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夫婦と親子と主従の因縁
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しおりを挟む最終決戦。黒鷹、小紅、近藤、土方は他の人達とは違って2対2で戦っていた。
「ぐっ、う、おぉぉぉ……何でこんな場所を選ぶんだよ、考えらんねぇぜ。まぁ、忍より忍らしいテメェには関係ねぇだろうがな、ハナ、じゃねぇ小紅?」
「きっと近藤さんの嫌がらせですよ、土方さん。ほら見てください、すごく楽しそうです」
「いやいや紅ちゃん、少しは僕のことも気にしてくれる?僕だって弱ってるんだしこんな足場……うわぁっ!?最初っからぜんっぜん容赦ないしね、この人!」
「わしは殺す気でかかっているのだ、容赦もクソもあるか。真面目に立ち回らぬと落ちるぞ?」
ここは鷹の翼の屋敷、の屋根の上。他の人達がそれぞれバラバラの場所を陣取って戦っているため、4人は広さを求めてここに来てしまった。
というより、近藤が誘導した。
小紅は忍っぽいということもあり不安定な足場での戦闘にも慣れているし、近藤はどんな場所でもお構いなしに自由に戦える。
が、残りの2人は違う。黒鷹は数日前に白鴇と激しい戦いを繰り広げて大怪我を負っているわけだし、何よりほとんど末期の病がある。
そして土方は、高所恐怖症だ。なるべく下を見ないようにしているが、2歩に1歩はフラついている。
小紅はそんな情けない、かわいそうな土方に憐みの目を向けながら愛用の短刀を手に立ち回る。高所恐怖症と戦いながらも土方は、己の執念で刀を振り下ろしてくるのだから。
一方、黒鷹はほとんど防戦一方。最初から2本の刀を抜いて構えてはいるが、近藤の恐ろしく容赦のない猛攻撃にどんどん後退させられる。
ダンッ!ダンッ!近藤が1歩踏み込むたびに足元の瓦が驚いて飛び上がり、黒鷹はその迫力に押され1歩後退。
危うく、屋根の端まで追いやられた黒鷹は足を踏み外して落ちそうになった。が、そこはさすがというか。
へっぴり腰の土方の顎を蹴り上げた直後に大きく跳び、小紅が近藤の大きな背中に斬りかかり注意を反らしてくれたおかげで中央へと脱出。
今度は黒鷹が土方と向き合い、火花を散らす。小紅、紅花、ハナと長く一緒にいた2人だ。やはり何か思うところがあるのか、目が合うと手が止まった。
ガギンッ!と両手できつく握り振り下ろされた土方の渾身の一撃を黒鷹の、和鷹と夜鷹の刀が受け止め力比べ。
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