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第1章
22確認③
しおりを挟む再度上半身を滑るようにゆっくりと動いていた視線が、下半身で止まる。レオラムはぞくりと身を震わせた。
「全部見せて」
「絶対大丈夫です」
身をよじり、懸命に訴える。
王子に見てもらわなくても、問題ない。そもそも、どうして王子が確認という名でレオラムの身体を見るのか。
「どうして? レオラムが見えないところに傷が付いていることだってあるのに」
「それは……」
「ねえ、レオラム。君が本当に嫌なら隠していることを無理に暴きたいわけではない。だけど、そのせいで無茶をするならそれは私は許せない。これまで危険なこともたくさんあったはずだ。無茶をしてこなかったか確認したいだけなんだ」
なおも言い募る王子は、何を思ったか右手でつつつっとレオラムの背中をなぞった。
「ひゃっ」
「いい反応。はい。脱ごうか」
「…………っ!?!?」
思わず手の力が緩んだ瞬間に、ずるっと下着ごと下げられ、声にならない声が出た。
王子の前に全てを曝け出し、羞恥で顔に熱が集中する。
「へえ」
カシュエル殿下から感心したような声が漏れる。
レオラムはこれ以上ないくらいに、顔が茹でていくのが自分でもわかった。全身の白い肌も、ほんのり赤くなっていく。
ズボンを抜き取るため屈んだ王子が、どこを見ているのか明らかだった。
慌てて大事なところを手で隠したが、それはそれで同性同士でどうなのかと思い逆に意識しすぎなような、でもやっぱり見せるものではないといった葛藤に悩まされる。
この国は同性同士のカップルも一定数いるし、数年前に法的にも伴侶になれるようになった。だからといって、自分がそういった意味で同性を意識することは今までになかったし、相手もすぐにそうだろうなんて思わない。
国に認められることで以前よりも見かけるようになったが、まだ圧倒的に異性間のカップルの方が多い。
何が言いたいのかというと男同士だからといって絶対安全ではないが、自分が意識しすぎて変な空気になるのも嫌だし、かといって貧相な身体を王子に見せるのも嫌で、隠した手をどうしたらいいの? ということだった。
王子にそのつもりはなく、傷があるかを見ると言っていたから目的もわかっている。それでも、身体を見られる恥ずかしさは収まってくれない。
「あのっ」
「ああ。すまない。レオラムはヒゲも生えていないようだし全身もあそこの毛も薄いのだな」
はい。アウトー。
ばっちり見られてしまったらしい。
「あまり見られると困るのですが」
「どうして? 肌もつるつるしてとても触り心地が良さそうだ。それに隠していたら見れない」
だから、見なくていいんですって。
「その貧相ですし。さっきも言いましたが見てもらわなくても傷などありませんから」
「だから、それを確認する」
だから、確認ってなに?
どうして?
殿下は殿下で譲らないらしい。真っ裸にされてから抵抗しても今更だった。
今のレオラムができることと言ったら、早くこの状況を打破することだけだろう。
「でしたら、さっと見てもらってもいいですか? 公衆浴場ならまだしも、一人素っ裸というのも本当に恥ずかしいので」
本当は見られたくないが、見ないと引かないのならさっさと確認してもらった方が早いだろうと諦めの境地で告げると、王子は斜め上の返答を返してきた。
カシュエル殿下は、にっこりと事もなげに告げる。
「そういうものか。なら、私も脱いで一緒に入ろう」
「えっ」
「洗いながら確認する方がしっかり見れるだろう」
逃亡防止とばかりに扉を塞ぐように立つと、王子は躊躇いもなく衣服を次々と脱ぎ去った。
目の前で、直視するにはあまりにも美しい裸体が惜しげもなく晒される。均整の取れた身体はどこを見ても綺麗に薄い筋肉が付いていて無駄がない。
「おいで」
あまりのことに呆然と見守ることしかできなかったレオラムを担ぎあげると、カシュエル殿下は悠々と浴室内へと連れ込んだ。
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