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三章
ジークの回想1
しおりを挟むリリアーヌは、困惑していた
普段様々な問題と隣り合わせに生きている彼女だが、こればかりは理解できない
何故こんなことになっているのだろう
「いたっ!あそこにいるぞ!!!」
「追えっ!」
「捕まえろ!!!!!」
「あいつは、人間じゃない!」
「誰か転移魔法使える奴いるかっ!」
前世で何か大罪でも犯したのだろうか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「んで、何について聞きたいんだ?」
リリアーヌは、ジークフリートの部屋を訪れていた
同室のシルヴァンから彼が呼んでいることを聞いたのだ
本当なら無視したかったが、エピスィミアについて聞きたいと言われてしまったため渋々行くことを決める
一応これでも、王子としてここに来ているのだからこの国の皇子に祖国について聞きたいと言われたら、説明しなくてはいけないだろう
だが、こうして訪れたが当の本人は何か聞いてくるわけでもなくただこちらを見つめるだけだ
「おーい。聞いてる?」
「…」
「皇子が呼んだんだろ。」
ウザイ
そっちから呼んだのにシカトするとはいい度胸だ
喧嘩を売っているのか?
男装してなかったら、締め上げている
10分たっても話そうとせず流石に怒鳴ろうかと考えていると彼の重い口がようやく開いた
「お前は…スキア村について知っているか?」
ガタッ!
「お前が…皇子が……何故その村について知っている?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昔、5歳くらいの時だっただろうか
私は1度エピスィミアに訪れたことがある
自分の住んでいる所とは違う、歴史溢れた街
本で知っていた情報より、もっと凄い国だった
想像以上の国で舞い上がる
エピスィミアの案内人に連れられ多くの地域を巡った
人々が笑顔に溢れ、皆が幸せそうにしていた
ある宿に泊まった夜
俺は宿を抜け出して探検に出かける
案内人に教えてもらった数々の名所は夜になるとまた雰囲気が異なり、楽しくなって色んな所を走り回った
昔は方向音痴で、よく色んなところで迷っていたがあの日もまた、よく分からない森に迷い込んでいた
「どうしよう…」
計画性なんて欠片もなく、後先全く考えないお坊ちゃん
周りから疎まれていたのもある意味当然と言える
だが、その日の自分の計画性の無さは今でも褒められる
「だれ?」
後ろから、可愛らしい鈴の音のような声が聞こえて振り返る
美しい羽織をまとい、月光に照らされた少女
「きみは…」
「むらのにんげん…ではないわね……どこかのきぞくかしら」
「……?」
「まぁ、いいや。ついてきて。あなた、けがしてる」
そう言われ彼女の見る所に視線を向けると、足には切り傷があり、血を流している
「…ほんとだ。」
「ほんとだ…って、かなり深いのにきづかなかったの?」
そう言いながら、奥に進んでいってしまう
置いていかれないように、ついて行く
少しでも、目を離したら消えてしまいそうだったから
しばらく山道を歩いていると、小さな村が見えてくる
誰も外を出歩いておらず閑散とした様子だった
「レイラー!ちょっとてつだって!」
「ん…………やです。いま夜なんですから……早く寝てください」
「けち」
少女は誰か呼びに行ったようだが断られたのか、俺の方まで戻ってくる
「まぁいいか。わたしのいえにきて」
彼女に連れられ中に入る
1人の女性が横たわっていてた
「かあさんはいまねむってるから、しずかにね」
そう言って奥にある部屋に案内してくれた
「うわ、かなりひどいわ…よくきづかなかったわね。」
「…こういうのはなれてるんだ」
「そんなのなれなくていいわよ」
そう言ってすかさず言葉を返してくれる
第1皇子ということもあって多くの人間がすり寄ってくることが多かった。だから、こうして躊躇いもなく会話が出来るのは嬉しかった
自国にある色んなことを話して、少しでも少女の気を引こうとこの国にはないであろうものを沢山教えた
彼女は凄く喜んでくれて、当時楽しいことのひとつも無い生活に疲れていた自分は初めて普段の観察力を褒め称えた
「このむらはね、スキアってよばれてるの」
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