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二章
母の望み
しおりを挟む馬車に乗るため外に出ると、1人の女性が駆け寄ってきた
「…王女様…………」
「あ、母上!!!!!!」
(紙切れが邪魔して会えなかったのに、まさか母上から来てくれるなんて!
こうして会えたのは、いつぶりだろう?)
「わざわざ逢いに来てくれたの……くれたんだぜ!」
「…王女様…………………その口調は一体………………………それにお姿はイアン王子に似ていますし………もしかして、また何か問題を引き起こして…」
「ハテサルに行くのに、イアンの格好をして行くことになったんだよ。問題に巻き込まれたわけじゃ………………ん?引き起こす?」
「まぁ…………そんなことになっていたのですね…毎日大変でしょう……………」
「でもさっき問題、引き起こすって言ったよね?」
「王女という御身分で大変なことが多々あるのは重々承知していましたが、まさか陛下がリリアーヌ王女様にそんな危険なことを言うなんて…」
話をスルーするのはこの親子共通の特技らしい
「…………母は、心配でございます」
「っ!」
「私が平民であるが故に貴方には多くの苦労をさせてしまいましたが、王城でもこのような調子なのに、どうして留学することに賛同できましょうか……………」
「………私をディスるのそろそろやめない?」
(日頃の行いです、王女様……)
リリアーヌの侍女、レイラは主人の言動と行動を間近で見てきた1人である
いくら大事な人とはいえ、こればかりはリリアーヌ母と同じ意見だ
「王女様…ハテサルは危険な場所です……ひとつの失敗で自分の命を失ってしまうかもしれない…」
「…」
「ですが………」
そう言うと、リリアーヌ母は微笑みかける
「せっかく留学するのですから、しっかり楽しんで来てくださいね」
「っ!!もちろん!」
「準備が整いました」
御者が、リリアーヌに声をかける
彼女を見送るのは兄と姉、リリアーヌ母しかいない
「それじゃ、行くぜ」
「話し方の練習させとくべきだったな………」
「手紙送るわ、リリ!」
兄の後悔を横目に見て、リリアーヌ王女改めイアン王子は馬車に乗り込んだ
「口調、直しましょうか」
「そうだぜな」
馬車の中では、語学のレッスンがスタートした
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