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三章

お隣さん

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「広いな」

挨拶を終え、これから過ごす寮に向かった

エントランスホールはとても広く、美しい装飾が出迎えてくれる




(エピスィミアとは大分違うわね)

ハテサルは、生徒をとても大事にしているようだった
自分が王子だから親切にしてくれているのかと思ったが生徒と教師の壁がほとんどなく、信頼関係がある
未来を担う人材の育成を重視しているのだろう

(留学してよかったかもしれないわ)




祖国では、一応学園に在籍しているもののほとんど登校したことは無い
他の兄妹に、会うと気分が悪くなると言われ王に行ってはならないと命令されたのだ


親の管理に及ばないこの場所なら自分の好きなことが出来るだろう

(まぁ計画を進めることぐらいは出来るわ)


リリアーヌは、不敵な笑みを作った


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「いいじゃん」

レイラが整えてくれた部屋を見渡す
二人・・部屋にしては大分広い

そう二人部屋





ハテサルの寮は、二人部屋だ
と言っても部屋はしっかり区切られていて、廊下から部屋に入るとさらに扉がある仕組みになっている。
朝食などが取れるダイニングや、バスルームなど兼用するものはあるがそれでも十二分の大きさだった


(確か同室は……)









「うわ。もう来てるのかよ…」

急に後ろから声がかかり、抜群の反射神経で振り返る
そこには深い青色の髪と金色の瞳を持った青年が立っていた
めちゃくちゃ嫌そうな顔をして



「…シルヴァン=グランフェだ」

「イアンだ」

「…」

「…」

「……」

「……」

「…………」

「…………」


……………………………


「………………………………え、それだけ?もっとこう…ないのか?バナナ食いだすとか」

「……何を勘違いしてるのか知らないけど、別にバナナが主食な訳じゃない」

「この前の見たら誰でもそう思うだろ…」


そう言って青年改めシルヴァンは、盛大なるため息をつく









「…寮とか、学園内の案内はもう済んでるよな?」

「学園は案内してもらったけど、寮はまだ」

「仕方ないな…ついて来い。案内してやるから」

「え、まじで?」

意外に頼りがいのあるルームメイトだ








「お前それが素ならそのままでいろよ…違和感しかねぇわ」

「助かる」

「おーぉー…意外に素直だな…」

「よく言われる」

「………ほら、行くぞ」











若干の呆れ顔ではあるが寮内を丁寧に案内してくれた


「ここの学園には、3つ寮がある。まずはここ、ルクス。皇族や王族、貴族、平民の中でも、帝都で10本の指折りの中に入る位優秀な奴が生活するとこ。
始めは全員ここにいるんだが、成績が出ると移動するからそんなに人数はいない。…お前も、成績によっては追い出されるから気をつけろよ。」

リリアーヌは、ひとつ気になったことを質問する


「階級とかで分けてないんだ?」

「そんなんしてどうなるんだよ」


エピスィミアの学園にも寮はあったが、位で分けられていた
平民が暮らす一般寮が1番治安がよかったと聞いたことがある

こういった貴族と平民の差を無くすには、学生のうちから関わり合える生活を送っていた方が効果的なのかもしれない


「んで、次はアーグアだな。」

シルヴァンは近くにあった窓から見える建物を指さした


「あそこは、まぁ優秀の奴から普通レベルの奴が暮らしてる。治安は、さほど悪くないな。」

アーグアと呼ばれた建物は青が基調の美しい建物だった
アンティークな雰囲気が感じられる








そしてその隣にある建物を指さし、微妙な顔を浮かべる

「最後は、テリビル…。あそこは、可もなく不可もなくって感じだな。そこまで頭は良くないけど…根は良い奴が多い」




かなりオブラートに包んでいるようだ

建物は、かなりボロボロで可の要素が全く見受けられない
お世話には絶対になりたくないようなところだ



ふと、リリアーヌは考える

もし…もしも、あの寮で世話になるなんてことになったら1発で別人だとバレるだろう

誰かに暴言を吐かれたところでなんとも思わないが、流石にここで一生を終えるのは悲しすぎる








「…やっぱ、案内してもらわなくて大丈夫」

「ん?」

「明日成績判定の日だし…案内は、今度お願いする」


猛ダッシュで部屋まで駆ける
今日は、勉強漬けになりそうだ












「…あいつ転移移動でもできるのか?」









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