【BL】トリプルトライアングル

秋藤てふてふ

文字の大きさ
8 / 9

08

しおりを挟む
 高田光彦は、坂城佐助の初恋の相手だった。

 しかし、今、高田は、坂城がもっとも殺したい人間となっている。
 
 父親を殺した犯人だと名乗り出てきた坂城に対し、最初、高田は、殺意を向けた。
 
 見つめられているだけで身を斬られることを錯覚するような視線と、透明な氷のような瞳。
 
 透き通った純粋なその殺意は、今まで人を貶め、苦しめてきた自分に向けられたものの中で、一番美しい、綺麗だと思えるものだった。
 
 あの瞳をもう一度みたい。
 あの瞳をもう一度向けてくれるのであれば、自分は殺されても構わない。
 
 そう思えるほどに。
 
 しかし、次に出会ったとき、光彦は、自分を赦し、自分を逮捕し、罪を償わせることによって自分の復讐とすると、自分の瞳を真っすぐに見つめて宣言をした。
 
 それと同時に、坂城佐助は失恋し、そして、高田光彦に対して、人生で初めて、敗北感を味あわされたことで、憎しみを抱くようになった。
 
 夫を自分の犯罪組織の人間に殺され、その事実に耐えられず、母親が、心身ともに病んでしまったときも、放置子だった守を気にかけ、面倒をみていて、彼が施設へ送られた後も、ずっと気にかけつづけていた。
 
 警察学校へ入学した先で出会った同じ境遇である湯沢幸篤には、共に坂城を殺して復讐を果たそうと誘われたが、自分は父親の意志を継ぎ、警察官として彼を逮捕し、そして、父親の目指した警察官になるのだと言い。湯沢の坂城に対する復讐の目標を変えさせた。
 
 自分が警察に潜入させていた浜松拝司と出会い、恋仲になった彼を殺しても、それでも、坂城を逮捕することを自らの復讐にするという誓いも変わらなかった。
 
 負けた。
 また負けた。
 
 勝てない。
 勝てない。
 勝てない。
 
 いくら自分が煽っても、追い詰めても、ないだ水面のような瞳で、自分を見つめる光彦の瞳が、強烈に、太陽を見たときのように瞼の裏に焼き付いて離れない。
 美しく見えた光彦の瞳が、今は大嫌いで、憎くて仕方がなかった。
 
 はじめて、心から人を殺したい、そう思った。
 しかし、ただ殺すのでは、自分が負けたままだ。
 それは、非常に面白くない。
 自分が勝てないまま、終わらせてしまうなど、許せない。
 
 殺すなら、それは、自分が彼に勝ったときでなければならない。

 親を殺されても、恋人を殺されても、
 だから、彼らを使うことにすることにしたのだ。
 かつて、高田光彦と恋人関係にあった浜松拝司と、彼が気にかけていた守。
 
 松本守には、ソタイへの潜入させ、情報を探るスパイ活動をするように命令した。
 
 高田光彦に想いを寄せているらしい松本守は、喜んで命令を受け入れた。
 
 浜松拝司に対しては、湯沢幸篤を肩を撃ったあと、湯沢幸篤の病室に張り込ませた。
 そして、幸篤の見舞いに高田が現れたら、自分の合図で、松本守か、湯沢幸篤を撃ち殺し、そのあと高田光彦の前に現れ、殺すように命じた。
 
 自分に、親や恋人、愛するものを殺されても、自分を赦した高田光彦。
 しかし、さすがのあの男も、愛する人をかつて愛した人に殺させれば、自分のことを赦せないだろう。
 
 
 さあ、早くどちらか選んでよ。
 俺としては、松本守を選んでくれた方が、後で幸篤で遊べるから、そっちの方が良いんだけどね。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

悋気応変!

七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。 厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。 ────────── クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。 ◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。 ◇プロローグ漫画も公開中です。 表紙:七賀ごふん

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

推し変なんて絶対しない!

toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。 それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。 太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。 ➤➤➤ 読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。 推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。 【2025/11/15追記】 一年半ぶりに続編書きました。第二話として掲載しておきます。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)

処理中です...