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異界召喚編
第十五話 対熾天使王
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「おかしいな、あまりにもおかしい」
(人っ子一人いないぞ)
「何らかの出来事があったと思っていいわね…」
「…俺達の知らない時に…か。でもまるで女神も知らなかったみたいじゃないか?」
「…確かに、女神もこんなに人がいないとは思ってないんじゃねーの」
「…まぁ、あの女は猫かぶってそうだし、なんとも言えないなあ」
慎吾達はなんとか冒険者会場の前までついた。しかし、その中にも人がいない。
(いた…!)
「お前ら…」
それは、Sランク組だった。
そして、ほかBランク組。
が、それだけしかいない。
つまり、この国の冒険者ギルドは機能していないということになる。
「一体…」
慎吾達が話し合っていると、城の方から轟音が響いた。
「…!?」
(急に何かが爆発した?)
◇
「な、んだ、と」
もう異界召喚は成功していた。だがしかし、それはブラッドにとっては想定内であった。
(……まさかそれが人だとは…!)
しかも見たところ、最も厄介な、成長型であるようであった。
(あの四人組…なんという魔力量だ…)
城から最初に出てきた四人組の保有する魔力量はとてつもない量である。
とは言え、一人を除いて歩き方から警戒の仕方まで何から何まで駄目なのが見て取れた。
(まだ召喚されてすぐなのか)
と、思えば今殺っておくとブラッドに有利になるかもしれない。
「…」
四人組がブラッドの近くを通り過ぎていく。
ブラッドが自分にかけた、Lv7魔法気配完全遮断により、普通の人では感知出来ない領域に到達する。
そして、当たり前のように通り過ぎていく──。
「…」
──ドクン。
ブラッドは心臓が跳ねた気がした。
一番前の黒髪の男…
(今俺を見てなかったか?…まさかな。そんな訳はない…はずなのだが)
ブラッドは内心で焦っていた。
「…ん、まだ出てくるのか」
次から次へと出てくる。
とりあえず、これは人数確認のチャンスだと思い、数を数えていく。
(…二十人か。それなり、だな)
「よし、じゃあもう出てくる気配もないし、やるか?熾天使王」
「ほぅ、いつから気がついていた?」
異空間からバチバチと雷電を纏いながら、熾天使の王は悠々と現れた。
「てめぇも俺のこと、みえてたんだろ?」
「ふ、お互い様、ということか」
「あぁ」
それを切り口に、
ダン、と地面に足を踏み込む。
Lv9魔法闇化
右手が黒き渦につつまれる。
そして、勢いをつけて熾天使王に打ち付ける。
「ふん」
その拳を軽くあしらう熾天使王。
単純な戦闘力では、ブラッドは遠く熾天使王には及ばない。
では何故、殴りつけたか、と言えば。
「む」
魔法、闇化は、特定部位を闇で纏えるという高度な魔法だ。
人智を越えた、(人の限界がLv7程度)魔法。
そして、その闇で相手を傷つければ、相手へと闇が侵入する。
闇と善は表裏一体である。
相手の善が高ければ高いほど(つまりは神性が高ければ高いほど)闇はよく通り、相手の闇が深ければ深いほど通りづらくなる。(悪性)
その点で言えば、熾天使王は神や天使の中でも最上位に位置する。
「ぐ、ぬぅ」
物理的なダメージは殆どカットできるかわりに、魔法的ダメージに耐性が低い。
これも決め手となっている。
「きさ、まぁ!」
黒い闇が熾天使王の肉体を灼く。
が、強い神性の力ですぐにかき消された。
「…じゃあ、かき消せないほど拳を打ち込んでやる」
「神聖なる矢!」
空に十二個だろうか、白い光をまとった矢が展開される。
おそらく、Lv10よりも上の魔法だろう。
(一撃でも喰らえば瀕死級…か?)
「発射ぁ!」
矢がブラッドめがけてうち放たれる。
神速の矢はブラッドの脳天を正確に捉えていた。
避けるのは困難を極める。
「ならばここは、迎撃するまで」
殆ど同時に着弾したそれらをブラッドは拳で打ち払う。
「!?」
と、それに夢中になっていたブラッドの目の前には、紅い球があった。
「紅焔球」
そう、熾天使王の矢は囮であった。
こんな初歩的なミスをしてしまうとはな。とブラッドは自分の失態に失落する。
そして、それに無防備な体勢のまま直撃する。
爆発し、轟音が鳴り響く。
炎の範囲は、王城半分を包み込むほどであった。
ブラッドは焼かれる。
「ふん、人間風情が」
熾天使王はあざ笑う。
が、ブラッドは実のところほぼノーダメージ。
ブラッドの保有する、このローブは、ほか属性を殆ど通すかわりに、闇と火に対する強い耐性をもっている。
なので、炎攻撃はほぽ意味がない。だが、闇攻撃は大抵通してしまうし、氷攻撃は余計通すので使いづらいのだ。
(しかし、ここは後隙狩りが基本だ。今警戒していない、慢心したあの熾天使王をぶっ倒す)
「闇球」
「がっ!?」
真の闇をもつ球が熾天使王を覆う。
闇球の効果はそれだけではない。盲目や、精神崩壊の効果も併せ持つ。
(ここで畳み掛けるか)
「重力球」
「ん!?う、動け…」
重力球。圧倒的重力の渦が、熾天使王を引きずり込む。
「さぁ、ゆくぞ!」
ブラッドは魔法を幾重にも展開していく──
(人っ子一人いないぞ)
「何らかの出来事があったと思っていいわね…」
「…俺達の知らない時に…か。でもまるで女神も知らなかったみたいじゃないか?」
「…確かに、女神もこんなに人がいないとは思ってないんじゃねーの」
「…まぁ、あの女は猫かぶってそうだし、なんとも言えないなあ」
慎吾達はなんとか冒険者会場の前までついた。しかし、その中にも人がいない。
(いた…!)
