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第2章
104たりない*③(カシュエルSIDE)
しおりを挟むカシュエルは押さえていたすべての魔力を放出する。
身体も魔力も、そして気持ちもすべて自分色に染めたくて、もっともっと欲しくてカシュエルはレオラムの感じる姿を見つめながら腰を送り続けた。
この時だけは、レオラムのすべてが自分に向いていると実感できる。
「レオ」
「あっ、あー……っ」
「もっと混ざり合いたい」
「……んあっ、……カシュ……」
レオラムの声が甘えるように自分の名を呼ぶ。
艶めかしく息をついて身をよじり、混ざり合いたいと言った時にまたきゅっと締まった後ろにカシュエルは口を引き上げた。
二人の熱が混ざり合い、魔力が絡み合いレオラムの中でしみこんでいくのを見るのが好きだ。
人によっては意識を失うほどの強烈な魔力を、レオラムは今は居心地良さそうに受け入れてくれている。
それがどれほどカシュエルにとって特別なことか、レオラムは知らない。
誰も、知らない。
自分も周囲も気にしなかったものを、レオラムが気付かせた。レオラムだけが受け入れられる。
カシュエルの存在そのものをすべて受け入れて、心地良さそうにしてくれる存在を、どうして手放そうと思えるのか。
「レオ、レオ」
「ん、……カシュ」
名を呼ぶと、呼ばれ返される。
何も感じないと思っていた胸が、レオラムがいるだけでとくとくんと弾む。
すがりつくように、自分に伸ばしてくる手が愛おしい。
いっぱいいっぱいでも伝えてくれようとする気持ちを、カシュエルはひとつも逃さないように掬い取る。
「ここはいやらしく私に絡みついてくるね」
腰を送り込みながら首筋に吸い付くと、そこがまたきゅっと締まる。
またひとつ赤い痕に満足してレオラムを見ると、とろりと蕩けた眼差しがこちらを見ていた。茶と時おり黒みを帯びる瞳が、自分だけを映している。
その眦にキスを落とし、どこもかしこも混ざり合って自分の存在がもっともっと定着するようにと、腰を回して突き先ほど吐き出したものを攪拌する。
レオラムを知れば知るほど、抱けば抱くほど、気持ちを感じれば感じるほど、足りない、もっとだと気持ちが暴れそうになるのを押し殺し、レオラムを抱きしめた。
「あっ、あっ……、んぁっ!!」
「かわい。もっと乱れて」
甘く喘ぐその息さえも取り込むように、深くキスをする。
何もかも愛おしすぎて、離したくなくて、自分だけのものにしたくて、舌も絡めながら溶けていくレオラムを見つめた。
レオラムは単純に魔術の扱いに長けているのだと思い気づいていないが、カシュエルの魔力を流し込みそれを定着させることで、意識すればレオラムを探すことができるようになった。
カシュエルも初めてのことなので、そんな使い方があるとは知らなかった。そもそも、レオラムが相手だからこそ知りたいと思って気づいたことだ。
今ではそれがあるから、心配も嫉妬も、何かあれば自分が動けると思えることでなんとか押し込めることができているのかもしれない。
赤く染まった小さな耳をパクリと食べ、レオと名を呼びながら舌を差し込んだ。突き入れるたびに、甘い声で喘ぎ、たまに名を呼ばれるのがたまらない。
もっと呼べ、喘げと、細い両足に手を差し入れさらに足を開かせた。
湯船から身体を起こし、そのままレオラムの身体を持ち上げる。
「あっ」
不安定な体勢にさらにしがみついてくるのを受け止めながら、わざと肉がぶつかる音をさせて揺さぶった。
もっと、もっと埋め尽くしたい。
何かあれば、真っ先に自分が浮かぶように刻み付けておきたい。
くすぶっているものは、どうしても消えさってくれない。
理性では物事によっては仕方がないとわかっていても、それがいつ均衡を破るのか自分でもわからない。
レオラムの左手が、両手が今は自分に回されている。
人を守るために動かされる小さな手。カシュエルはきつく目をつぶった。
次に、自分ではなく誰かを頼ったり、ここから逃げるような素振りを見せられたら、ぎりぎりで均衡を保っているものが爆発してしまいそうだ。
頼むから自分だけを見つめてそばにいてくれと、カシュエルはまたレオラムの唇を喘ぎとともに奪う。
もっと自分だけを欲しがって。
自分だけに染まるように。
どうしようもなく渇望するこの思いを満たしてくれと、カシュエルはレオラムを貪った。
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