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【3】聖女 『天使』と出会う
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「――お前らぁ! 神聖な御堂でイチャついてんじゃねーぞ!」
背後の扉がばーんっと開いたかと思うと、二十歳ほどの青年が顔を覗かせた。
青色の短髪。どこかの制服のようなカッチリしたズボンとジャケット。騎士団の人かも知れない。
……なんか、どこかで見たことがあるような気がするんだけれど思い出せないな……。
「あ、す、すみませ――……、」
条件反射で謝ろうとしたわたしを遮って、
「は! こちらのレディをどこのどなたと心得る!」
床に仁王立ちしたゴーシェが遮る。
「え……? 生き人形……?」
違います。元・魔王です。
「こちらにおわすのは、伝説の聖女『ルチル・フローライト』様ですよ!」
ちょ、おま……! なにいきなり暴露してくれてんの!?
「え……?」
お人形にそう言われて、騎士さんは素直にわたしと――……祭壇の石像とを見比べた。
……おい。ちょっと待て。その石像わたしなのか。ぜんぜん似ていないのだが。
「え? え? 聖女サマってあの!? 死刑囚が魔王に覚醒しちゃったのを、自分を犠牲にして封印したっていう人!?」
しけいしゅう?
ちらっとゴーシェに目を向けると、彼はこちらの肩にぴょんと飛び乗ってきた。
わたしにだけ聞こえるように、耳打ちしてくる。
「……僕、これでも一応王宮付きでしたからね。僕が魔王の魂持ってたって事が公になったら、当時の上司とか、採用してくれた人とか色々困る人がいたんじゃないですかね」
なるほど。
「……あとは……勇者さん達が『錬金術師としての僕』の名誉を守ろうとしてくれたのかも」
「『友達としてのゴーシェ』の、でしょ」
頭をわしわし撫でると、ぬいぐるみはくすぐったそうに笑った。
ついでに勇者の名誉も守ったんだな……。まあ『仲間を背後から撃って魔王共々仕留めました』とは言えないか……。
背後の扉がばーんっと開いたかと思うと、二十歳ほどの青年が顔を覗かせた。
青色の短髪。どこかの制服のようなカッチリしたズボンとジャケット。騎士団の人かも知れない。
……なんか、どこかで見たことがあるような気がするんだけれど思い出せないな……。
「あ、す、すみませ――……、」
条件反射で謝ろうとしたわたしを遮って、
「は! こちらのレディをどこのどなたと心得る!」
床に仁王立ちしたゴーシェが遮る。
「え……? 生き人形……?」
違います。元・魔王です。
「こちらにおわすのは、伝説の聖女『ルチル・フローライト』様ですよ!」
ちょ、おま……! なにいきなり暴露してくれてんの!?
「え……?」
お人形にそう言われて、騎士さんは素直にわたしと――……祭壇の石像とを見比べた。
……おい。ちょっと待て。その石像わたしなのか。ぜんぜん似ていないのだが。
「え? え? 聖女サマってあの!? 死刑囚が魔王に覚醒しちゃったのを、自分を犠牲にして封印したっていう人!?」
しけいしゅう?
ちらっとゴーシェに目を向けると、彼はこちらの肩にぴょんと飛び乗ってきた。
わたしにだけ聞こえるように、耳打ちしてくる。
「……僕、これでも一応王宮付きでしたからね。僕が魔王の魂持ってたって事が公になったら、当時の上司とか、採用してくれた人とか色々困る人がいたんじゃないですかね」
なるほど。
「……あとは……勇者さん達が『錬金術師としての僕』の名誉を守ろうとしてくれたのかも」
「『友達としてのゴーシェ』の、でしょ」
頭をわしわし撫でると、ぬいぐるみはくすぐったそうに笑った。
ついでに勇者の名誉も守ったんだな……。まあ『仲間を背後から撃って魔王共々仕留めました』とは言えないか……。
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