【完結】婚約破棄をめぐる思惑~魅了の指輪を使われて婚約破棄されました~

夏芽みかん

文字の大きさ
12 / 34

12.

しおりを挟む
「おはよう、ルイーズ」

 翌日、登校した私が馬車を降りると、バラの花束を持ったリアムが立っていた。

「……おはようございます」

 周囲で他の生徒が輪をつくるようにこちらに注目していることがわかって、赤面しながらその花を受け取る。

「ネイサン王子とモニカは休みとのことだよ」

 リアムは微笑むとそう言った。
 思わず聞き返してしまう。

「え? 休み?」

「体調不良、だそうだ。――都合が悪くなって、隠れたかな」

「……」

 思わず黙り込んでしまう。
 私に大勢の生徒の前であれだけのことをしておいて、当の二人が休むなんてどういうことなの?

「君が堂々と登校しているのを見れば、他の生徒もどちらが正しいかに気がつくさ」

 リアムはそう言って微笑んだ。

「そうだと、良いです」

 私もつられて微笑み返す。
 朝、着替えて登校の馬車に乗るのに足が震えたけれど……、きちんと学園へ来て良かった。
 これも、リアムが「明日、学校で」と言ってくれたからだわ。

 私はもらった花束を大事に抱えた。

 ***

「朝からお熱いわね」

 教室に入ると、私に駆け寄って来たローラが悪戯っぽい顔で私を小突いた。

「もう……、そう言い方はよしてよ」

 そう言い返すと、顔を覗き込まれた。

「顔が赤いわよ、ルイーズ」

 私は両手で頬を押さえた。本当に熱くなっている。
 ローラは「ふふふ」と笑うと、「あら」と呟いた。

「噂をすれば……」

 指さす方では、リアムが手を振って笑っていた。

「ルイーズ、昼を一緒に食べないか」

 私は一瞬躊躇ちゅうちょした。
 ……二人きり、かしら。
 お昼を異性と二人っきりで食べるというのは、学園内では交際している、と周囲に示すような行為だ。

「――あなたは、ローラ=シュバイン嬢……ですよね」

 私の逡巡を感じ取ったように、リアムはローラに声をかけた。

「ええ……」

「一緒にお昼をどうかな。ルイーズと俺と3人で。俺の事は気軽にリアムと呼んでください」

「喜んで」とローラは笑った。

「じゃあ、ルイーズ、ローラ、庭園の温室で待っている」

 そう言ってリアムは去って行った。

 ***

 昼食はサンドウィッチだとかサラダだとか、屋敷から使用人が持ってきてくれたものを食べる。私とローラが庭園に行くと、そこにはもうテーブルがセットされていた。

「やぁ」

 そう言って手を挙げるリアムの元へ行き、腰掛ける。
 食事を始めると、早速ローラがリアムに問いかけた。

「リアム……、ルイーズに婚約の話をしたっていうのは本当なんですか?」

「ああ。本当だ。この国に来てから……いや、来る前から俺はずっとルイーズのことを慕っていた」

 大きくはっきりした口調でリアムがそう答えるものだから、ローラは「まぁ」と口を覆い、赤面した私は顔を背け、周囲では騒めきが起こった。

 周囲で騒めき……、見回してみれば、教室の窓やら中庭の隅やらから私たちを遠巻きに見ている生徒がたくさんいた。

「……すっかり、皆の注目のまとね」

 ローラは茶化すように言ってから、耳元で囁いた。

「彼があなたを本当に好きなのは確かなようね。目を見ればわかるもの」

 それから、リアムに向かって大げさなため息をついた。

「ルイーズが隣国に行ってしまったら寂しいわ。ああ、でも遊びに行かせてもらえるかしら」

「……気が早いのよ、ローラは……」

 私は友達を肘で小突いた。
 まだ婚約のお話を受けるという返事もしていないのに……。

 私は周囲を見回した。

 生徒たちの間にリアムが私に婚約の話をしたことは、あっという間に広まるでしょうね。
 ……ネイサン様はどう思うかしら。

 そう考えて首を振った。

 ……どうも思わないでしょう。婚約破棄を告げたのは向こうなんだもの……。

しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

婚約破棄された公爵令嬢ですが、王太子を破滅させたあと静かに幸せになります

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エレナは、 誕生日の舞踏会で突然、婚約破棄を宣言される。 「地味で役に立たない」と嘲笑され、 平民の少女を新たな婚約者に選ぶ王太子。 家族にも見放され、エレナは王都を追われることに――。 しかし彼女は、ただの“癒しの令嬢”ではなかった。 静かに力を蓄え、事実と証拠だけで王太子の虚飾を暴き、 自らの手で破滅へと導いていく。 復讐の果てに選んだのは、 誰かに与えられる地位でも、名誉でもない。 自分で選び取る、穏やかな幸せ。 これは、 婚約破棄された公爵令嬢が 王太子を終わらせたあと、 本当の人生を歩き出す物語。 -

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?

白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。 王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。 だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。 順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。 そこから始まる物語である。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...