上 下
28 / 34
四章

鍛錬会・準備期間①

しおりを挟む







「本日より、鍛錬会に向けての準備期間に入る!各自準備を……………………まあ言うまでもなく気合いが入っているようだが。練習は怠るなよ」



イアン(リリアーヌ)が学園に入って数週間


朝早々に高らかに宣言されたのは鍛錬会の練習期間に入ったという知らせだ







周囲は3ヶ月後に向けた鍛錬会モードに包まれていた



学生達の話題も、教師や授業の愚痴から
己がいかに鍛錬に励んでいるかのアピールへと変化するという






「俺の広背筋は誰よりも負けねえよ」


「何言ってんだ!!!俺の方が凄いだろう!!!!!」


「なんだとこの野郎?!」


「ハッ…おいおい、お前ら……そんなもので満足するようなら人間失格だなぁ……ククッ…」


「な、なに?!?!?!?!?!」


「見ろ!!!!!この美しき筋肉達を…………!!!!」

   



「「す、すげぇ……………!!!」」


「こ、広背筋だけじゃない…………上腕二頭筋や三角筋………僧帽筋まで鍛え抜かれているぞ…………!!!」


「それだけじゃない…………ただ鍛えるだけでなく、美しさまで保たれてる…………!!!!」


「鍛錬会でより映えるようになっているんだ………!」


「これはもう美術品の域に達しているぞ!!!!!」


「フハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」






「おいお前ら!!!!早く講堂に集まれ!いつまで他の学生を待たせるつもりだ!」


「先生!!!!!見てください!この筋肉達を!!!!」


「………………お?お、おぉぉぉ…す、すごいな」


「でしょう????!!!!!!」






3ヶ月後までにもいくつか行事があるようだが、それらを差し置いてのこの状況だ


多くの人からの期待値が高い分、それだけ大きな行事となる


学生に限らず学園全体で気合いが入っているのだろう








………









ほんと、遂にやってきたわね………












…………やってきてしまった

ガチでやってきたわ



さっきからため息か、舌打ちしか込み上げてこない

あんなに楽しみだった鍛錬会も今ではただのデスゲームよ







…………周りから聞こえる歓声がモスキート音に聞こえる…


鋭い視線を送って静かにさせようにも元気がない


後ろから締め上げたら少しは静かになるかしら




「見て!シルヴァン様とリュカ様よ!!」


「イアン様もいらっしゃるわ!」


「シルヴァン様やリュカ様がとてもお強いのは分かってるけど、イアン様もお強いはずだわ」


「前のウェズ卿との闘いをご覧になって?」


「えぇ!本当にお強かったのよ!!!」


「「「「きゃあああ!!!!」」」」




「俺の筋肉が1番だああああああぁぁぁ!!!」


「うをぉぉぉぉぉ!!!!!!」





あのね…………その悲鳴に近いソプラノ声と野太い遠吠え………ほんと…頼むからやめてくれないかしら?









最近の女子生徒は………………高い声しか出ないというの?

鼓膜が破れてしまうわ

貴女たちの声が脳内で木霊するのよ



最近の男子生徒は………………嬉しかったら何故吠えるの?

人間としての尊厳はどこに消えたのかしら

貴方たちそれでも人間なの?



こっちは知り合いが来るとかで苦労してるっていうのに

呑気でいいわね

羨ましいわ






「あっはは!皆気合入ってるなぁ!!!!!!」







……………………あぁ


…………今日も黄色頭が叫んでる



「俺も講義よりこっちの方に力入れたいし!はっはは!!」





…テンションは絶好調のようね


気楽でいいわね

羨ましいわ


少し冷たい視線を送ってしまうのは許してちょうだい





今は朝会を終え、授業が行われる講堂に向かう途中だ


この広い学園の位置がよく分かっていないのもあって同室のシルヴァンと行動を共にしているが、今日はAB合同のためリュカこの男も一緒に行くことになった








「おい、リュカ。お前、今年はどの種目に出るんだ?」



何?ここの話題も鍛錬会のことなの?



「ん?あっははー!そんなの決まってるだろ!」


決まってるの?

