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引導を渡しましたわ!
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帰宅後。
わんちゃんを風呂場で綺麗に洗って、切り傷に薬を塗り、餌をあげると、満腹になったわんちゃんは嬉しそうに私に抱きついて眠ってしまいました。
なんて可愛いの。
コロコロと小太りの体、短足のヨチヨチ歩き・・ブサカワって萌えますわ。
柔らかく温かい小さなわんちゃんを抱っこしていると心が癒されてきて、わんちゃんを助けたつもりが私の方が助けられたのかもしれないと思えてきますわ。
「ありがとう、わんちゃん」
翌日、王立学園での放課後。
一度は話し合うべきだと思い、婚約者アレン様を校舎中庭のガゼボに呼び出しました。
「なんだ? 話って」
厳しい表情の私を見て、居心地悪そうにアレン様は言いました。早く帰りたそうですわね。
「前から聞きたかったのです。なぜいつも、私と会う日にエリーヌ嬢を連れてくるのか。そして、兄妹にしては親密過ぎます。あれでは、どちらが婚約者なのか分からないわ。はっきり言って、不愉快です。この状況が今後も続くのであれば、婚約は無かったことにしていただきたいです」
いつもはおとなしい私の剣幕に、アレン様は驚きながらも少し狡い表情を浮かべました。
「僕と君の婚約は、親たちが決めたことだ。伯爵家に生まれたなら、政略結婚を受け入れるのは当然の事。両家の業務提携で事業をさらに拡大できる。すでに話も進んでいるのに、今更、何を言ってるんだ。
妹のことだって、僕は母の言いつけを守っているだけだ。
血の繋がらない兄妹だけれど本当の兄妹のように仲良くしなさいと言われ続けてきた。
エリーヌは僕によく懐いているし、少し我儘なところもあるけど、エリーヌが可愛いし、彼女が望むことなら何でもしてあげたいという気持ちになる。
先日も、僕と一緒に居たい離れたくないというから、一緒に連れて行ったまでのこと。 それの、どこがいけない?」
アレン様は、聞き分けのない子供を叱るように、私を責めました。
「事業提携といっても、書類を確認させていただきましたが、そちらの利益になる案件ばかりではないですか。お人好しの父を上手く言いくるめて騙せても、私は騙されません。 それに、アレン様とエリーヌ嬢の親密さは兄妹の域を超えています。婚約者と会う日に必ず連いて来て私を蔑ろにするエリーヌ嬢は、配慮が無さすぎます」
「なんだと? まるでエリーヌが常識知らずのように罵倒するとは!」
「常識知らずじゃないですか。もちろん、あなたも」
「なっ・・なんとっ・・・」
冷めきった私の視線にたじろぎながら、アレン様はガゼボの椅子からすっくと立ちあがり、
「エリーヌと僕を侮辱するとは、許さないぞ! 覚えてろよ!」
怒鳴りながら、彼は去ってゆきました。
「覚えてるのも面倒なので、忘れますわ」
私のつぶやきは風に流され、届かなかったようです。
わんちゃんを風呂場で綺麗に洗って、切り傷に薬を塗り、餌をあげると、満腹になったわんちゃんは嬉しそうに私に抱きついて眠ってしまいました。
なんて可愛いの。
コロコロと小太りの体、短足のヨチヨチ歩き・・ブサカワって萌えますわ。
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「ありがとう、わんちゃん」
翌日、王立学園での放課後。
一度は話し合うべきだと思い、婚約者アレン様を校舎中庭のガゼボに呼び出しました。
「なんだ? 話って」
厳しい表情の私を見て、居心地悪そうにアレン様は言いました。早く帰りたそうですわね。
「前から聞きたかったのです。なぜいつも、私と会う日にエリーヌ嬢を連れてくるのか。そして、兄妹にしては親密過ぎます。あれでは、どちらが婚約者なのか分からないわ。はっきり言って、不愉快です。この状況が今後も続くのであれば、婚約は無かったことにしていただきたいです」
いつもはおとなしい私の剣幕に、アレン様は驚きながらも少し狡い表情を浮かべました。
「僕と君の婚約は、親たちが決めたことだ。伯爵家に生まれたなら、政略結婚を受け入れるのは当然の事。両家の業務提携で事業をさらに拡大できる。すでに話も進んでいるのに、今更、何を言ってるんだ。
妹のことだって、僕は母の言いつけを守っているだけだ。
血の繋がらない兄妹だけれど本当の兄妹のように仲良くしなさいと言われ続けてきた。
エリーヌは僕によく懐いているし、少し我儘なところもあるけど、エリーヌが可愛いし、彼女が望むことなら何でもしてあげたいという気持ちになる。
先日も、僕と一緒に居たい離れたくないというから、一緒に連れて行ったまでのこと。 それの、どこがいけない?」
アレン様は、聞き分けのない子供を叱るように、私を責めました。
「事業提携といっても、書類を確認させていただきましたが、そちらの利益になる案件ばかりではないですか。お人好しの父を上手く言いくるめて騙せても、私は騙されません。 それに、アレン様とエリーヌ嬢の親密さは兄妹の域を超えています。婚約者と会う日に必ず連いて来て私を蔑ろにするエリーヌ嬢は、配慮が無さすぎます」
「なんだと? まるでエリーヌが常識知らずのように罵倒するとは!」
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「なっ・・なんとっ・・・」
冷めきった私の視線にたじろぎながら、アレン様はガゼボの椅子からすっくと立ちあがり、
「エリーヌと僕を侮辱するとは、許さないぞ! 覚えてろよ!」
怒鳴りながら、彼は去ってゆきました。
「覚えてるのも面倒なので、忘れますわ」
私のつぶやきは風に流され、届かなかったようです。
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