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受け継ぐもの
3P
しおりを挟む屋敷の裏にある墓地。ここには夜鷹と和鷹が眠っている。近藤は花を手向け、線香に火をつけて供えると静かに手を合わせる。
しばらくして立ち上がり、クスクス笑う小紅とフフンと鼻を鳴らす千歳を軽く睨む近藤。ぐうの音も出ないか。
今日は彼の命日だ。決戦以来、夜鷹の命日にも参りに来てくれるようになった。墓石をジッと見つめ、不意に聞こえた「んーまぁー」という可愛らしい声に目を向ける。
「もうじき8か月、だったか?2人も世話をするのは大変であろう?」
この場にいるのは3人だけではない。小紅の腕の中に1人、背中にもう1人、子供がいる。小紅と黒鷹の子供だ。しかも、男の子と女の子の双子。
「毎日の成長が早くて…………お、重いんです。ハイハイもしだしましたし、そろそろ名前を憶えてくれないかなぁって思っているのですが」
小紅は細身なので、生後8か月の子供を前後に抱えるとなるとかなりの疲労が溜まる。ゆえに外に出るのは1日1回くらい。
「たしかぁ……鷹虎君と紅鷹ちゃん、だったわよね?鷹虎君は小紅ちゃんに似ておめめクリクリですっごく可愛いわぁ。紅鷹ちゃんも可愛いんだけど、クロポンに似て何考えてんのか読めないわねぇ」
「あ、今は触らない方が――」
「きゃっ!び、びっくりしたわぁ。この子、いきなりちぃを蹴ってくるなんて。この前まではプニプニ、触らせてくれてたのにぃ」
「人見知りし始めちゃったんです。ごめんなさい……」
黒鷹と同じ夜空色の瞳を持つ紅鷹。小紅の背中でボーっと空を見上げていた彼女に手を伸ばした千歳は、それはもう赤ん坊とは思えないくらい素早い蹴りを食らった。
両親の遺伝子を確かに受け継いでいる。「いやっ」と、やけにはっきり自己主張する彼女の目は黒鷹そっくりに鋭い。
黒鷹似の紅鷹がそうなるなら、小紅似の鷹虎なら大丈夫だろうと。近藤は小紅の腕の中でモゾモゾしている鷹虎をよく見ようと顔を近づける。
が、もうわかっているだろう。こちらも「いやっ」と、危険を察知したのか振り向きざまに裏拳炸裂。近藤の鼻を直撃した。
我が子の猛攻に「ごめんなさい!ごめんなさい!」と何度も必死に謝る小紅に、近藤は鼻を押さえて悶絶しながらも「い、いや、大丈夫だ」と手の平を向ける。
この双子の先が思いやられる。小紅、きちんとしつけしないと危ないぞ。
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