婚約破棄を目指して

haruhana

文字の大きさ
上 下
7 / 9

バレた!

しおりを挟む
 アレンとエリーヌの居る部屋の扉は、少し開いていました。

 急いで部屋に駆け込んだので、しっかり閉めていなかったのかもしれません。

 ふたりの話し声が聞こえてきて、扉の前まで来ていたリーナは足を止めました。


「エリーヌ。さっきは胸の谷間に目がくらんで、じゃなくて、君の魅力に頭が真っ白になって、というか、ちょっと冷静な判断が出来なくなって、強引にリーナの別荘へ突入したけど、これはきっとすごく不味い事をしてると思うんだ。 堅物のリーナが、こんな破天荒を許すはずがない。 僕はなんとしてもリーナと結婚し、我が家の借金返済をしてもらわなくてはいけないんだよ。 だから、エリーヌは明日の早朝、ここを出て家に帰るんだ」

 一生懸命に説得するアレンを、潤んだ瞳で見つめるエリーヌ。

「うちには借金があるの? 先日も大きなダイアモンドでできた熊の置物を買ったところよ」

「今後はそういう必要でないものは、買わないようにしてくれるかい?」

「鮭を咥えてて、とても可愛かったの」

「熊は鮭を獲るのが上手だからねぇ・・。置物の値段は聞かないでおくよ。びっくりして倒れるかもしれない。 とにかく、その熊の置物の代金もリーナに支払ってもらわなくては」

「お兄様・・お兄様はリーナ嬢のものになってしまわれるの? 私・・ずっと前からお兄様の事をお慕いしておりましたのに・・」

「エリーヌ! 実は僕も、君にずっと惹かれていた。 君が・・好きなんだ」

「お兄様っ!」

 アレンとエリーヌは愛を確かめ合うように激しく抱きしめ合いました。

「エリーヌ。 リーナと結婚したって、僕の心は君のものだ。 借金を返済してもらったら、リーナとは離縁する。 そして、君を迎えに行くよ」

「お兄様っ!」

 熱く燃え上がったふたりが熱いチューをかまそうとした時、扉がバァン!と開かれました。

 そこには、仁王立ちで鬼の形相をしたリーナと、わんちゃんが立っていました。

「・・なぜ私が、ダイヤの熊が鮭を咥えた置物の代金や、あなたの実家の借金を支払わないといけないんですの? そして、払った後は離縁される? いい加減にしなさい!」

 怒り狂うリーナを怖いと思いつつも、開き直るアレン。

「ばれたら仕方ない! でも、君が何を言おうが、お人好しの君の両親など簡単に言いくるめられる。 こちらが被害者の振りをして、賠償金を請求してやるさ!」

「なんですって?!」

 リーナが怒りに震えたその時、隣に立っていたわんちゃんの体が白い光に包まれ、眩しいほどに輝き始めました!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

話が違います! 女性慣れしていないと聞いていたのですが

四季
恋愛
領地持ちの家に長女として生まれた私。 幼い頃から趣味や好みが周囲の女性たちと違っていて、女性らしくないからか父親にもあまり大事にしてもらえなかった。 そんな私は、十八の誕生日、父親の知り合いの息子と婚約することになったのだが……。

完結 裏切りは復讐劇の始まり

音爽(ネソウ)
恋愛
良くある政略結婚、不本意なのはお互い様。 しかし、夫はそうではなく妻に対して憎悪の気持ちを抱いていた。 「お前さえいなければ!俺はもっと幸せになれるのだ」

自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?

バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。 カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。 そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。 ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。 意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。 「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」 意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。 そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。 これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。 全10話 ※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。 ※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

懲りずに何度も繰り返す〜さすがにもう許せませんよ〜

四季
恋愛
何度同じことを繰り返すつもりですか? 何度でも許されると思っていたのですか?

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?

石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。 ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。 彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。 八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」 男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。 ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。 それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。 とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。 あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。 力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。 そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が…… ※小説家になろうにも掲載しています

おかえりなさい。どうぞ、お幸せに。さようなら。

石河 翠
恋愛
主人公は神託により災厄と呼ばれ、蔑まれてきた。家族もなく、神殿で罪人のように暮らしている。 ある時彼女のもとに、見目麗しい騎士がやってくる。警戒する彼女だったが、彼は傷つき怯えた彼女に救いの手を差し伸べた。 騎士のもとで、子ども時代をやり直すように穏やかに過ごす彼女。やがて彼女は騎士に恋心を抱くようになる。騎士に想いが伝わらなくても、彼女はこの生活に満足していた。 ところが神殿から疎まれた騎士は、戦場の最前線に送られることになる。無事を祈る彼女だったが、騎士の訃報が届いたことにより彼女は絶望する。 力を手に入れた彼女は世界を滅ぼすことを望むが……。 騎士の幸せを願ったヒロインと、ヒロインを心から愛していたヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:25824590)をお借りしています。

処理中です...