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【5】聖女 勇者と再会する
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アンバー医師は白髪のおばあちゃんだった。小さくて丸い体に丸い眼鏡、頭のてっぺんに丸いお団子という丸づくしの人である。
お年の割に背筋はぴんと伸び、きびきびと動き、それでいて喋り方は穏やかという、ベテラン感あふれる女医さんだった。
会議室を貸し切りの診察室にして、わたしはどこにも怪我や痣がないか、あっちこっち確認された。それこそ目や口の中、さらには手の爪の間まで。
「うん、健康健康!
じゃあ、おばあちゃんはモルガナのお姉ちゃんとちょっとお話ししてくるからね。ルチルちゃんは座って休んでいなさい」
そうお墨付きをくれて、アンバー先生は部屋を出て行った。
彼女と入れ違いに、扉の向こうでモルガナさんに抱えられていたゴーシェが駆け寄ってくる。
「ルチルさぁん!」
「お待たせ、ゴーシェ。
モルガナさん、ありがとうございました」
「いえいえ」
「ああ、その人形ルチルちゃんのだったのかい。あたしゃてっきり、モルガナが仕事のストレスで幼児退行したのかと思ったよ」
「…………」
半眼でアンバー先生を見るモルガナさんに、わたしは苦笑いをした。
お年の割に背筋はぴんと伸び、きびきびと動き、それでいて喋り方は穏やかという、ベテラン感あふれる女医さんだった。
会議室を貸し切りの診察室にして、わたしはどこにも怪我や痣がないか、あっちこっち確認された。それこそ目や口の中、さらには手の爪の間まで。
「うん、健康健康!
じゃあ、おばあちゃんはモルガナのお姉ちゃんとちょっとお話ししてくるからね。ルチルちゃんは座って休んでいなさい」
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「いえいえ」
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