男装王女と、冷酷皇子の攻防

𝑹𝑼𝑲𝑨

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三章

don't likeの領域

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3人の美青年が固まった隣国の王子に声をかける


「…熱中症でしょうか?」

「エピスィミアも夏国だ。暑さには慣れてるだろ」

「……」





(…………忘れてたわ)

日々の生活が目まぐるしいせいで、すっかり着替えのことを忘れていた











暴言や暴力を吐くものの、リリアーヌは男では無い




正真正銘の女性だ

だから出るところは出ているし、女性らしい体つきをしている


ある程度身長が高かったため、身長で怪しまれることはなかったがここに来て最大のピンチが訪れた




サラシを巻いて普段生活しているが、着替えとなれば隠してくれるものが無い


大変困った状況だ





「イアン、早く着替えろよ」

「遅れますよ」

「……………おい」



声をかけてくる3人組に視線を向ける

(服着ろよ、クソ野郎共)




リリアーヌにとって、都合の悪いものは全てクソ野郎

ゴミを見るような目で男3人衆を見る


「お前本当に何?」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













(…意外とバレないんじゃないかしら)

リリアーヌは普段使うことのない頭を使いすぎて、思考回路がおかしくなっていた



















この3人の女に関する噂は全く耳にしないわ

どうせ女と男の区別なんか出来ないわよ

なんならここで全裸になっても…






「ふくよかですね」


「胸筋を集中的に鍛えるべきだな」


「……太り過ぎだ」





いける

こんなの誰も分からないわ

堂々としてた方が意外とバレないのよ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「何でもない」


ここはくーるな感じで

自然な感じで着替えれば誰も気づかないわ

右腕を頭に、左腕を腰に持っていきポーズをキメる


完璧よ




「まさか…俺の服に隠れる美しい身体が見たくなったのか、ん?」


困った時に使えるくーるな感じ……レイラの教え通りよ





ポーズをキメて返事を待っていると、シルヴァンが可哀想なものを見る目でこちらを見据える









「お前まじで頭やられてるだろ。どんなキャラだよ」


隣の2人に至っては、汚物を見るような視線でこちらを見ていた


なんで?








「頭やられてるのはお前の方だろ、シルヴァン」


「俺のどこが頭やられてるんだよ…。真っ当な感想だろうが」

「は?」

「お前のキャラ迷走しかしてない」


「くーるな奴は皆んなこんな感じだろうが」


「え…お前の周りにいた奴全員そんな感じなのか?」


「こんな奴いる訳ないだろうが!気持ち悪い!!」


「何でキレられてるんだよ!」


「失せろよ!」


「意味が分からん!!!」






どいつもこいつも話の通じない奴ばっかりね

勉強したら?



「…えーと、取り敢えず授業に遅れています。イアン王子、急いで来てくださいね」

「……」

後ろから鑑賞していた次期皇帝と宰相は呆れ気味にドアノブに手をかける




「はぁ……先に行ってるからな」




バタン


部屋には急に寂しさが生まれる




……………


周りを見渡せば誰もいなかった

やり取りしている間に着替え終わったのだろう



折角準備してたのに…

くーるな男を見れるチャンスを自ら手放すなんて


人生損してるわよ



リリアーヌは愚痴が止まらない
















「王子、早く来く出てきなさい!授業が始められん!」





扉の外から聞こえてきた怒声に驚く

時計を見ると、20分ほど時間が過ぎていた








「…………はい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「只今より魔法学の実技を始める」




王子を怒鳴った魔法学教師はチラッと一瞬だけ顔を見たら、後ろを向いて司令台に乗る


(………何よジジい。文句ある?)

睨み返して反抗する


やられてばかりなど彼女の気が済むわけがないのだ

殺気を帯た目を向けることで存在を主張する


これは彼女のひとつの武器だった






「何か?」

視線に気がついたのか声をかけられる





「いや?wあまりにも先生がかっこいいものですから思わず凝視してしまいました。男として尊敬しますよ。ははは」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・












「今回の実技は、ペアになって行う」

50歳を過ぎた教師、イザーク・ウェズはいつも通り、メガホンを片手に声高々?と授業の内容について説明する

若手が多い学院の教師の中で1番の古株である彼はかなり気難しい性格の持ち主だ


一方で、かつての皇帝専属魔法士だった程の実力の持ち主であり
次期皇帝のジークフリートが元々優秀にも関わらず、わざわざ学園に通う理由の1人でもある




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





(エピスィミア王国の第3王子イアン……)

そんな、皇太子に認められる程の実力のある彼は、隣国から来た王子を見つめる


(隣国に関しては、世界的な功績を残しているのは第1王子ただ1人…。イアン王子も薬学に精通している者には有名…)



(国内は派閥で分かれていると聞いていたが…………………中立の王子…だったか)


政治に全く興味を持たない第3王子
争いごとが嫌いなのだろう

だが次代の公爵としても功績を残さない訳にはいかない
…難儀なものだ




「おーい、せんせー?」

横から声がかかりハッとする

「どうした?」

「いや、俺のペアって誰かなーと思って」

「あぁ…」

すっかり忘れていた

どうするか……



「誰か組みたい者は?」

「え、いや別に」

ふむ……

「なら私と組もう」

「本当に?せんせー相手なら本気でいってもいいのかな」

「調子に乗らぬように」

私のことは隣国ではあまり知られていないのだろうか…








バァァァァァァァァァァァァァァァァン



「すげぇ…見ろよ」

ものすごい爆発音が鳴り響く中心を見ると2人の青年が隙のない攻撃し合っていた








「流石は次期皇帝陛下と宰相殿」

「格が違うな」

「素敵……」

「お嫁に行きたいわ」



10代であそこまでのレベルとはな

帝国の未来は明るいようだ




「うっわ…あれって、皇子と…次期宰相じゃん」


流石にあの攻撃には驚いたのだろうか

流石にあのレベルはそうそう周りにいるものでもない







「うーん……でもなぁ…確かに動きに無駄はないし、攻撃力は強いけど………………なんか雑。もっと綺麗に魔法唱えれないの?」


はっ…



あのレベルのものに難癖をつけるのか?

これは…期待出来そうだ


「王子、我々も始めるとしよう。見ているだけではつまらないだろう」



くれぐれも失望させるなよ




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー















「………では、は、始め!!!」

審判を頼んだ学生が声高らかに合図を出す





少し離れた場所には教師が構えもせずに佇んでいた











ウザ

え、なになに?舐めてるの?
確かに私はイアンとしてここにいるけれど…

イアンも魔法上級者よ?




周りには攻撃が当たらない距離に、人が集まっていた

隣国の王子の実力が見たいのだろう






…しかもジークフリート(呼び捨て)とルームメイトに、オリヴィエ(メガネ)までいる



うっっっっわ









あいつら………

don't like の領域じゃないわ…………………









もうhate



どっか行きなさいよ

分かる?生理的に受け付けないってことよ?

そこまで嫌われてるのよ?



小国とはいえ、隣国の王子?に












「おーーーーーーい、頑張れバナナ!お前ならぁ~出来る!」


ルームメイトが突然声を上げる



私に向けての応援のつもりかしら


「頑張ってください!どうか死なないで!」

「ウェズ先生に立ち向かうとか、凄すぎ!」

「来世でまた会いましょう!」

「頑張れ、バナナ王子!」

「頭だけは守れよ!」

「𝒀𝒐𝒖 𝒄𝒂𝒏 𝒅𝒐 𝒊𝒕 .」

「最後にバナナでも食っといたらーー?」











シルヴァン・グランフェ…………ブラックリスト、第37564番仲間入りね




おめでとう
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