn't stop-

74止まらない高塚くん②

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「都築莉乃さん。俺と付き合ってください。俺はりのだけだし、りのも俺だけを見て欲しい」

 目を合わせて、はっきりと伝えられた思い。
 絡み合う視線にゆっくりと同意するように瞼を閉じ、また見つめる。
 言葉があるって、約束があるって、それだけで随分気の持ちようが変わり、じわじわと心の底から温もってくる。

 嬉しい。

 ただ、それ一色になった。好きな人から請われることの喜びに満たされる。
 
「はい。これからよろしくお願いします」

 じっと答えを待つ高塚くんに見習ってかしこまって告げると、莉乃はふふっと笑った。
 なんだか照れくさいし、ものすごい近い距離の告白はロマンチックというよりはどちらかというと可愛らしい感じがして愛おしい。

「りの」

 感極まったような声とともに顔を摺り寄せられて、目と鼻の先で互いに見つめ合う。そして、同時にふふっと笑う。

「ん?」
「ありがとう。大事にする」

 小さく返事をすると、囁くように告げられてさらに顔が近づいてきたので、莉乃はそっと目を閉じた。

 そっと柔らかで温かいものが唇に触れ、頬を撫でていた手は背中に回される。
 何度かくっついては離れて、くっついては離れてと繰り返し、その優しい触れ方がくすぐったくて口を開けると、その隙に舌をねじ込まれた。

 くちゅくちゅと互いの唾液が混ざり、合間に「りの、りの」と愛おしげに名を呼ばれ、思考も身体もとろんとなる。

「……んっ」
「りの。好きだ」

 舌は入れられてはいるが、それも優しく中を舐めまわされ、背中もさするように撫でられる。
 どこまでも優しくあろうとする高塚くんの気遣いに、触れている唇も舌も抱きしめられる手のぬくもりも、鼓動も全てが気持ちよく感じる。
 紳士なのか紳士じゃないのかわからない口づけを長いこと繰り返し、ついていけなくなった莉乃がくたっと力が抜けたところで、ちゅぽっと離された。
 音がやらしくて、かぁっーと顔が熱くなる。

「ああー、止まらない」

 そう言ってまた軽く口付けてくる。
 強引なのに優しくて、もっと奪おうと思えば口の中も奪えるのに莉乃に合わせてくれているのだろうなというのもわかってはいる。
 いるけど、付き合ってすぐにキスされて、もういっぱいいっぱいだ。

「……んっ、ふぁ、ちと、せくん」

 互いの唾液がつぅっと落ちるのをぺろりと舐めた高塚くんが、額を摺り寄せちゅっと軽く唇に口づけを落とすと、再度抱きしめながら首元に口づけしてくる。

「ああ、りの。りのがいる」
「ふふっ。またそれ」

 くすぐったさに身を捩りながらそれを甘受していると、かじっと軽く歯を当てられた。
 そのまま、味を確かめるようにはむはむと口を動かしてくる。

「付き合ってるんだよな? ずっとキスしたかったし、こうしてもいい関係になったら止まらない」

 そう言うとまた顔を寄せてくるから、さすがに莉乃はストップをかけた。

「んっ、ちょっと待って」

 本能のまま動いているかのような確かめ方に、このまま放置していたらどこまでも進んでいきそうだ。
 喋りながらも、噛んでいたところから短時間の間にちろちろと舐められていたので、次のキスはさっきのようには終われない気がした。

「いや?」
「じゃないけど、もうちょっとゆっくり進みたいというか」
「……………………………………抑えては、いる」

 長い沈黙の後、ぽそりと呟かれた。

「ああー、うん。そうなんだろうけど、こっちは初心者なんでいきなりはつらいというか」
「………うん」

 しゅん、と気のせいでもなく落ち込んで、熱い吐息が首筋にかかる。

「千歳くん」
「りの、好き」

 そう言いながら、また顔を寄せてこようとする。軽い口づけを受け止めて、許しを請うかのようにじっと見つめられた。

「………………」
「りの」
「…………」
「りの」
「……」
「りの、好き」
「あっ」

 何も言わない莉乃に焦れた高塚くんに、今度は初めから口を開けられぱくぱくするように食べられる。
 ぺろぺろと舐められ、少しずつ様子を見るように侵入してくる舌。
 ちろちろと手前の方を舐められるだけで、それ以上は入ってこない。

 ああ~、……言ってたもんね。口に出したら止まらないって。でも、我慢はしていると。
 すっごい今悩ましげな表情で見つめられてます。いや、そんな顔してもオーケーは出さないよ?
 
 ごめんね。
 嫌なわけじゃないのだけど、もう心臓が持ちません。ちょっと休憩させて。

 そういった気持ちできゅっと唇を閉じたら、すっごく悲しそうに眉根を下げて、ふぅっと艶かしい吐息を吐き出した高塚くんは、莉乃の首元に顔を埋めてぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。
 振り出し?
 今は向かい合わせだからそれよりも密着状態。家にきてずっとくっついたまま。


 いったい、いつまでこれは続くのだろう……。


 高塚くんが止まらない!!


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