「お前ら…」
それは、Sランク組だった。
そして、ほかBランク組。
が、それだけしかいない。
つまり、この国の冒険者ギルドは機能していないということになる。
「一体…」
慎吾達が話し合っていると、城の方から轟音が響いた。
「…!?」
(急に何かが爆発した?)
◇
「な、んだ、と」
もう異界召喚は成功していた。だがしかし、それはブラッドにとっては想定内であった。
(……まさかそれが人だとは…!)
しかも見たところ、最も厄介な、成長型であるようであった。
(あの四人組…なんという魔力量だ…)
城から最初に出てきた四人組の保有する魔力量はとてつもない量である。
とは言え、一人を除いて歩き方から警戒の仕方まで何から何まで駄目なのが見て取れた。
(まだ召喚されてすぐなのか)
と、思えば今殺っておくとブラッドに有利になるかもしれない。
「…」
四人組がブラッドの近くを通り過ぎていく。
ブラッドが自分にかけた、Lv7魔法気配完全遮断により、普通の人では感知出来ない領域に到達する。
そして、当たり前のように通り過ぎていく──。
「…」
──ドクン。
ブラッドは心臓が跳ねた気がした。
一番前の黒髪の男…
(今俺を見てなかったか?…まさかな。そんな訳はない…はずなのだが)
ブラッドは内心で焦っていた。
「…ん、まだ出てくるのか」
次から次へと出てくる。
とりあえず、これは人数確認のチャンスだと思い、数を数えていく。
(…二十人か。それなり、だな)
「よし、じゃあもう出てくる気配もないし、やるか?熾天使王」
「ほぅ、いつから気がついていた?」
異空間からバチバチと雷電を纏いながら、熾天使の王は悠々と現れた。
「てめぇも俺のこと、みえてたんだろ?」
「ふ、お互い様、ということか」
「あぁ」
それを切り口に、
ダン、と地面に足を踏み込む。
Lv9魔法闇化
右手が黒き渦につつまれる。
そして、勢いをつけて熾天使王に打ち付ける。
「ふん」
その拳を軽くあしらう熾天使王。
単純な戦闘力では、ブラッドは遠く熾天使王には及ばない。
では何故、殴りつけたか、と言えば。
「む」
魔法、闇化は、特定部位を闇で纏えるという高度な魔法だ。
人智を越えた、(人の限界がLv7程度)魔法。
そして、その闇で相手を傷つければ、相手へと闇が侵入する。
闇と善は表裏一体である。
相手の善が高ければ高いほど(つまりは神性が高ければ高いほど)闇はよく通り、相手の闇が深ければ深いほど通りづらくなる。(悪性)
その点で言えば、熾天使王は神や天使の中でも最上位に位置する。
「ぐ、ぬぅ」
物理的なダメージは殆どカットできるかわりに、魔法的ダメージに耐性が低い。
これも決め手となっている。
「きさ、まぁ!」
黒い闇が熾天使王の肉体を灼く。
が、強い神性の力ですぐにかき消された。
「…じゃあ、かき消せないほど拳を打ち込んでやる」
「神聖なる矢!」
空に十二個だろうか、白い光をまとった矢が展開される。
おそらく、Lv10よりも上の魔法だろう。
(一撃でも喰らえば瀕死級…か?)
「発射ぁ!」
矢がブラッドめがけてうち放たれる。
神速の矢はブラッドの脳天を正確に捉えていた。
避けるのは困難を極める。
「ならばここは、迎撃するまで」
殆ど同時に着弾したそれらをブラッドは拳で打ち払う。
「!?」
と、それに夢中になっていたブラッドの目の前には、紅い球があった。
「紅焔球」
そう、熾天使王の矢は囮であった。
こんな初歩的なミスをしてしまうとはな。とブラッドは自分の失態に失落する。
そして、それに無防備な体勢のまま直撃する。
爆発し、轟音が鳴り響く。
炎の範囲は、王城半分を包み込むほどであった。
ブラッドは焼かれる。
「ふん、人間風情が」
熾天使王はあざ笑う。
が、ブラッドは実のところほぼノーダメージ。
ブラッドの保有する、このローブは、ほか属性を殆ど通すかわりに、闇と火に対する強い耐性をもっている。
なので、炎攻撃はほぽ意味がない。だが、闇攻撃は大抵通してしまうし、氷攻撃は余計通すので使いづらいのだ。
(しかし、ここは後隙狩りが基本だ。今警戒していない、慢心したあの熾天使王をぶっ倒す)
「闇球」
「がっ!?」
真の闇をもつ球が熾天使王を覆う。
闇球の効果はそれだけではない。盲目や、精神崩壊の効果も併せ持つ。
(ここで畳み掛けるか)
「重力球」
「ん!?う、動け…」
重力球。圧倒的重力の渦が、熾天使王を引きずり込む。
「さぁ、ゆくぞ!」
ブラッドは魔法を幾重にも展開していく──
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