7 / 34
7.
しおりを挟む
「それが……、『婚約を考えてもらえないか』と言われたわ」
「えぇ!?」
ローラは椅子がひっくり返りそうなくらいに驚いた。
……うん、そうよね、そうなるわよね……。
「ずっと私を慕っていたって……、私とリアム、昔、会ったことがあったの。お父様のお仕事の関係でアスティアに行った時に……」
「そんなことがあるのね……」
ローラは椅子に座り直すとお茶を飲んでお菓子を食べて、息を整えた。
「でも、リアム様、良いじゃない。素敵だし、アスティアの王宮はうちの王宮より豪華って聞くわよ。噂じゃ、婚約のお相手を探しに留学されたなんて話もあって……みんな我先にお近づきになりたいって感じじゃない。――あなたと婚約しているのに、あんな商人の娘に言いくるめられるネイサン様より、リアム様の方が良いんじゃない?」
友達はそわそわした様子で身を乗り出した。
「それで、何て返事したの?」
「すぐに返事はできなくて――、そうしたら、すぐに答えなくても良いっておしゃってくれたから……、まずはお友達から、ということになったわ」
「えぇ……? 返事をしてしまえば良かったのに……」
ローラは口を尖らせながらそう言う。
私は苦笑した。
「そうは言っても……、ちょっと、すぐにはネイサン様のことを受け入れられないし……」
ぼやくように言うと、ローラは怒ったような顔をした。
「ネイサン様……そうよね、あなた、ネイサン様のこと好きだったんだものね。――全く、うちの王子様は何を考えているのかしら。あなたたち、うまくいっているように思っていたのに」
「ここ二月くらい、週末一緒にお出かけしたりできていなかったの。私は――ネイサン様とモニカが親しくしていたのを遠目から見ているばかりで……」
私はため息を吐いた。
もし、……、ネイサン様に何か言っていたら違っていたかしら。
そういえば、二人で過ごすときはいつもネイサン様から誘ってもらってばかりで、自分から誘ったことがなかった。
「私がもっと自分の気持ちをネイサン様に伝えておけば良かったのかしらね」
「ルイーズってば、何でいつもそんな感じなのよ! 明らかに婚約者がいる相手、しかも身分違いの相手に手を出す方が身のほど知らずじゃない!」
ローラは目を吊り上がらせた。
……この友達は、いつも、私の代わりに怒ってくれる。
私は彼女の肩を叩いて、「ありがとう、ローラ」と改めてお礼を言った。
ローラとそのままぱくぱくお菓子を食べてお茶を飲みながら話していると、すごい足音を立ててお父様が部屋に入って来た。
「ルイーズっ!!! ネイサンに婚約破棄されたと聞いたが!?」
どうやら勤務中の宮殿からそのまま帰って来たらしい。
「お父様、ネイサン様……呼び捨て……」
「どうでもいいわ、あの馬鹿王子が。せっかくお前との婚約を認めてやったのに、破棄するとは……しかも、別の女を好きになったからだと!? ルイーズより良い娘がどこにいるんだ!?」
お父様も私のためにかんかんに怒ってくれている。
有難いけれど……、少し親馬鹿じゃないかしら。
そんなことを考えていたら落ち込んでいた気持ちも軽くなって来た。
「しかも、その新しい女をお前が虐めたとかのたまったそうだな!? 国王陛下には状況をよく確認させるよう、進言させていただいた。きちんと事実を確認して謝るまで私は仕事には行かん、とな」
「お父様……、気持ちはとても嬉しいけど……、仕事は行ってください」
そう言いながら、私は信じてくれる人たちに囲まれて幸せだわ、と思った。
「えぇ!?」
ローラは椅子がひっくり返りそうなくらいに驚いた。
……うん、そうよね、そうなるわよね……。
「ずっと私を慕っていたって……、私とリアム、昔、会ったことがあったの。お父様のお仕事の関係でアスティアに行った時に……」
「そんなことがあるのね……」
ローラは椅子に座り直すとお茶を飲んでお菓子を食べて、息を整えた。
「でも、リアム様、良いじゃない。素敵だし、アスティアの王宮はうちの王宮より豪華って聞くわよ。噂じゃ、婚約のお相手を探しに留学されたなんて話もあって……みんな我先にお近づきになりたいって感じじゃない。――あなたと婚約しているのに、あんな商人の娘に言いくるめられるネイサン様より、リアム様の方が良いんじゃない?」
友達はそわそわした様子で身を乗り出した。
「それで、何て返事したの?」
「すぐに返事はできなくて――、そうしたら、すぐに答えなくても良いっておしゃってくれたから……、まずはお友達から、ということになったわ」
「えぇ……? 返事をしてしまえば良かったのに……」
ローラは口を尖らせながらそう言う。
私は苦笑した。
「そうは言っても……、ちょっと、すぐにはネイサン様のことを受け入れられないし……」
ぼやくように言うと、ローラは怒ったような顔をした。
「ネイサン様……そうよね、あなた、ネイサン様のこと好きだったんだものね。――全く、うちの王子様は何を考えているのかしら。あなたたち、うまくいっているように思っていたのに」
「ここ二月くらい、週末一緒にお出かけしたりできていなかったの。私は――ネイサン様とモニカが親しくしていたのを遠目から見ているばかりで……」
私はため息を吐いた。
もし、……、ネイサン様に何か言っていたら違っていたかしら。
そういえば、二人で過ごすときはいつもネイサン様から誘ってもらってばかりで、自分から誘ったことがなかった。
「私がもっと自分の気持ちをネイサン様に伝えておけば良かったのかしらね」
「ルイーズってば、何でいつもそんな感じなのよ! 明らかに婚約者がいる相手、しかも身分違いの相手に手を出す方が身のほど知らずじゃない!」
ローラは目を吊り上がらせた。
……この友達は、いつも、私の代わりに怒ってくれる。
私は彼女の肩を叩いて、「ありがとう、ローラ」と改めてお礼を言った。
ローラとそのままぱくぱくお菓子を食べてお茶を飲みながら話していると、すごい足音を立ててお父様が部屋に入って来た。
「ルイーズっ!!! ネイサンに婚約破棄されたと聞いたが!?」
どうやら勤務中の宮殿からそのまま帰って来たらしい。
「お父様、ネイサン様……呼び捨て……」
「どうでもいいわ、あの馬鹿王子が。せっかくお前との婚約を認めてやったのに、破棄するとは……しかも、別の女を好きになったからだと!? ルイーズより良い娘がどこにいるんだ!?」
お父様も私のためにかんかんに怒ってくれている。
有難いけれど……、少し親馬鹿じゃないかしら。
そんなことを考えていたら落ち込んでいた気持ちも軽くなって来た。
「しかも、その新しい女をお前が虐めたとかのたまったそうだな!? 国王陛下には状況をよく確認させるよう、進言させていただいた。きちんと事実を確認して謝るまで私は仕事には行かん、とな」
「お父様……、気持ちはとても嬉しいけど……、仕事は行ってください」
そう言いながら、私は信じてくれる人たちに囲まれて幸せだわ、と思った。
12
お気に入りに追加
835
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる