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18.魔法研究所

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「ああ。今戻った」

 ライアンは部屋に飛び込んで来た明るい茶の髪の男の人に向かって片手を上げた。
 その人は部屋に散らばったテントとその中身を呆気にとられた顔で眺めてから、私に視線を止めた。

「ライアン……そのは、誰だ?」

「彼女はソフィア。修行中に世話になったんだ。魔法の素質があって、学んでみたいということなので連れてきた」

 そう紹介してから、私にも相手を紹介する。

「ソフィア、こいつはレオ。俺の兄弟子だ」

 兄弟子……のわりに、気安い口調なのね。
 そんな風に思いながらレオに挨拶する。

「えぇと、こんにちは……。ソフィアと言います……」

「どうも、初めまして」

 ライアンの兄弟子は困惑した様子ながら、人好きのする笑顔を浮かべながら私を見た。
 そこで、私は自分の恰好を改めて見た。ライアンから借りたままのよれたズボンとシャツ姿で髪は邪魔にならないように後ろで一つに結んだだけの姿だ。
 ここが人気のない山の中でないことに改めて気づいて急に恥ずかしくなる。

「――ライアンが世話になったとか……」

「あ、はい。その前に私が助けてもらったんですけど」

 レオは色々と聞きたそうに口を開いたけど、そこにライアンが口を挟んだ。

「レオ、師匠は今いるか?」

「ああ、部屋にいるはずだけど」

「それは良かった」

 ライアンは私の方を見ると、「ついて来てくれ」と言って部屋を出て行った。仕方ないのでその後ろを小走りで追いかける。

 この建物は石造りの、私の家よりもずっと大きな、宮殿みたいな大きさの建物だった。

魔法研究所って言っていたけど、こんなに広いのね。

そんなことを考えながら後をついて行くと、ライアンは大きめの装飾のある扉の前で立ち止まった。それから改まったように姿勢を整えて、扉をノックした。

「師匠、ライアンです。入りますよ」

 そのまま中に入ったので、私も慌てて後ろから部屋に入ると、壁一面本棚の部屋の中央で机に座って書物を開いていた黒いローブの人が顔を上げた。

 白髪をきれいに後ろで一つにまとめた上品そうな女性だった。

「ライアン、――今まであなた、どこで何を――」

 眉間に皺を寄せて本から顔を上げた彼女はライアンを睨んで、それから瞳を大きく広げた。

「あなた、魔力量がかなり増えているわね」

「魔物を食べれば魔力量が上がる――、それが実証できました」

 そう自信あり気に言ったライアンは私の背中を押した。

「彼女のおかげで、魔物が美味く食べれました。魔法の才能もあるみたいです。――勉強をしたいということなので、この研究所に部屋と、誰か師を紹介してあげてもらえないでしょうか」

 師匠はじっと私を見た。雰囲気が厳格な人なので思わず背筋が伸びてしまう。

「ソフィア……と言います」

「私はライアンの師、クロエです。ソフィアね。わかりました。部屋を準備させましょう」

 クロエさんはふっと表情を緩めた。
 ……良かった、出て行けとか言われなくて……。

 ほっとしたのも束の間、彼女はまた表情を厳しくした。

「二人とも、まずは身なりを整えていらっしゃい。それから、ライアン、あなたの実家から、戻って来いと再三連絡がありましたよ。手紙をレオに預けてありますから、きちんと確認して返事をなさい」

 ライアンの顔を見ると、とっても面倒そうに口を曲げていた。
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