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船からの脱出
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しおりを挟むクソ!
何なんだこいつらは!? 食料や燃料、素材目当ての賊とは違う!
明らかにこの船の人間を殺すことを目的にしている!
いったい何のために!?
青年は奥歯を噛みしめる。
走っていることで上がった息が、口を閉じたことで鼻から漏れ出す。
すると、血の臭いを強く感じた。
走り続けたことで口の中に感じるものだけではない。
鼻腔の中に届くむせ込みそうになる、この臭いは、近くで大量の血が空気に触れた状態になっていることを示している。
青年は慌てて足を止め、息を潜めて気配を殺し、周囲の気配を探った。
随分先で、悲鳴と、そして、びちゃびちゃと液体が飛び散り、床や壁に当たる音の響きを感じる。
襲撃者……!
この先まで来ていたのか!
自分が向かおうとしていた先で襲撃者によって、待たせていた者が殺されたことが分かると、青年は周囲を見まわし、ゆっくりと後退し、足を止めた。
襲撃者から身を隠しやすくするために、足元の照明を残して、他の照明は落としてある。
なので、息を殺して照明の影になるところに立てば、同じ通路内にいても、気づかれない。
夜目の効かない人間ならば、それでやりすごせただろう。
しかし、相手は普通の人間ではなかった。
まずい、気づかれた!
ぞわりと体中の皮膚の毛穴が開き、体毛が逆立つのを感じ、青年は闇の向こうにいる襲撃者が自分の存在を完全に認識し、捉えていることを察した。
逃げなければ!
しかし、何処へ?
外へ繋がっている通路は、もうほとんど襲撃者たちによってふさがれている。
ここが最後の希望の路だったのだ。
襲撃者たちは、皆この船の中でも手練れといわれていた者たちを赤子の手を捻るようにして無力化し、殺してしまうほどの実力を持っていた。
喧嘩どころか、武術の心得すらない青年は、きっと羽虫のようにつぶされてしまうだろう。
いや、殺されてたまるものか!
しかし、青年は殺されてやるつもりなどなかった。
何故なら、まだ目的を達成していないから。
我が子の仇である男を殺すまで、絶対に死ぬわけにはいかないのだ。
青年は左腕を押さえつけていた右手を離すと、纏っている外套の袖に仕込んだ鉄針に手を伸ばす。
その間にも、襲撃者は青年に迫ってきていた。
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