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二章
頭大丈夫? take2
しおりを挟む「可哀想に…こんな無惨な姿になって…成仏するんだぞ」
男が警邏に連れていかれた後、リリアーヌは地面に叩きつけられたバナナを土に埋めていた
「こんな形で生涯を終えるなんてあんまりだ…本来の役目を全うすることも無く、さぞ辛かろう…」
「むしろ助かったと思いまよ」
侍女がそう言うのも無理はない
ーーーリリアーヌの食べ方はそれはもう悲惨なものだった
何を勘違いしているのか、男はワイルドに食べなければならないなどと訳の分からない主張をし続け、潰してからバナナを食していた
(……リリアーヌ様のワイルドの定義が分かりません)
こうして地面に落ちてよかったのでは無いだろうか
彼女に食べられる方がよっぼど可哀想である
「うわっ、なんだ?バナナが埋まってるぞ」
レイラが声のした方に振り向くと、リリアーヌが作った墓場を興味津々な様子で見つめる学生達が集まっていた
(あの制服は…)
「すごい…ちゃんと購入した時刻まで書かれてるぞ」
「何故、こんな道のど真ん中に?」
「あ、これチョコバナナだ」
(彼らにとっては、珍しいものなんだろうけど私からしたらこんなの日常茶飯事よ…)
侍女レイラからしたら見慣れた光景である
「私の…僕のバナナになんか用?」
「…絶対こいつだろ、埋めたやつ」
リリアーヌは、見知らぬ集団に腕を組み堂々とした態度で睨んでいた
「埋めた?埋葬したんだよ、まいそー」
「こいつ、大丈夫か?」
「変わってんなー」
(同感です)
侍女は、思わぬ共感者に賛同する
(彼らはきっとリリアーヌ様が通われる学園の生徒…こんな変人を受け入れてもらえるでしょうか…)
侍女はそう遠くない入学の日が近づいてきていることに頭を抱えた
5分程、青年達と主のやり取りを遠巻きに見ていたレイラは、ふと普段は感じることのない涼しさを感じた
(ハテサルは、夏国よね……?)
「何を騒いでる」
一気に、体が硬直する
冷や汗が流れた
何もしていなくても、すぐさま謝りたくなるほどの威圧感
(……下手に動けば殺されるわ…。多分だけど…後ろにいる人は…)
視線を動かせば背後の人物に知り合いなのだろう学園達でさえ顔色が悪かった
(どう動くべきかしら…もし王女様が何かしでかしたら…)
「ちょっと」
「何してんの?」
そんな緊張感の中、突如この場にそぐわない声が聞こえる
今最も黙っていて欲しい人物だ
「…」
(それは私の言葉です…)
「目の前に墓があるんだから、拝んでくべきだろ」
「……」
(あ、終わった…)
一応これでもレイラは、侍女なのだ
主人の安全を守るためにハテサルの下調べは済んでいる
特に学園内の勢力図や、王族や貴族の関係性…
出回っている情報を全てかき集め、脳内に記録していた
(まずいですよ、だって彼は…!)
「…お前………」
「なんだよ」
(あぁ…王子だってバレたわ……これで祖国とイアン殿下の評判はガタ落ち………きっと明日の新聞に、隣国エピスィミア王国の第3王子イアンは、バナナの墓を作る変人…って載るわ…)
「…邪魔だ。片付けて退け」
「…………は?頭大丈夫?」
「ご主人様ー!早く退きましょう!こんなところに墓なんか作ったら通行止めしてしまいますから、移動させましょう!っね!!っね!!!!さぁ早く!」
「あぁ…そうだな…」
「ご主人様が大っ変申し訳ありませんでした!さぁ行きますよ!」
主の首を掴み頭を下げさせ、退場する
わずか3秒の出来事であった
⚪︎レイラの寿命-30年
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ジーク」
「…なんだ」
「彼って、イアン王子ですよね?」
「…おそらくな」
「あんな感じなんですか?」
「…流れている情報とは、正反対だ」
「研究者なんでしたよね。社交界にもほとんど出ていない様でしたし…」
「研究者って、大体あんな感じなんだろ?」
「偏見」
「ははは、面白かったな!」
「滅多にいないぞ、あんな奴」
「一緒に生活する日が待ち遠しいな!」
「…行くぞ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・長編に切り替えます
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