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【8】聖女 家をリフォームする

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「決めた! わたしもう今日からここに泊まる!」
「はぁ!?」

 ガッツポーズで宣言したわたしに、ゴーシェが素っ頓狂な声を上げた。

「いや、家具どころか布団すら無いんですよ!?」
「うーん、でも春先だしへーきへーき! あ、何なら毛布ぐらいは買ってこようかな。どうせ後で必要になるしね!」
「て、テンション高ぁ……」

 そう呆れないで欲しい。なにせ、

「わたし『自分の家』って生れて初めてだからさ!」
「は……?」
「ほら、百年前にファイドウッドに派遣されてた時はさ、宿屋に逗留してたじゃん?
 その前は『教会』にいて、あそこは家じゃなくて、何て言うか『監獄』って感じだったし。一応自室はあったけど、それも四人部屋だったしね」
「……なるほど」

 何か思うところがあったらしく、ぬいぐるみはちょっとしょんとした。

「おー? どしたー? 疲れちゃったかぁ?」

 いっぱい頑張ってくれたもんね。

 頭をわしわし撫でつつ言う。

「ゴーシェは宿屋かジェイドの所に泊まって良いんだよ?」
「なに言ってるんですか。こんな所にルチルさん一人にしておけるわけ無いでしょう。僕も付き合います」
「おお! 紳士かよぉ~! ありがとう!」

 更に力強くわしわしすると、ゴーシェは頭を揺らして「あぁぁぁ」と呻いた。

 わたしはゴーシェを抱いたまま、毛布を買いにさっそく町へと出て行った。
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