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【5】聖女 勇者と再会する
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「いい人達ですねぇ」
「ぐぅ……!」
のんびり呟くゴーシェに、わたしは呻いた。
「心をえぐらないで……! 軽率に記憶喪失の振りをしたことを後悔してるんだから……!」
「いや、それは正しい判断だったのでは?
百年間のブランクはどう繕ってもそうそう埋まりませんし」
ソファーに座って、健康診断前にモルガナさんが入れてくれた紅茶の残りを飲む。
と、こんこんっと扉がノックされた
「ルチルっちー! 入っていーい?」
ジェイドだ。
「どうぞ~」
返事をするとちょっとだけ扉が開いて、隙間から団長さんが顔を覗かせた。
目が合うとニッと笑って部屋の中に入ってくる。
「これ、さんきゅーな!」
差し出されたのは、刈り取った『天使』の部品を包むのに貸していたロング・マント。
四角く畳まれたそれの上に、えんじ色のがま口が乗ってた。
「えーっと……?」
頭の上に疑問符を浮かべていると、ジェイドはにこにこしながらわたしの手を取ってマントごとがま口を乗せた。
「財布くらいあった方がいいだろ?」
「いいの? あ、ありがとう!」
わざわざ買ってきてくれたらしい。
手のひらサイズのころんとしたフォルム。くすんだ金の口金と、同色の小さな鈴がついている。端にネイビーの糸で小花の刺繍が施してあった。
カントリーっぽくて可愛い。
嬉しくて手にとって、
「……ん?」
そのずっしりとした重さに眉をひそめる。
「ぐぅ……!」
のんびり呟くゴーシェに、わたしは呻いた。
「心をえぐらないで……! 軽率に記憶喪失の振りをしたことを後悔してるんだから……!」
「いや、それは正しい判断だったのでは?
百年間のブランクはどう繕ってもそうそう埋まりませんし」
ソファーに座って、健康診断前にモルガナさんが入れてくれた紅茶の残りを飲む。
と、こんこんっと扉がノックされた
「ルチルっちー! 入っていーい?」
ジェイドだ。
「どうぞ~」
返事をするとちょっとだけ扉が開いて、隙間から団長さんが顔を覗かせた。
目が合うとニッと笑って部屋の中に入ってくる。
「これ、さんきゅーな!」
差し出されたのは、刈り取った『天使』の部品を包むのに貸していたロング・マント。
四角く畳まれたそれの上に、えんじ色のがま口が乗ってた。
「えーっと……?」
頭の上に疑問符を浮かべていると、ジェイドはにこにこしながらわたしの手を取ってマントごとがま口を乗せた。
「財布くらいあった方がいいだろ?」
「いいの? あ、ありがとう!」
わざわざ買ってきてくれたらしい。
手のひらサイズのころんとしたフォルム。くすんだ金の口金と、同色の小さな鈴がついている。端にネイビーの糸で小花の刺繍が施してあった。
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嬉しくて手にとって、
「……ん?」
そのずっしりとした重さに眉をひそめる。
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