いや、知らないし

あと煩いから少し黙っててくれないかしら



「俺には体術とか魔術とかの才能ないからな!剣術一本!」


はんっ

剣術一本って


所詮は脳筋ね

私とは大違いだわ






「えぇ………」


ん?反応薄いわねシルヴァン




シルヴァンはリュカを見てゲンナリした様子だった

何で?

いいじゃない

たとえ脳筋でも選択の自由はあるわ





「お前また剣を持つ手、放して教師のカツラ吹っ飛ばすからやめとけ」





「あれはわざとじゃないって!今度はしっかり勝つからさ!」




わざとじゃないのにカツラを飛ばしたの?


「お前、昨年めちゃくちゃ怒られたの覚えてないのかよ!」


…………?


「今回は大丈夫だって!」











私カツラ着けてるんだけど






「大体な、お前は______で、_____よ。_____……………」


「_____!_………………」










……………カツラ………なんだけど

…………………………………。





「俺はもうお前と反省室に入るのは御免だからな…。おい、イアンからも言ってくれ。お前も巻き込まれるから」




「……………………」


「………イアン?」


「……あれイアン?おーい、王子ー」



「………………スゥ」


「「?」」














「ダメに決まってんだろうが!!!!!!!!!!」





「うぉっ」


「え、どうしたんだよ王子」


「なんだよ脳筋!!!」


「な、なんでキレてるんだよ!だ、大丈夫か?」


「大丈夫じゃないのは脳筋、お前の方だろうが!!!」


「えぇ…?」


「教師のカツラをぶっ飛ばすなんて処刑ものだぞ!!!」


「そうなの?!」


「カツラってものはな。彼らにとっちゃあ命同等なんだよ!!!!!!」


「…………………そうなのか?」


「思いやってやれよ!!!!!!」


「お前が1番その状況を楽しみそうだけどな」


「お、俺が悪かったよイアン…」


「お前に名前を呼んでいいなんて一言も言ってないからな!!!急に名前呼びしやがって!!!」


「お前がいいって初日に言ってただろ………」






は、何?

シルヴァン、貴方も私と殺り合うの?

貴方…………二度と大地を踏めなくなるわよ




「シルヴァン…………お前…………貴様の明日が無くなってもいいのか?」


「…………何で俺が脅されてるんだよ」


「おいイアン………ほんとに大丈夫なのか?」


「……チッ」


「おい聞いたかリュカ。こいつ舌打ちしたぞ」


「なんかあったのか?」






ゼイン兄上とシエル姉上ならハテサルまでお忍びで見に来るのも納得出来るわ

でもアメリアとエーテル様だけは聞いてない




アメリアなんかはまだ小さくて、きっと私に期待してるはずだもの

相手に勝つことは出来るかもしれないけど、ボコボコにするところは見せられないわ



教育に悪いし

何よりアメリアは優しい世界で生きていて欲しい

















「…………………何でもない。…行こう」


















しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊
恋愛
如月陽太(きさらぎようた)は、地元を離れてごく普通に学園生活を送っていた。 そんなある日、公園で傘もささずに雨に濡れている同じ学校の生徒、柊渚咲(ひいらぎなぎさ)と出会う。 シャワーを貸そうと自宅へ行くと、なんとそこには黒煙が上がっていた。 「…貴方が住んでるアパートってあれですか?」 「…あぁ…絶賛燃えてる最中だな」 これは、そんな陽太の不幸から始まった、素直になれない2人の物語。

管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ
恋愛
 桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。  しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。  風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、 「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」  高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。  ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!  ※特別編10が完結しました!(2024.6.21)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

女子大生家庭教師・秘密の成功報酬

芦屋 道庵 (冷月 冴 改め)
恋愛
弘前さくらは、大手企業・二村建設の専務の家に生まれた。何不自由なく育てられ、都内の国立大学に通っていたが、二十歳になった時、両親が飛行機事故で亡くなった。一転して天涯孤独の身になってしまったさくらに、二村建設社長夫人・二村玲子が救いの手を差し伸べる。二村の邸宅に住み込み、一人息子で高校三年の悠馬の家庭教師をすることになる。さくらと悠馬は幼なじみで、姉と弟のような存在だった。それを受けたさくら。玲子はさらに、秘密のミッションを提示してきた……。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...