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誓いと告白①

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 しばらくして、私は仰向けになりディートハンス様の部屋のベッドに腕と腕がぴったりくっつく状態で並んでいた。
 天井が高いのだなとどうでもいいことを考えてみたけれど、横にいる存在を意識せずにはいられない。
 ベッドの上なのにまったくくつろげない。

 腕と腕を触れ合わせるため身体はまっすぐで、身じろぐのも躊躇われる。
 一緒に寝るにあたってのディートハンス様のポイントはくっつくことなので、こうして腕を触れ合わせているのだけど何か違うというか。

 ――くっつくってこういうこと?

 具体的に想像していたわけではないけれど、何か違うというか。
 それに話にくいのではないかと顔を横に向けると、ディートハンス様も同じように顔をこちらに向けた。

 艶やかな黒髪が頬にかかり、普段意識しない一つひとつのパーツに視線が吸い寄せられる。
 形の良い切れ長の瞳は私と視線が合うと細められ、すっと通った鼻筋や自分よりも大きめな口がゆったりと優雅に笑みをかたどっていく。

 どれをとっても色気とともに無垢さも感じさせるもので、一緒に寝るのは初めてではないのになんだかいけない気分になる。
 視線にさらされ、美貌に当てられ、気配に呑まれ、すべての意識がディートハンス様へと向かうのを止められない。

「これでは寝にくいし話しにくい。手は出さないとは言ったがそれはどこまで許される? できれば手は繋ぎたいのだが?」
「そうですね。手を繋ぎましょう」

 妙な雰囲気は心臓に悪すぎるとすぐさま提案に乗り、ごそごそと二人同時に横に向くとすかさず手を取られた。
 思わずびくっと反応してしまったが、大きな手に包まれてほっとする。
 アンバーの瞳がじっと私を観察していたが、きゅっと繋いだ手に力を入れるとディートハンス様は真剣な顔つきになった。

「怖くはないか?」
「怖いです。だけど逃げたくないです」

 何をとは言わなかったが、そう遠くない未来に起こることに対してだということはわかった。
 ディートハンス様の手を握り返し、みんなの前で告げた時と意思は変わらないと頷く。

「……そうか。私は今でも立ち向かわず逃げてほしいと考えてしまう。ミザリアに何かあると思うと怖い」

 そう告げたディートハンス様の手がわずかに震えた気がして、私はさらに指の力を込めた。
 心を砕いてくれる、自分の味方をしてくれる、信じられる人たちがいるから私は立ち向かえるのだと強く意識する。

「守ってくださると信じています」
「全力で守る。だが、危険なものは危険だ」
「ディートハンス様たちもいつも危険と隣り合わせ、命がけで国を守ってくださっています。怖いからといって、私だけ逃げるわけにはいきません。それに記憶のことも含めて向き合いたいです」

 もし逃げたとしてもその分誰かが危険にさらされることになるし、ディートハンス様たちは魔物のこともあり、必ず伯爵や公爵と対峙することになる。
 ならば、私は私ができることをしたい。
 決意を込めて告げると、ディートハンス様の瞳の奥に葛藤を押し殺すかのように火花が散り、それらを押し殺すようにゆっくりと息をついた。

「この冬は今までにない厳しいものになる。王国にとって、騎士団にとっても。民を守るためにも私たちが倒れるわけにはいかない。それらは私なしでは立ちゆかないことも出てくるだろう」

 そばにいたいのに……、と吐息のように零し、ディートハンス様はぐっと唇を噛みしめた。
 ランドマーク公爵が謀反を企ているらしいこと。その手段として、どこまで操ることができるのか改造された魔物まで出てきた。

 動きが今までと違うことも含め素早い対応が必要になり、レベルによるがディートハンス様が被害を抑えるためにも対応する可能性は高い。
 むしろ、国防の要であるディートハンス様を相手は必ず意識しているはずで、何か仕掛けてくるだろうとの見解だった。すでに呪いの件もある。

「出かける際には数人体制で護衛していただくと聞いています。大事な時期に私に人員を割いていただいているだけでも十分です」
「…………」
「それに私も討伐に出るディートハンス様たちが心配です。互いにできることできないことがあって、今回私にできることがある。今回のことも関係がなければ私は動くことはなかったと思うので」

 仕方がないという言葉も大丈夫という言葉も適当ではなくそこで黙り込むと、ディートハンス様は悲しげに眉尻を下げた。

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