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1-something quite unexpected-
26私の知らない高塚くん①
しおりを挟む土曜日の夕方。
莉乃はショップの袋を片手に歩いていた。ちらりと袋を見下ろし、満足気に笑う。
お目当のトップスは狙い通りに買えた。まずそれがなによりも嬉しい。
あとは、当初買うつもりはなかったけど可愛いワンピを見つけて衝動買いをした。そのため、お金が足りなくてサンダルは次回に持ち越しになったけど、いい買い物ができて足取りが軽い。
志穂と美咲も今日は気に入ったものをゲットできたようだし、チェックしていたお店のスイーツも美味しかった。
そこはシュークリームが有名で、甘味を含む生地をサクッと焼き上げ、齧るとつるりと舌触りのいい冷たいカスタードが口の中に入ってくる。
香ばしい生地の食感とカスタードの濃厚さと甘美なバニラビーンズの香りに思わず三人同時で頬を押さえて、お腹はいっぱいだったけど本気でもう一つおかわりするか考えたくらいだ。
誘惑になんとか打ち勝って、予定より時間があまったからカラオケに行き、二人とはそれぞれ用事があるからと現地で別れた帰りの道中。
久しぶりの人物から連絡があったので、電車に乗って帰るところを莉乃はそのまま駅で待ち合わせることになった。
「声、前より低くなってた気がする。電話だからかな。うわっ、本当に久しぶり」
通話ボタンを切って、思わず懐かしさから声が出た。
それくらい久しぶりの人だった。高校卒業と同時に留学した人だから四年ぶり? そんなに経ってるんだ!! 本当びっくりだ。
電話の相手は兄の友人。よく遊びにきていたので自然と話すことも増え、当時は兄込みで遊ぶこともあった。だけど、家に来た時に仲良くしてたくらいで、当時は携帯なんてもってなかったから連絡もとってなかった。
しばらくしてから兄絡みで連絡先を交換したことはあったけど、それっきりだったし。
年上の大人。グローバルな経験をしてきた人と話すのは楽しみだ。もともと面倒見のいい人だから、話す時は変な気を遣う必要もなく居心地がいい。
ここだけの話、中学の時少し淡い恋心を持った相手でもある。それだけ、当時の私には魅力的で憧れる人だった。
受験だったり、疎遠になったりでそういった思いは風化したが、頼れるお兄さんのイメージはそのままだ。
それに、莉乃の今の現状を知らない相手だから、その話題もでることもないし気分転換になる。
今日は久しぶりに家に来る話を兄から聞いていた。
兄たちが高校時代はよく泊まっていくこともあったので、両親とも交流がある。そのため、その当時は都築家で夜一緒に食べることもあったため、今日もそのようになると聞いている。
兄も会うのは久しぶりと言っていたし、ゆっくりしていくのだろう。
今日は休日出勤をしていたらしく、一度家に戻ってから都築家に来るついでに拾ってくれるようだ。
莉乃の行動を何故知っているかだが、情報源は兄なのだろう。
今から車でこっちに向かうから15分後って言っていた。微妙に時間が空いているがコンビニに寄るまでもないし、買いたいものがあるわけでもないので、莉乃はそのまま足を運んで駅で待つことにした。
車が来てもすぐわかるように、道路側に近いコンクリの太い柱に背を預ける。
時間は6時を少し回ったところ。
この駅近辺は商業施設が多く、人の出入りが多い。買い物帰りやこれから遊びに出るだろう若者や、カップルが多い。
腕を組んで歩いていたり、改札の前で別れを告げたりしている姿を視界にいれながら、さっきまで遊んでいた志穂たちとの会話を思い出した。
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