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6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。
142.
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ステファンとライガがキアーラに来るときに、2頭の馬――チャイとクロを連れてきてくれていたので、私とステファンは馬に乗って、ライガは横を走ってマルコフ王国へ向かった。
私が乗っているのは、小柄な黒い馬のクロの方だ。広い街道をぱっかぱっか走っていると気持ちが良い。
「レイラも乗馬うまくなったね。この分だと明日にはつけるかな」
ここ一月毎日練習してましたからね。
太陽が西に傾いてきたころ、旅人用の馬小屋を路傍に見つけて、私たちは立ち止まった。
「今日はここで宿をとって、明日朝早く出ようか」
「はい」と返事をしてから、私は首を傾げた。
ここ、見覚えがありますね。
「おー、ここ、お前に会って最初に野宿したとこだ」
ライガが思い出したように言う。
そういえば、そうですね。
「じゃあ、ちょっと早いけど夕食にしよっか。ライガ、レイラ、井戸で水汲んで、焚き木持ってきてくれるか」
ステファンが荷物の中から鍋を出して、自由に使える石積みの竈にセットすと、干し肉や野菜を出して料理を始めた。鍋に水を入れて、リュックから出した色んな調味料と一緒に肉や野菜を煮込む。ぐつぐつという音に乗せてお湯の中で肉や野菜が踊るたび、いい匂いがしてくる。
「もういいよ」のステファンの声と共に、私はライガと争うように鍋をお皿にすくって入れた。入れると同時に口の中に流し込む。
シンプルなさっぱりした塩味の中に、色んな素材の味と香りが絶妙に混ざり合っていてとっても美味しい。
――ああ、これ、キアーラの大神殿出て、初めて食べた外の味……。
街にいるとお店で食べちゃうから、ステファン、野外に出た時しかこれ作ってくれないんですよね……。
「私……ステファンの鍋が色んなものの中で一番美味しい気がします……」
と思わず呟くと、ステファンは満面の笑みを浮かべた。
「それは……嬉しいなぁ」
それからもっと食べなよ、もっと、もっとと延々に注ぎ足されることになって、食べすぎました。
***
次の日の朝早くに出発して、夕方ごろにはマルコフ王国の関所に到着した。
うーん、久しぶりです。数月しか暮らしてないですけど、何だか帰ってきたって感じがしますね!
「宿屋の部屋はそのままにしてあるぞ。女将さんに元気だったって言ってやれよ。心配してたから」
ライガの言葉に嬉しくなって、申し訳なくなって「はい」と言った。
色んな人が心配してくれてたっていうのは嬉しいですね。
宿屋に入って私は首を傾げた。何だかやたらとお客さんがいる。
一階の受付のところには、たくさん人がいて、待合のところのいつもあいてたソファも埋っている。
「レイラちゃん、お帰り!」
女将さんが私を見つけて、カウンターから飛び出してきた。
「……ただいまです。色々ご心配をおかけしてすいませんでした」
「いいんだよ、元気そうで良かった」
「ところで、何だかとても賑わってますね」
「そうなんだよ! ほら、竜が来ただろ! 魔法使いが全部一度に連れて行けないからって、村はずれの空き地で飼ってるんだよ! それを見ようって人がたくさん来ていてねえ、まぁ有難い話だ」
……そんなことになってたんですね。
私が乗っているのは、小柄な黒い馬のクロの方だ。広い街道をぱっかぱっか走っていると気持ちが良い。
「レイラも乗馬うまくなったね。この分だと明日にはつけるかな」
ここ一月毎日練習してましたからね。
太陽が西に傾いてきたころ、旅人用の馬小屋を路傍に見つけて、私たちは立ち止まった。
「今日はここで宿をとって、明日朝早く出ようか」
「はい」と返事をしてから、私は首を傾げた。
ここ、見覚えがありますね。
「おー、ここ、お前に会って最初に野宿したとこだ」
ライガが思い出したように言う。
そういえば、そうですね。
「じゃあ、ちょっと早いけど夕食にしよっか。ライガ、レイラ、井戸で水汲んで、焚き木持ってきてくれるか」
ステファンが荷物の中から鍋を出して、自由に使える石積みの竈にセットすと、干し肉や野菜を出して料理を始めた。鍋に水を入れて、リュックから出した色んな調味料と一緒に肉や野菜を煮込む。ぐつぐつという音に乗せてお湯の中で肉や野菜が踊るたび、いい匂いがしてくる。
「もういいよ」のステファンの声と共に、私はライガと争うように鍋をお皿にすくって入れた。入れると同時に口の中に流し込む。
シンプルなさっぱりした塩味の中に、色んな素材の味と香りが絶妙に混ざり合っていてとっても美味しい。
――ああ、これ、キアーラの大神殿出て、初めて食べた外の味……。
街にいるとお店で食べちゃうから、ステファン、野外に出た時しかこれ作ってくれないんですよね……。
「私……ステファンの鍋が色んなものの中で一番美味しい気がします……」
と思わず呟くと、ステファンは満面の笑みを浮かべた。
「それは……嬉しいなぁ」
それからもっと食べなよ、もっと、もっとと延々に注ぎ足されることになって、食べすぎました。
***
次の日の朝早くに出発して、夕方ごろにはマルコフ王国の関所に到着した。
うーん、久しぶりです。数月しか暮らしてないですけど、何だか帰ってきたって感じがしますね!
「宿屋の部屋はそのままにしてあるぞ。女将さんに元気だったって言ってやれよ。心配してたから」
ライガの言葉に嬉しくなって、申し訳なくなって「はい」と言った。
色んな人が心配してくれてたっていうのは嬉しいですね。
宿屋に入って私は首を傾げた。何だかやたらとお客さんがいる。
一階の受付のところには、たくさん人がいて、待合のところのいつもあいてたソファも埋っている。
「レイラちゃん、お帰り!」
女将さんが私を見つけて、カウンターから飛び出してきた。
「……ただいまです。色々ご心配をおかけしてすいませんでした」
「いいんだよ、元気そうで良かった」
「ところで、何だかとても賑わってますね」
「そうなんだよ! ほら、竜が来ただろ! 魔法使いが全部一度に連れて行けないからって、村はずれの空き地で飼ってるんだよ! それを見ようって人がたくさん来ていてねえ、まぁ有難い話だ」
……そんなことになってたんですね。
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