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7.元聖女は辺境の地を訪れました。
198.
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翌日、朝ごはんを食べに食堂に行くと、「おはようございます」とアイザックさんとヴィクトリアさんが声を揃えて挨拶してくれました。声が被って、二人は「あ」と言うと、目を合わせてくすりと笑います。
……何だか、すごく仲良くなったみたいですね!
そんな和やかな空気の中、今日もジェフさんが作ってくれた美味しい朝ごはんを……と思っていると、ガタンっと扉が開いて、イザベラさんが車椅子を押して部屋に入ってきました。
ぴりっとした緊張感が食卓に走ります。
車椅子に座っていたのは、ステファンのお父さんのレオンさんです。
「食事を食べれそうだから、一緒に、と思って」
イザベラさんが私たちを見回して微笑みます。
「――家族全員でこうやてって食卓にそろうのは何年ぶりでしょうね、レオン」
「――そうだな」
レオンさんは小さい声で呻くように呟くと、イザベラさんにすくってもらったスープを少しずつ食べます。
「――父さん、食事もとれるようになったみたいで良かったです」
食事が終わるころに、ステファンが話を切り出した。
「僕がこの屋敷に戻って来た件で、お願いがあります」
「――エルフの里への立ち合いを頼みたい、ということだろう」
そう言うと、レオンさんは机の上に青色の石を出しました。
何だか傷がたくさんある青色の石……。
「これは、昔、俺がこの土地の鬼討伐を行ったとき、エルフの里に呼ばれ……その時にエルフの里の族長からもらったものだ。『この度は鬼討伐ご苦労だった』とか何とか言ってな……。自分たちも助かったから、何かあればこれを持ってエルフの里を訪ねれば力を貸そう、だとか何とか」
エドラさんが手を伸ばして、卓上の青い石を見る。
「これは、刻まれているのはエルフ文字……、森を訪れた時に、森を守る空間魔法を通過させるための呪文が刻まれているな」
「それを持って行け……。アイザック、お前が騎士団を連れて同行してやれ」
アイザックさんは「はい」と元気よく返事する。
「――もちろん、そのつもりです」
「――ありがとうございます」
ステファンはお父さんに頭を下げた。
……ついに、エルフの里に行けるんですね!
私は胸を押さえて、それから「あれ?」と思ってエドラさんが持っている、その青い石を見つめた。……あれ、私が持っている緑の石と似ていませんか。
私は食卓を立つときに、じゃらりと胸に下げた緑の傷だらけの石を取り出した。
あの青い石もただ傷が入っているようにしか見えませんけど、エドラさん「エルフ文字」って言っていましたよね。
――もしかして、これも?
私は部屋に戻る途中のエドラさんに話しかけた。
「エドラさん、これ……って何だかわかりますか?」
私が緑の石を渡すと、エドラさんは顔をしかめた。
「――エルフ文字、ではないな。形は似ているが……? これはどこで手に入れたものだ?」
「――お父さんが置いて行ったものだと思います。唯一、私がキアーラに引き取られたときに持っていたもののようなんですが」
エドラさんは考え深げな顔をしてから、真剣な顔で私を見た。
「――――何か、魔法効果がありそうだ。悪いが私には呪文の解読ができないが……エルフの里に行っても、うかつにそれを表に出さない方が良い」
私は「はい」と頷いて、慌ててペンダントを首にかけて、服の中に隠した。
……何だか、すごく仲良くなったみたいですね!
そんな和やかな空気の中、今日もジェフさんが作ってくれた美味しい朝ごはんを……と思っていると、ガタンっと扉が開いて、イザベラさんが車椅子を押して部屋に入ってきました。
ぴりっとした緊張感が食卓に走ります。
車椅子に座っていたのは、ステファンのお父さんのレオンさんです。
「食事を食べれそうだから、一緒に、と思って」
イザベラさんが私たちを見回して微笑みます。
「――家族全員でこうやてって食卓にそろうのは何年ぶりでしょうね、レオン」
「――そうだな」
レオンさんは小さい声で呻くように呟くと、イザベラさんにすくってもらったスープを少しずつ食べます。
「――父さん、食事もとれるようになったみたいで良かったです」
食事が終わるころに、ステファンが話を切り出した。
「僕がこの屋敷に戻って来た件で、お願いがあります」
「――エルフの里への立ち合いを頼みたい、ということだろう」
そう言うと、レオンさんは机の上に青色の石を出しました。
何だか傷がたくさんある青色の石……。
「これは、昔、俺がこの土地の鬼討伐を行ったとき、エルフの里に呼ばれ……その時にエルフの里の族長からもらったものだ。『この度は鬼討伐ご苦労だった』とか何とか言ってな……。自分たちも助かったから、何かあればこれを持ってエルフの里を訪ねれば力を貸そう、だとか何とか」
エドラさんが手を伸ばして、卓上の青い石を見る。
「これは、刻まれているのはエルフ文字……、森を訪れた時に、森を守る空間魔法を通過させるための呪文が刻まれているな」
「それを持って行け……。アイザック、お前が騎士団を連れて同行してやれ」
アイザックさんは「はい」と元気よく返事する。
「――もちろん、そのつもりです」
「――ありがとうございます」
ステファンはお父さんに頭を下げた。
……ついに、エルフの里に行けるんですね!
私は胸を押さえて、それから「あれ?」と思ってエドラさんが持っている、その青い石を見つめた。……あれ、私が持っている緑の石と似ていませんか。
私は食卓を立つときに、じゃらりと胸に下げた緑の傷だらけの石を取り出した。
あの青い石もただ傷が入っているようにしか見えませんけど、エドラさん「エルフ文字」って言っていましたよね。
――もしかして、これも?
私は部屋に戻る途中のエドラさんに話しかけた。
「エドラさん、これ……って何だかわかりますか?」
私が緑の石を渡すと、エドラさんは顔をしかめた。
「――エルフ文字、ではないな。形は似ているが……? これはどこで手に入れたものだ?」
「――お父さんが置いて行ったものだと思います。唯一、私がキアーラに引き取られたときに持っていたもののようなんですが」
エドラさんは考え深げな顔をしてから、真剣な顔で私を見た。
「――――何か、魔法効果がありそうだ。悪いが私には呪文の解読ができないが……エルフの里に行っても、うかつにそれを表に出さない方が良い」
私は「はい」と頷いて、慌ててペンダントを首にかけて、服の中に隠した。
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