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夫婦と親子と主従の因縁
2P
しおりを挟む「やぁ、鬼の副長さん。僕の妻が昔そちらで大変お世話になっていたようで?おかげで今は愛情がこもった、とっても美味しいお茶が毎日飲めるよ」
「ハッ!うちにいたのは紅花、ハナだ。テメェの嫁の小紅じゃねぇ。礼をしたいんなら大人しくその首を差し出しやがれ」
「何言ってんの、バカじゃない?僕は紅ちゃんとの幸せな未来のために、僕のために命をかけて戦ってくれている皆との未来のために戦うんだ。生きるための戦いなんだよ」
黒鷹、わざと土方を屋根の縁へと追いやっている。病を抱え大怪我を負っているとは到底思えない。左右の刀で舞うように、流れるように刀を振るう姿は美しいと思えるほど。
だがこれは剣舞ではない。土方の一撃を受け流した黒鷹が1歩踏み出せば、土方の腕から血しぶきが上がる。
さらにもう1歩踏み出して反対側の腕を斬りつけようとするが、そうはさせまいと土方が反撃。素早く弾いて袈裟懸けに斬り下ろした。
が、それを黒鷹は見切って止めた。弾かれた勢いが強くて尻餅をついてしまい、絶体絶命かと思われたのに。刀で受け止めるのでは間に合わないと悟ったのか、動かしたのは――
「あ、あ、足ぃっ!?てめ、行儀悪すぎるだろう!足で斬撃止めるたぁ聞いたことねぇぞっ」
正直、できるとは思っていなかった。黒鷹はとっさに両足を振り上げて真剣白羽取りよろしく足で刀を止めてしまったのだ。
驚きつつも「あはっ」と笑う黒鷹の足から刀を振り抜き再び、起き上がろうとしている黒鷹に刀を振り下ろす土方。命と未来を懸けた真剣な戦いなのに、なぜかそれが感じられない2人だ。
「はっはっはっはっ!なんだか楽しそうだなぁ!わしも混ざりたいところだが」
こちらも思い入れが深い2人の対決となった。育ての親である近藤と、その娘であり裏切者の小紅。刃を交えるのはこれが初めてではない。
紅花だった頃、何度か稽古をつけてもらっていた。1度も紅花が勝ったことはないが。
何かと危なっかしい戦いを繰り広げている2人に大笑いしている近藤に、容赦ない一撃。小紅愛用の短刀が目を背けている近藤に襲いかかる。
「ずいぶんと余裕ですね、新選組局長、近藤勇。私なんかがあなた様にかなうなどと到底思いもしませんが」
「そういう割には迷いがないな?………………わざわざ、死ぬるために来たか」
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