上 下
75 / 185
第一部 第五章 終わりの始まり

side王族 庭園の秘密と光③

しおりを挟む
 
   ◇

 一方、秘密の庭園では、ついうっかり甘えてしまった双子はこれではいけないと、作戦遂行すべく試行錯誤していた。

 ──なんで、よしよししてもらっているんだ~。

 ──怖っ、テレゼア家、怖っ!!

 ジャックとエドガーはぷちパニック中だ。
 よくわからない間に、嫌がらせよりも喜ばせようと動いていたこと、二匹に嫉妬みたいなことをして甘えてしまっていたことは思い返すと赤面ものである。
 王子として恥ずかしい。兄たちよりも四歳下だとしても、立派なのだと本人たちは思っている。

 英才教育を受け本人たちもそうあるべきと努力が身についてきていてもまだ十歳。完璧な兄への過剰な憧れもあり、兄が絡むそれらのイタズラは本人たちに自覚はないが幼いものばかり。
 自分たちの魅力をしっかり有効活用するあたりはさすがであるが、やっていることは可愛いレベルであり、だからこそ彼らのそれに何となく気づいている者も目をつぶっている。

 もちろん、兄であるシモンも知っている。知っていて可愛らしい弟の行動を黙認していた。
 大きな被害もなく、ついでに彼らの気持ちを尊重しこのまま寄ってくる女性を排除してもらっておいても悪くないだろうと密かに思っている。

 次期王になることは決まっていないが、第一王子、そして現王の長子という立場は、ほかの王子たちよりも周囲の期待が大きかった。
 その分、シモンは常に王子としての振る舞いを意識し密かな努力を積んできたが、それを邪魔する者も多かった。

 それら全てを自分が相手していたらキリがないので、弟たちの善意なる行為はそのまま受けておいても問題ないだろうと思っていたためだ。
 これまた冷静なシモンであった。

 そんな彼の弟であるから、可愛いだけではなくよく頭が回る。
 それが双子となれば、連携プレイもお手の物でそんな彼らに敗れ絆された者のは数知れず。

 今まで面白いほど騙される大人や、同じ年頃の子息や令嬢を相手にしてきた。
 これまで自分たちの思うようにいかないことはなく、ここにきて負けるわけにはいかないと闘争心を燃やす。

 ジャックとエドガーはぎゅっと手を握り合って、対岸の森を見つめた。
 あそこなら、さすがにびっくりドッキリするものが山ほどあるだろうとニンマリ。

「エリザベス。もっと変わった生物を見たくないですか?」
「ええ。見れるものなら見てみたいです」

 予想通りの返事に、このままでは王子としての沽券に関わると、双子はぐっと拳を握り合う。

「なら、川を渡ってあちら側に行きましょう」
「それは楽しそうですが、従者たちはどうされるのですか?」
「もちろん、彼らも後でついてくるので大丈夫です」
「そうですか。なら、行ってみたいです」

 エリザベスが快諾すると二人は視線を合わせ、決意したように大きく頷くとエリザベスの手を取った。

 とにかく、驚く声を上げさせたい。
 名付けて『ふんぎゃあ、と声を上げさせるぞ作戦』開始とばかりに、双子は意気揚々と歩みを進めた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私ではありませんから

三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」 はじめて書いた婚約破棄もの。 カクヨムでも公開しています。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

殿下、今日こそ帰ります!

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
彼女はある日、別人になって異世界で生きている事に気づいた。しかも、エミリアなどという名前で、養女ながらも男爵家令嬢などという御身分だ。迷惑極まりない。自分には仕事がある。早く帰らなければならないと焦る中、よりにもよって第一王子に見初められてしまった。彼にはすでに正妃になる女性が定まっていたが、妾をご所望だという。別に自分でなくても良いだろうと思ったが、言動を面白がられて、どんどん気に入られてしまう。「殿下、今日こそ帰ります!」と意気込む転生令嬢と、「そうか。分かったから……可愛がらせろ?」と、彼女への溺愛が止まらない王子の恋のお話。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

処理中です...