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6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。

152.

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「新鮮な味がしたね……」

「魔法使いって変わったもん食べてるんだな……」

 お腹をいっぱいにしてオリヴァーさんのお屋敷に戻った私たちは、広間でお茶を飲んでいた。

「明日は、街のレストランに行ってみようか」

「おう、普通の食事が食べたいな」

 ステファンとライガが話してるのを聞きながら、私はずずずとお茶を飲んで、息を吐いた。
 50年後、100年後っていう考えが頭から離れない。
 私だけ、年とらないの?

「――レイラ?」

 ステファンが私の顔を覗き込んだ。

「これから先、耳が治るまではこの街にいるとして、どうしたい? エルフの里に行きたい?」

 そう、そのこともあった。
 
「行って、お父さんのことを確認したいですが――、でも、私が行くと幽閉とか――」

 エドラさんの言葉を思い出して、言いよどむ。
 行きたいのはやまやまだけど、行って無事で済むのか、どんなことになるのかわからなくて、『行きたい』とははっきり返事をできなかった。

「……手がないことはないんだ」

 私が「え」と顔を上げると、ステファンは少し黙ってから、言葉を続けた。

「僕の父親は、エルフの里――悠久の森がある辺境に接するアスガルドの辺境伯だ。父さんに話して、兵士を出してもらって、会談を求める形にすれば、向こうもうかつに君に手出しはできないと思う」

「辺境伯って、ステファンの実家ってホッブズさんみたいな感じなんですか?」

 マルコフ王国の西の領主のホッブズさんの大きな屋敷を思い出して私は身を乗り出した。実家に山があってすごく広いとか、何となくステファンのお家はお金持ちのような気がしていましたけど。

 ステファンは「うーん」と首を傾げて笑った。

「そうだね。似たような感じかな」

「お前、今さら実家帰って、親父さん話聞いてくれるかよ?」

「話してみないとわからないよ。それに、僕らだけで悠久の森に向かっても、エルフの里へどうやって行けばいいかわからないし……、迂闊うかつに足を踏み入れて、レイラに何かあっても困るだろ」

「そりゃあ、そうだけどさ」

 二人のやり取りを聞いていて

「私のことで、そんな大事にしてもらうわけには……」

 私の言葉を遮るように、ステファンは強い口調で言った。

「そんな事を言わないでよ。僕らは僕らで、君が自分のルーツを知りたいなら、それに付き合うって決めたんだ。協力させてよ」

「そうだぞ。お前は細かいことは気にすんな」

「……ありがとう」

 私は頷いて、呟きながら俯いた。
 オリヴァーさんみたいな白い髭の姿になった二人を想像した。
 ライガはもともと銀髪だから白髪は目立たないかな。
 その時も私は、今と同じ姿なんだろうか。
 ――その時、どんな気持ちがするのかな。

 エドラさんに、そのことを聞いてみたいと思った。
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