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第一部 第二章 ひっそり目立たずが目標です
出端をくじかれる②
しおりを挟む「魔道課が張り切っているからね。これからもいろいろ出てくるんじゃないかな」
「そうなんだ。……それは、いいことね」
魔道課は魔法研究所のひとつで、魔道具の研究を主とする集団が属している場所である。
開発されたものは仕方がない。
これで当初のそこそこできる、イコール、無難な淑女計画が崩れてしまった。
学園の方針、つまり、クラスごとにある程度魔力を同じにし、教え方や進み方も変えて人材を育みましょうとする考え方はすごく合理的で賛成ではある。
だけど、それなりにこなそうのレベルが上から数えたほうが早いなんて予想外すぎた。
何度も転生していると言っても毎度少しずつ違う人生。そして、今生も違う。
違ってくれないと詰んでしまうのでありがたいのだけれど、予想の域を超えているよぉぉっと、にっこり笑うルイにつられて同じように笑みを浮かべながら、私は意気消沈していた。
「最高クラスになってなぜそんなに落ち込むんだ?」
淑女笑顔をキープしながら嘆く私の横で嬉しそうに笑うルイとの会話に入ってきたのは、現王兄の子であり継承権第二位のサミュエル王子。
そして、私を追い回した人物であり、彼だけのせいにするつもりはないが、王都学園に入学することになった元凶。
燃えるような赤髪の癖のある短い髪に、赤みを帯びた瞳は非常に目立つ。
切れ長の瞳だけ見るとキツいイメージだけど、全体が整っているので上品な顔立ちにまとまっている。
端的な言葉とともにこちらを見る双眸には何も含むことがないのは、門扉のところで待ち構えられた上で謝罪を受けたので理解している。
父親が軍事部トップということもあり、サミュエルも武道派の直情型という印象を受けた。
あの日も悪気はなく、従兄弟のルイを思っての行動だというのも先ほどのでよく理解した。
どうやらずっと気にかけていたらしく、悪かったとまっすぐに謝られては私も受け入れるしかない。
その潔さは気持ちいいものであったが、サミュエルのせいで初っ端から学園で目立ってしまったのは否めない。
私は小さく息を吐き出し、何度も己にも言い聞かせてきた言葉を告げる。
「ひっそりが目標なので」
「ひっそり? 目立ちたくないということか。だが、ルイと仲が良い時点で無理だろう?」
ごもっともな意見に、私は言ってくれるなと非難を込めてサミュエルを見上げた。
さすがにあまり面識のない王族を睨むとかはできなので、じと、くらいは許してほしいところだ。
「そこはそこ。ほかの部分でと言う話です」
「そうだよ。サミュエル。僕とエリーの仲は揺るがないから、ほかでのひっそりだから」
「お、おう。……頑張れ」
本人である私が主張するならまだしも、ルイに余計なことを言うなとばかりにきっぱりと言い切られ、サミュエルはぽりぽりと頬をかいた。
勢いに押されて意見を引っ込めると、応援までしてくれる。追いかけ回された時は融通が効かないと思っていたが、案外いい王子様である。
そもそも、なぜサミュエルが自分たちのところにいるかというと、異性と話すのが面倒くさいのか、話しかけようと虎視眈々と狙っている女性陣を全無視して席に荷物を置くと、すぐにルイと私のもとにやって来たからだ。
避難場所ではないんだけどなと思いながらも、話してみるとまっすぐなところとか好ましい人物だ。
ただ、二人が揃うと圧巻だ。
彼らの人格は好ましいと思っていても、最高クラスに配属され、二人の王子がそばにいる事実に出端をくじかれた感は否めなかった。
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