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22.(ネイサン視点)
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……もし、リアム王子が、モニカに指輪を渡したのだったとしたら……。
その考えを頭から消し去れなかった僕は、モニカにその占い師について、もう一度詳しく確認しなければ、と思った。
――父上からは、良いと言うまで部屋から出るなと謹慎を命じられている。
しかも、再度モニカに会ったとわかったら――謹慎だけでは済まないかもしれない。
けれど、僕はどうしても思いついてしまった考えを追及したかった。
そうすれば、またルイーズと、前のような関係に戻れるきっかけになるかもしれない、と思ってしまったら止められなかった。
侍従に食欲がないので、夕食は遅くしてほしい。勉強に集中したいので部屋に来ないように伝えて、僕は街に出ても目立たない服装に着替えると、そっと部屋を出た。
モニカが学園を退学してから見ていないが、屋敷にいるはずだ。
徒歩で城下町まで出ると、商人の屋敷が立ち並ぶ一角へと向かった。
家の門を叩き、モニカを呼んでもらうと彼女は目を丸くして、それから少し後ずさった。
「――ネイサン様!? 何の御用ですか……?」
「モニカ、君に例の占い師のことについて聞きたい」
モニカは気まずそうに俯いた。
僕は言葉を続けた。
「君の持っていたあの指輪……あれは……放浪民のデザインらしい……。僕は、リアム王子が何か関係あるんじゃないかと、そう思ったんだ」
「リアム様が?」
「最近、ルイーズ様はリアム様とお親しいそうですね。お二人が婚約するかもという話は、屋敷から出なくても耳にしました」
モニカは俯いたまま呟く。
「ネイサン様は、ルイーズ様とリアム様が一緒になるのが嫌で……そんなことを考えたんですか?」
拳を握る。そうだ。リアム王子を疑っているのは、全てルイーズを取り戻したいからだ。
「ああ! そうだ! 僕はルイーズが本当に好きだってことに気づいたから、そんなことを考えたんだ」
「……そんなことを言うネイサン様を私は見たくありませんでした……」
モニカはそう言って後ろを向くと、その場にしゃがみこんでしまった。
握った拳が震えた。そんなことを言う僕を見たくなかったって? そんな事を言われてどうすればいいんだ。
「お前が! 僕を操らなければ……!」
そう口に出すと、モニカはその場に泣き崩れた。
様子をうかがっていた執事が「お嬢様」と彼女に近づいたので、僕ははっとして、大きく息を吐いた。
目的は……占い師のことを聞きにきたんだ。
モニカを責め立てたところで、彼女が話してくれるわけじゃない。
「モニカ……、君だってその指輪をもらわなければ、学園を退学になんてならなかったはずだ。その占い師を突き止めたいだろう……」
モニカはしばらくぐすぐすと鼻を鳴らした後に、泣きはらした目で振り返って口を動かした。
「……あの占い師……、まるであのホールでの出来事を見ていたかのようなことを言ったんです」
「見ていたように?」
「『怪我をさせようとしたり、大勢の前で恥をかかせるようなことまでさせる必要はなかったはず』って……。婚約破棄だけさせれば良かったのにって……」
婚約破棄だけさせれば良かった……。
ルイーズを無駄に傷つけるようなことを、その占い師は怒ったということか?
つまり、そいつはルイーズを傷つけられることは、嫌だ……と。
本当に僕とルイーズの婚約破棄だけが目的だった……?
頭の中で疑念が確信に変わろうとしていた。
今回の件について、リアム王子が関係しているのではないか、と。
その考えを頭から消し去れなかった僕は、モニカにその占い師について、もう一度詳しく確認しなければ、と思った。
――父上からは、良いと言うまで部屋から出るなと謹慎を命じられている。
しかも、再度モニカに会ったとわかったら――謹慎だけでは済まないかもしれない。
けれど、僕はどうしても思いついてしまった考えを追及したかった。
そうすれば、またルイーズと、前のような関係に戻れるきっかけになるかもしれない、と思ってしまったら止められなかった。
侍従に食欲がないので、夕食は遅くしてほしい。勉強に集中したいので部屋に来ないように伝えて、僕は街に出ても目立たない服装に着替えると、そっと部屋を出た。
モニカが学園を退学してから見ていないが、屋敷にいるはずだ。
徒歩で城下町まで出ると、商人の屋敷が立ち並ぶ一角へと向かった。
家の門を叩き、モニカを呼んでもらうと彼女は目を丸くして、それから少し後ずさった。
「――ネイサン様!? 何の御用ですか……?」
「モニカ、君に例の占い師のことについて聞きたい」
モニカは気まずそうに俯いた。
僕は言葉を続けた。
「君の持っていたあの指輪……あれは……放浪民のデザインらしい……。僕は、リアム王子が何か関係あるんじゃないかと、そう思ったんだ」
「リアム様が?」
「最近、ルイーズ様はリアム様とお親しいそうですね。お二人が婚約するかもという話は、屋敷から出なくても耳にしました」
モニカは俯いたまま呟く。
「ネイサン様は、ルイーズ様とリアム様が一緒になるのが嫌で……そんなことを考えたんですか?」
拳を握る。そうだ。リアム王子を疑っているのは、全てルイーズを取り戻したいからだ。
「ああ! そうだ! 僕はルイーズが本当に好きだってことに気づいたから、そんなことを考えたんだ」
「……そんなことを言うネイサン様を私は見たくありませんでした……」
モニカはそう言って後ろを向くと、その場にしゃがみこんでしまった。
握った拳が震えた。そんなことを言う僕を見たくなかったって? そんな事を言われてどうすればいいんだ。
「お前が! 僕を操らなければ……!」
そう口に出すと、モニカはその場に泣き崩れた。
様子をうかがっていた執事が「お嬢様」と彼女に近づいたので、僕ははっとして、大きく息を吐いた。
目的は……占い師のことを聞きにきたんだ。
モニカを責め立てたところで、彼女が話してくれるわけじゃない。
「モニカ……、君だってその指輪をもらわなければ、学園を退学になんてならなかったはずだ。その占い師を突き止めたいだろう……」
モニカはしばらくぐすぐすと鼻を鳴らした後に、泣きはらした目で振り返って口を動かした。
「……あの占い師……、まるであのホールでの出来事を見ていたかのようなことを言ったんです」
「見ていたように?」
「『怪我をさせようとしたり、大勢の前で恥をかかせるようなことまでさせる必要はなかったはず』って……。婚約破棄だけさせれば良かったのにって……」
婚約破棄だけさせれば良かった……。
ルイーズを無駄に傷つけるようなことを、その占い師は怒ったということか?
つまり、そいつはルイーズを傷つけられることは、嫌だ……と。
本当に僕とルイーズの婚約破棄だけが目的だった……?
頭の中で疑念が確信に変わろうとしていた。
今回の件について、リアム王子が関係しているのではないか、と。
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