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31.(モニカ視点)
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まさか、あの占い師本人がリアム様だったなんて……。
直接指輪の話をした時の反応でリアム様が関係していることはわかったものの、まさか本人が変装していたなんてね。
私はネイサン様とルイーズに気がついて、顔面蒼白になっているリアム様を見た。
――そこまでして、ルイーズの気持ちを自分に向けたかったのね。
思わず苦笑してしまう。
他国の王子様でもまるで私みたい。
本当だったら、私だって、このまま指輪を使って、またネイサン様に私のことを好きだって言わせたかったわ……。
だけど。
私はネイサン様を見つめた。
魔法の力で私を好きだと言わせることの虚しさに私は気づいてしまったから。
『僕が好きなのは、ルイーズだ』
そうはっきり告げるネイサン様の言葉が私に向くことはない。
魔法が切れて、彼が私に向けるのは「どうして、そんなことをしたんだ」という失望の目だけ……。それに耐えきれず、泣くしかなかった。
諦めきれなかった私は、ネイサン様の姿だけでも見れたらって、何度かひっそりと王宮を覗きに行ったわ。――そして、数日前にルイーズと庭で語らうネイサン様を見てしまった。
ネイサン様は見たことがない表情をしていて、ルイーズと話せる嬉しさがこぼれ出てるみたいな目で彼女を見つめてた。
そこで、私は気づいてしまった。指輪の力で私に夢中にさせてた時でもあんな表情を私に向けさせることはできなかったって。
結局、得たいものは、心を操ったって手に入らない。
だけど……でも、せめて、少しでも私のことを良く思って欲しい。そう思ってしまった。
だって、ネイサン様のことが好きだったんだもの。
このまま、どうしようもない女だと思われたまま終わるのは嫌だった。
だから、私はネイサン様に手紙を出した。
私がリアム様を誘き寄せてみますって。
***
「……ルイーズ」
占い師装束のリアム様はルイーズを見つめて、彼女の名前だけを呟いた。
それから、「これは……」と小さく続けるけれど、その先に言葉は続かない。
「どうして……、こんなことを……? どうして?」
困惑しきったようなルイーズの言葉にリアム様は首を振る。
「違うんだ。これは、――俺は」
「何が違う! お前がモニカにこの指輪を渡して、俺に婚約破棄をさせたんだろう!!」
ネイサン様がリアム様に掴みかかった。
「やめてください、ネイサン様」
ルイーズが二人の間に入った。リアム様を見ながら問いかける。
「どうして……、そんなことをしたの? 本当にその指輪で人の心を操作できるなら、最初から私に使えばいいじゃない……」
「それは」とリアム様は口ごもったまま俯いた。
私はため息とともに呟いた。
「あなたが、わざわざ遠回りして私に指輪を渡して、ルイーズとネイサン様を婚約破棄させようとしたのは――、あなただって、心を操ったって結局虚しいだけだってわかってたからでしょう……」
直接指輪の話をした時の反応でリアム様が関係していることはわかったものの、まさか本人が変装していたなんてね。
私はネイサン様とルイーズに気がついて、顔面蒼白になっているリアム様を見た。
――そこまでして、ルイーズの気持ちを自分に向けたかったのね。
思わず苦笑してしまう。
他国の王子様でもまるで私みたい。
本当だったら、私だって、このまま指輪を使って、またネイサン様に私のことを好きだって言わせたかったわ……。
だけど。
私はネイサン様を見つめた。
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諦めきれなかった私は、ネイサン様の姿だけでも見れたらって、何度かひっそりと王宮を覗きに行ったわ。――そして、数日前にルイーズと庭で語らうネイサン様を見てしまった。
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そこで、私は気づいてしまった。指輪の力で私に夢中にさせてた時でもあんな表情を私に向けさせることはできなかったって。
結局、得たいものは、心を操ったって手に入らない。
だけど……でも、せめて、少しでも私のことを良く思って欲しい。そう思ってしまった。
だって、ネイサン様のことが好きだったんだもの。
このまま、どうしようもない女だと思われたまま終わるのは嫌だった。
だから、私はネイサン様に手紙を出した。
私がリアム様を誘き寄せてみますって。
***
「……ルイーズ」
占い師装束のリアム様はルイーズを見つめて、彼女の名前だけを呟いた。
それから、「これは……」と小さく続けるけれど、その先に言葉は続かない。
「どうして……、こんなことを……? どうして?」
困惑しきったようなルイーズの言葉にリアム様は首を振る。
「違うんだ。これは、――俺は」
「何が違う! お前がモニカにこの指輪を渡して、俺に婚約破棄をさせたんだろう!!」
ネイサン様がリアム様に掴みかかった。
「やめてください、ネイサン様」
ルイーズが二人の間に入った。リアム様を見ながら問いかける。
「どうして……、そんなことをしたの? 本当にその指輪で人の心を操作できるなら、最初から私に使えばいいじゃない……」
「それは」とリアム様は口ごもったまま俯いた。
私はため息とともに呟いた。
「あなたが、わざわざ遠回りして私に指輪を渡して、ルイーズとネイサン様を婚約破棄させようとしたのは――、あなただって、心を操ったって結局虚しいだけだってわかってたからでしょう……」
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