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はじめての恋4
しおりを挟む「ルーシーが許してくれるなら、ルーシーに触れたい。人と触れてこんなに幸せな気持ちになれるなんて思わなかった。こんな気持ちを知ったらますます離れることができないよ」
「はい。そのように向けられる気持ちはとても嬉しいです」
頬に重ねてきた手は震えていた。
だけど、その眼差しは穏やかさだけでなく、剣呑な気配を纏い鈍く光りにぎくりとする。
ラシェルは手負いの獣のようだ。ぷるぷると震えながらも狙った獲物は本能が強く働くのか逃がさないとばかりに動く。
常に触れていようとするのは不安なのもあるのだろうけれど、本来は強者。刈る側なのだと知らしめてくる。
するりと親指で唇を撫でられて、滴るような色気とともに添えられたあからさまに強請られる。
「ルー、ここ、触れてもいい」
「ラシェル様の初めてもらいたいです。キス、してください」
「ああ、潔いところとっても好き」
その言葉とともに吐息を触れさせると、そのままゆっくりと唇を重ねられる。
柔らかな感触をなじませるように、触れ合わせるようなキスを何度もされる。
「ルーが好き」
啄むような口づけをするたびに、愛しげにささやかれ、首の後ろをするりと撫でられる。
段々と深く重なりあっていくその刺激に耐えきれず薄く口を開けば、ぬるりと熱い舌が入り込んできた。
舌先で上顎の裏をなぞられたかと思うと、今度は歯列を確かめるように舐められてぞくりとした感覚に襲われる。
「んんっ」
「ルー。もっと口開けて」
「ん、ちょっ……」
激しすぎないだろうか。
言い訳をさせてもらうと、初めてというラシェルとのキスは可愛らしく唇を触れ合わせるだけのものだと思っていたのだ。
引き上げるように深くかき抱かれて、舌を絡め取られる。ちゅうっと舌の奥を吸われて、ぞくぞくと快感が走った。
さすがにそこまでは許していないぞと、とんとんと胸を叩いて抗議すると、舌先で上顎の裏をなぞられた。
キスを嫌がっていたくらいなのに、まさかのディープにくらくらいしながら舌を優しく吸われると、腰に電流が走ったようにぞくぞくした。
きゅっと舌を絡め吸うように引っ張られ、ようやく離れていった。銀糸の糸がぷつりと切れて、口の端に漏れたそれをぺろりと舐め取られる。
「……もう、やり過ぎです」
「ごめん。調子に乗った。そして気持ち良かった」
うっとりと告げるラシェルに、ルーシーはじとりと睨み付ける。
そういえば、気持ち良いことが好きだとも堂々と言ってのけていたなと思い出す。
殊勝なわんこの姿を見せたと思えば、獰猛に求められて、ルーシーは息も絶え絶えだ。
「ここまでするなんて聞いてません」
「でも、これもキスだよ。好きな子に許してもらって嬉しい」
するすると名残惜しそうにルーシーの唇を撫でながら、ラシェルの笑みが深くなる。
続いて楽しそうにぷにぷにと唇を押し、によによと締まりのない顔で覗き込んでくる。
「嫌だった?」
「嫌では、なかったですけど……」
甘えるような声に返事が上擦る。
どうやら自分は、ラシェルに困ったような顔されるのも、このように幸せそうに笑顔を向けられるのにも弱いようだ。
きゅうきゅうと胸の奥が絞られる。
その笑顔に自分が関わっていると思うと幸福感がこみ上げてきて、ルーシーも笑顔を浮かべた。
すると、愛おしくてたまらないとばかりに頬にかかったルーシーの髪を優しく耳へとかけて、ラシェルは頭上に、額に、頬にキスをすると、抱きしめる腕に力が込められる。
あまりのしつこさに最後はぷんすか怒ることになることを知らないルーシーは、そっと寄り添うように背に手を回した。
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