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二章

いやー、賢いって素早い

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「イアン、いる?」

「どうぞ」

扉の先には、読書中の弟がいた。

「イアンって読書オタクなの?」

「読書オタクってなんですか………」


そう言うと席を立ち、紅茶を入れてくれる


「僕の名前を借りたいそうですね」

「あら、知ってたの?」

「考えたら分かりますよ。ゼイン兄上は第1王子ですから」
 
「ルークがいるじゃん」

「あの人は、姉上のことを嫌ってるので」



淡々と喋りながら、机に近寄って1枚の紙を取り出す


「ここに僕の経歴が全て書かれています。向こうで何か聞かれても対応できるように覚えておいてください。得意なもの、苦手なもの全て真似が出来るように。ボロが出ては、足元をすくわれてしまう。ばれた時は、死期であることを忘れないように」


渡された紙には、沢山の功績など多くの情報が記載されていた。


「何故協力するのよ?中立の王子なんでしょ?」

「これは、国に関係することです。協力ではないですよ」

「照れ屋ね」

「出てって下さい」

顔面にウザイという文字が浮かんでくるほどの顔をした王子は、姉を容赦なく放り出した


















「ふーん……イアンって、薬学の研究者の資格持ってたのね」


紙に書かれた数々の情報は、いかに彼が優秀であるかを示していた


「…ん?もしかしてピンチ?」



まさか、弟の名前を借りることにこんな障害がついてくるとは……

「あーあ……母上に会いに行きたかったんだけど……」


そう言って天を仰ぐ






リリアーヌの母は、踊り子だった

娘が庶子ではなく王女として認められているものの、城外の小さな小屋で過ごしている
幸い、健康ではあるもののいつ何が起こるか分からない


「……覚えるか」

そうして、1枚の紙に頑張って書かれた見えるか見えないかぐらいの小さな文字で書かれた文章に目を向けた












数日後、ドレッサーの前には2人の姿があった



「出来ました、王女様。あ、イアン様」

「ありがと、レイラ」


黒色の髪を撫で、リリアーヌが答える
軍服姿のリリアーヌは、とても美しく中性的だ



「あの…イアン殿下は、郊外に移られると聞きましたが…」


「そうなんだよね。賢い人は、行動が素早い。疲れって言葉多分知らないよ、あの人」



「そうですかね…?」
 
(さっきすれ違った時、ものすごいクマができてたけど…)





「せっかく留学するんだし、ボロ出さないためにも大人しくいこう」

「イアン殿下は、静かな方ですからね」

「そーn……………そうだな」


「悪寒がします」


「ディスってる?」






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