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【9】聖女 魔女になる
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「ジェイド! 待って待って! 帰らないで!」
扉の前にいるであろう彼を慌てて呼び止める。
「い、いやでも――……」
「誤解だから!」
いや、誤解じゃないかも知れないけれども!
なんだこれ……! ここに居る三人誰一人として恋愛関係にないのに、浮気を見つかったビッチの気分を味わって居るぅ……!
そろそろと伺うように扉が開いて、隙間からジェイドが顔を覗かせた。
「……えーっと、あの~、何かすんません。オレジェイドっていいます……」
「存じ上げております」
にっこり笑う元ぬいぐるみ。
「ジェイド、これゴーシェだよ……」
「え!?」
目を見開いてドアを開き、ジェイドはわたしとゴーシェを見比べた。
「え? え? え?
だ、大丈夫だよルチルっち! オレ特殊性癖にも理解あるよ!」
「ちがうわっ!!」
誰がぬいぐるみに欲情するヘンタイか!
「ジェイドさん、これが僕の本来の姿なんです。訳あって普段は人形の姿に身をやつしておりますが、主の口づけで一時的に元の姿に戻れるのです。
我が主はお優しい方ですから、耐え難きを耐え、僕にいっときの自由をお与え下さったのです」
「な、なるほど……?」
その説明で納得したのかしていないのか、ジェイドは首を傾げながら家の中へと入ってきた。
「いや実はさ、自警団事務所に通報があってさ」
つーほー?
「連理の森と惑いの森との境界に、魔女が住み着いたって」
『…………。』
ジェイドの言葉にわたし達は思わず無言になった。
扉の前にいるであろう彼を慌てて呼び止める。
「い、いやでも――……」
「誤解だから!」
いや、誤解じゃないかも知れないけれども!
なんだこれ……! ここに居る三人誰一人として恋愛関係にないのに、浮気を見つかったビッチの気分を味わって居るぅ……!
そろそろと伺うように扉が開いて、隙間からジェイドが顔を覗かせた。
「……えーっと、あの~、何かすんません。オレジェイドっていいます……」
「存じ上げております」
にっこり笑う元ぬいぐるみ。
「ジェイド、これゴーシェだよ……」
「え!?」
目を見開いてドアを開き、ジェイドはわたしとゴーシェを見比べた。
「え? え? え?
だ、大丈夫だよルチルっち! オレ特殊性癖にも理解あるよ!」
「ちがうわっ!!」
誰がぬいぐるみに欲情するヘンタイか!
「ジェイドさん、これが僕の本来の姿なんです。訳あって普段は人形の姿に身をやつしておりますが、主の口づけで一時的に元の姿に戻れるのです。
我が主はお優しい方ですから、耐え難きを耐え、僕にいっときの自由をお与え下さったのです」
「な、なるほど……?」
その説明で納得したのかしていないのか、ジェイドは首を傾げながら家の中へと入ってきた。
「いや実はさ、自警団事務所に通報があってさ」
つーほー?
「連理の森と惑いの森との境界に、魔女が住み着いたって」
『…………。』
ジェイドの言葉にわたし達は思わず無言になった。
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