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6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。

143.

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「サミュエルさんもそこにいると思うから、明日会いに行こう。冒険者ギルドにも顔出さないとね。さ、夕食でも食べに行こうか。レイラ、何食べたい?」

 ステファンに聞かれて、迷わず私は「焼肉!」と答えた。
 ライガが「わかってるじゃん」と私の肩を叩いた。

 お店に行くと、「あら、戻って来たのね!」とテーブル席から声がする。
 声がした方を見ると、黒髪を後ろで一つに縛った女の人がこっちに手を振っている。
 ――あの人は、リルさん?

「おう、リル! 今日帰ってたところだ!」

 ライガが答える。よく見ると、ナターシャさん、テムズさんやサムさんや他の冒険者ギルドの人たちがいる。

「お帰り! どうせなら一緒に食べよう。座んなよ」

 ナターシャさんに促されて、私たちはみんなと同じ席に座った。

「良いところで皆さんに会えました。明日挨拶に行こうかと思ってたんです。――またしばらく、僕ら街を離れますので」

「そう――ようやく、うちの主力が戻って来たと思ったのに残念だよ」

 ナターシャさんはそう言って笑った。

「どこに行くの?」

「――ちょっと魔法都市まで。サミュエルさんに人を紹介してもらったので会いに行きます。明日話を聞きに行って、すぐに出発しようと思ってます」

「明日サミュエルに会うの? アタシもちょっと呼び出されててね。明日一緒に行こうか」

「何の話かしらね? 私も聞いてないのよ」

 リルさんが首を傾げている。私も首を傾げて聞いた。

「リルさん、何か今日イメージが違いますね」

 いつも黒髪を降ろして、黒い長いワンピースを着ているのに、今日は縛って動きやすそうなズボン姿だ。……最初声かけられたとき、誰かと思っちゃった。

「冒険者が何人もキアーラの応援に行っちゃったでしょ。だから人手不足で、受付なんかはテムズさんに任せて、久しぶりに私も山籠もりしてたの」

 リルさんははぁとため息をつくと、お皿に大盛になったお肉を火の上の鉄板で焼き始めた。

「今日はたくさん食べるわよ……!」

 お言葉に甘えて、私たちも同席させてもらうことにした。
 わいわい食べる食事は、1人で食べるご飯よりやっぱり美味しかった。

 ***

 翌朝、私たちは冒険者ギルドでナターシャさんと待ち合わせて、サミュエルさんがいるっていう村はずれの空き地に向かった。

「わぁ、すごい」

 思わず声を出す。
 私が馬の練習をしてた空き地には大きなテントがいくつも張られていて、そのテントのいくつかの中に、竜がつながれていた。
 空き地の周辺には竜を見に来たらしい人だかりができている。

 空き地周りには柵が立てられていて、黒いローブの杖を持った魔法使いが警備していた。
 私たちはサミュエルさんに会いに来たと言って、中に入れてもらった。

「やあ、おはよう!」

 サミュエルさんは気さくに手を上げて私たちに近づいてきた。

「どうも。お願いしてた件、連絡とれましたか?」

「うん。大司教の輸送と、状況報告で魔法都市に行ってきて、何とか話だけは伝えてきたよ。魔術師ギルド本部に、エドラヒルっていう名前のエルフがいる。――もう30年くらいかな。俺が生まれる前からいるんだ。紹介状は書いたから持って行くと良い」

 そう言って、私たちに封印された手紙を渡してくれた。

「ありがとうございます!」

 私は勢いよくお辞儀した。……これで、何かお父さんのことがわかるかも……!
 そう思ったら胸がドキドキしてくる。

「いえいえ、どういたしまして。君……君が、魔族かぁ……」

 サミュエルさんはじーっと私を見つめた。

「思ってた魔族と違うなぁ。俺も魔族は見たことがないんだ。……珍しい」

 私は思わずステファンの後ろに隠れる。
 
「――じろじろ見ないでください」
 
 ステファンはじとっとした目でサミュエルさんを睨んだ。

「それで、アタシには何の用?」

 ナターシャさんが私の前に立つように前に出て、話題を変える。
 サミュエルさんは「そうそう」と手を叩いた。

「ナターシャ。君、王都冒険者ギルドの所長にならない?」
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