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冷徹からの熱愛②
しおりを挟む「手を出さず……二年も待ったのに?」
「私には昨日の今日です。クリフォードお義兄様のは待っただけです」
そう待っていただけだ。しかも、欲望を抑えるために態度は冷たくて。だから私は傷ついた。
「ということは口説いても?」
「私が嫌がることをしないのであれば」
むしろ、まずなぜ先にそれをしなかったのか。
それに家族のようにと言ったけれど、好きかどうかわからない態度に戻されるともんもんとすると思う。
口説き音痴すぎる義兄を見てしまった後だと、それがすぐ改善されるわけでもないのにって思いそう。
「……フローラがそばにいて耐えられるか」
「そこは耐えてください。そもそも好きイコールすぐ襲うということ自体がおかしいと思います。本当に好きだというのなら」
「……そういうものなのか。なら俺が悪かったのだろう。いや、悪いな。だが、この気持ちは……」
いや、そこで考え込むの?
あと、そういうものなのかってどういうこと?
でもすぐに納得したし、なんでそこだけ歪んでるの?
なんか、過去に何かあったのかと疑うレベルである。
考える余裕ができ一つ気になるとあれこれ気になってくるけど、今は今後に大事な話をしているのでひとまず閉まっておく。
「私はまず会話がしたいです。日々の中で相手を知りたいです。それができないなら出て行きます」
「わかった。フローラがそばにいてくれるのなら耐えてみせる。二年だな」
「はい。二年です。ですが、気持ちは約束できるものではありません。私もですが、クリフォードお義兄様も」
「俺は変わらない」
「どこからその自信がくるのかわらならいですが、これからということで」
言い切られるとほっとする。
なんともまあ、自分でも複雑な心境だけど正直ここでクリフォードにならと以前のように戻られても釈然としない。
偽りのない義兄の態度を見たいのであって、その上で気持ちを伝えつつ待てをしてくれるならと思わないでもない。
「わかった。できれば余所見はしないでほしい。さっきのタイラーという男とフローラは仲が良すぎないか?」
「幼い時からお世話になってきましたので。歳も近いですし気安くはありますがそれだけです。クリフォードお義兄様が約束を守って下さる限り私もその間はお義兄様だけを見ます」
どうやら空気が重かったのは、タイラーに嫉妬していたからのようだ。
ここで暴走しないのは、出て行くと言う言葉が効いているからなのか。
ちょっと進歩? 結局義兄との会話は模索になるけれど、断然冷たい時と比べたら会話できることは進展であるし内容は内容だけど気分はいい。
嫌われていない、好かれていると知り、知らなかったことや気づいたこともあったので気持ちに余裕もできたと思う。
先の気持ちはわからないけれどなんとなくやっぱり惹かれてはいて、それでいて傷ついてはいているのでしばらくは待ってもらおうと思う。
ネックレスはクリフォードの好きの気持ちを聞いた後なので、一度貰った物を返すのもと思ったけれどお返ししておいた。
ものすごくショックを受けていたけど私が受け取ってもいいと思う時、また渡したいと思う時にということでしぶしぶ納得してもらった。
それからすっかり態度の変わったクリフォードにことあるごとに口説かれ、どちらかというとこちらがメインになりつつある駆け引きというしつけの毎日が始まった。
嫌われ出て行こうとしていたのに、滅多に表情を変えないことで有名なクリフォードが私の顔を見ただけで嬉しそうに笑う。
仕事となると相変わらずクールでできる男性なのだけど、私に関わると途端に密やかに溺愛モードを発動する。
淡々とした口調だったり、ものすごく考えてたくさん言葉を発したりと、なんかいろいろ考えすぎているのだなと思うほど統一性はないけれど、甲斐甲斐しく世話を焼こうとするしなんでも買い与えようとする。
その辺は侯爵と同じだなと思うところであるが、直接反応を見ながらプレゼントできることが嬉しいのだと言われれば頑なに断ることもできない。
部屋には似合うと思ってと渡されたプレゼントの山が積み上がってきたので、そろそろ落ち着かせたいところ。
その中にまだあのネックレスはない。
ときおり、どうしても衝動が抑えられないと落ち着かせたいからと触れる許可をとられる。
手のみならと了承し、最初はそわそわと落ち着きなかったけれど次第に焦りのようなものもなくなってきて、度々確認されるのでいちいち手くらいなら確認は必要がないと言うと、さりげなく触れられることが多くなった。
しかも、私が少し気を許すと指の絡みだとか発展させようとするので油断も隙もない。
繋ぐ時間も日に日に長くなっている気がするし、まだかな? 待てをしてるよ? 早くゴーサインをとじっと見つめてられるのはかなりの忍耐が必要だ。
私は彼の顔が非常にタイプなのである。そして何度も言うが態度があれだっただけで、気遣いは感じていたのだ。
そんな彼に真摯にたまに甘えるようにされ、特別だと言われれば、もういいかなって心が揺れる。
だって、嫌いではないのだ。嫌われていると思ってかなりショックを受けるくらい情は向いているのだ。
そんな相手に毎日甘く口説かれて、たまになぜ拒否しているのかわからなくなってくる。
公式の場でなければ隙あらばくっついてこようとするし、ときおり我慢するためか変な動きをしているけれど、最近ではそれもなんだか微笑ましく感じる。
何より、その視線は誰が見ても私を好きだと告げていて熱かった。
それを見たクリフォードの親友のザックも「キャラ変か」と、鳥肌を立てて驚いていた。
そして、部屋に押しかけた時のクリフォードの言動を聞き、思いっきりクリフォードの頭を叩いた。
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