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変動③

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 その様子に、ディートハンス様のこの物言いに驚くのは普通のことなのだとちょっぴり安堵する。
 あまりにも気にしていない様子のディートハンス様を見ていると、自分がおかしいのではないかと錯覚に危うく陥りかけるとこであった。

「やっぱり自分で」

 いつまたどんな発言で驚くことになるかわからないので危険は減らしたくて申し出ると、ふるふると首を振られ拒否された。

「私の楽しみを取らないでほしい」
「楽しみですか」
「ああ。ミザリアに構うのは楽しい。過ごせる時間はずっとくっついていたい」

 燃えるような熱い双眸でじっと見つめられながらにこっと破壊力の笑顔を前に、私は突っ伏した。

 ああああああぁぁぁぁぁ、ディートハンス様が甘い。
 そして、私を好きなことを周囲にも隠さないし、返事はまだのはずなのに好きがことがるごとに伝わってきて、顔を赤らめることを止められない。

「やっぱり可愛いな」

 あふあふしていると、ディートハンス様は私の頬をつつきにこにこと笑顔を浮かべ、きゅっと抱きしめてくる。
 ベッドでは手を繋ぐだけだったのに、人がいるところでは自制を利かすことができるからとスキンシップが露骨なのもここ最近の変化である。

「ミザリア、好きだ」
「うっ、はい。ありがとうございます」

 そして事あるごとに、好きを伝えられる。
 このままでは何もできなくなってしまいそうだ。
 とろとろに甘やかされて仕事までできなくなりそうな甘やかしに、絶対に仕事は手を抜かないぞと誓うのだった。

 すべてを解決するまでの、それはつかの間で優しさに包まれ甘やかされるだけの時間――。


  * * *


 北風がさらに厳しく感じるころ、その知らせは瞬く間に王国全土に広がった。

『魔物の大群が各地で大暴れしている。しかも徒党を組みだし知恵まであるらしい』

 それらの情報は国民に不安を与え犠牲者が増えるたびに恐怖が伝播し、陰鬱な空気になっていった。
 ただちにそれぞれの家門は魔物退治に乗り出した。王国騎士たちも王都の要だけを残し救援に向かう。その中には総長のディートハンスも含まれていた。

 動ける魔物は気温など関係なく活動し相手は手当たり次第生物を捕食するのに対し、こちらは寒さで動きが鈍くなり冬は食料が少なく道は凍り時に塞ぐこともあるので補給は滞りがちになる。
 長期決戦になればなるほど、こちらが不利になる。勝機を掴むためには、最初から力をぶつけ少しでも数を減らすしかなかった。

 全滅させない限り魔物は人が多く集まる場所へと移動し、各地で逃れた魔物が王都へと移動していると情報が集まると戦々恐々となった。
 各地で戦いはまだ繰り広げられる最中、王都が狙われもし甚大な被害が出ると復興が長引くことになる。
 地方を守ることもだが、王都の守りはさらに大事であった。

 さらにちらちらと王都にも雪が降り始めさらに本格的な冬が到来するころ、ぞろぞろと北部からランドマークの家門を掲げた旗とともに王都へと向かっていることがわかった。
 最初のころは王都に集まる魔物討伐のため、国への忠誠を示すためかと多くの国民が思ったそれらは、徐々に南下していくたびに疑念に変わる。

 なぜか公爵たちは魔物に襲われることなく、むしろ魔物を従えて移動しているらしいという衝撃の事実が発覚した。
 まるで王都が手薄になることがわかっていたかのように、公爵は王都に着くと宣戦布告した。

「国を統べる正当な王はフォルジュではなくランドマークであるべきだ。偽りの王よ、その座を返還してもらう時が来た。全軍、かかれ」

 号令とともに公爵の部隊が城に突入にし、各地で公爵の同盟軍が狼煙を上げた。
 そして国が混乱しそれぞれ対応に追われている最中、ミザリアが騎士団寮から忽然と姿を消した。



✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.

ここで第四章終わりです。
予定より長くなっておりますがようやく終わりが見えてきました。次か、収まらなければその次の章で終わる予定です。ここまでお付き合いいただき本当に感謝です。

途中、ハートの実装もされこんなに反応していただけるなんてと喜び、一手間かかるエールも変わらずいただきと毎日励みをいただいております。
あともう少し見守っていただけたら幸いです。

いつもありがとうございます(✿´꒳`)ノ°+.*


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