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ねこねここねこねこ
3P
しおりを挟む背を伸ばし、薙刀を構え直した姿は凛々しい。やっと闘志が芽生えたか。「ふう」と息を吐くと薙刀の切っ先を猫丸に向ける。
「斬りたくはない。群れの長なら猫達を下がらせ、猫丸君自身が出てきなさい」
松原の周りにいた猫達が、1歩下がった。仲間が瞬き1回の間に3匹もやられたのだ、そりゃあ怯えるだろう。
影の世界、忍の世界に生きる猫達。戦いに慣れてはいてもここまで圧倒的で、死を感じてしまう戦いは戦意喪失してしまうほどに恐ろしい。
1匹、曲がった尻を向けて逃げ出した。猫丸は追わないし何も言わない。また1匹逃げた。次は2匹。恐れをなした小さな勇士達は次々とその数を減らす。
ついに、この場には猫丸と松原以外に誰もいなくなった。シンと静まり返る。正直、逃げ出した猫達に猫丸は驚いた。
仲間以上に大切な家族。いつでもどこでも一緒にいて、苦楽を共にしてきた猫達が群れの長である自分を見捨てるとは思わなかったから。
けれど、ここからは人間の戦いだ。たとえ1対1で戦っても、松原の攻撃がこれ以上大きくなり怪力を発揮し始めたらきっと猫達は巻き込まれる。逃げてもらったんだと、そう自分に言い聞かせる。
寂しそうにうつむく猫丸の小さな体はグラリと前に傾き倒れ塀から落ちる、かと思いきやシュンッと姿が消えた。
たった1度の瞬きのうちに薙刀を構える松原の足元、膝の下に出現した猫丸は長く伸びた暗器の爪を突き立てる。
シャッ!シャッ!と2度。下からグンッ!と跳び上がりながら松原の首を狙って、左右の爪を振り上げるが上体を反らされ空振り。
顔の上まで跳び上がって悔しそうに睨みつける猫丸の腕をつかもうとした松原の手。その腕を両手でつかむと、猫丸はグルンッとさらに跳び上がって逆立ち。
そのまま、左右の足で松原の顔を2度蹴りつけた。両方共の蹴りが今度は避けられなかった松原の顔面にきまり、ツウと鼻血が垂れる。
が、蹴られながらも松原は薙刀を振り回し、柄の部分で殴打。小さな体は吹っ飛ばされてさっきまで座っていた塀に勢いよく打ち付けられた。
これでも忍の出身。鳶のように素早さは誇れども、一撃の力はそれほど強くはない。そのうえ猫丸はまだ11歳の子供だ。良くも悪くも軽い。
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